繁る其の息吹と、 溢れる其の生気は。
魅惑的な響きを、 奏でるけれど。
本来は。
決して、 視えては為らぬ景色で。
其の恩恵を、 甘受出来る距離は。
即ち。
其の恩恵を得る事は出来ぬ姿を、 意味するのだ。
娑羅双樹。
命の象徴は。
同時に、 死の象徴だ。
あの子は。
「出掛けてくるって言った理由が。」 「夢の内容だったんだ。」
「そっか。」
「どこかの木の下で綺麗な緑色した葉っぱを付けた木の下で。」 「場所が分からないから探してでも今行かなきゃって。」 「出来なかったけれど。」
召された娘や、 嘗ての彼が、 其処で待って居たのだと。
そう、 口にする。
其処が何処なのか。
あの子が、 気付かぬ筈は無いのに。
俺には、 要らぬ惑いを抱かせぬ様にと。
頑なに、 想って居るんだろうね。
---------- References Apr.10 2016, 「扉の先は黄泉でしょうか」
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