君の体調が悪い。
人伝に聞いた言葉で、 君の旦那から聞いた一言で、 俺の中にほぼ確信に似た予感が芽生えた事を、 この胸の拍動が気付かせてくれた。
其処まで強い確信を持ちながらも、 想いを心配と称する方便で包み隠して、 携帯を握り締めた。
「大丈夫。」 「何が?」
「今居ないから。」 「まったく・・・」
「だって・・・」 「止めろって言ってるじゃん。」
何故隠すのかと、 何度と無く繰り返して来た忠告も、 何ら変化を齎していない事。
俺の親友である筈の旦那から、 俺に対する猜疑心も敵対心も不安感も、 決して消えていない事。
結局聞こえて来た君の声は、 今迄と全く変わらぬ二つの事を、 俺に教えるに留まった。
解決すべき事柄をその儘に、 遂に柵を振り出しに戻せない時が来てしまった。
即ち其れは。
致命傷を抱えても、 柵を絶つ事が出来ない状態に、 君が陥らぬ様に。
ただ俺の元に、 そう願う事しか出来ない時が来た事を、 暗に意味する瞬間でもあるのだ。
其の事実を知ってか、 それとも知らないからか。
「出来ちゃったんだよね。」 「やっぱりそうか。」
全く弾まぬ君の声が、 鼓膜の裏でぶるぶると震え続けて消えない。 |