強くも無い酒を過ごした。
久方振りの、 折角の遠出だと言うのに。
出掛けのほんの僅かな諍いで、 産まれてしまった、 微妙な捻れ。
痼りとして残り兼ねぬ、 互いの後悔を。
堤の桜が、 徐々に、 徐々に、 解いてくれたから。
嬉しくて、 お互いに酒を呑み過ぎた。
其の事実は、 共通理解で在る筈なのだから。
其の言葉は。
想いの内に、 我慢の内に、 未だ留め置いても良いと、 想うのだ。
何時の間にか現れた、 夕闇の深さに、 慌てて飛び起きる。
「何時?」
「不味い・・・寝過ごした。」
花見の跡の、 積極的に進めた酔いは。
昼寝の心算を砕き、 必然の焦燥を、 既に創り上げて居た。
約束の皿洗い。
「手伝って!」
互いの決め事であり、 今朝確認した事には違いないけれど。
眠い目を擦り、 懸命に目を醒まさねば。
手伝い要員として役を果たせぬ事が、 明らかだったから。
「ちょっと待って。」
猶予を求めただけなのに。
一向に動かぬ身体と、 全く冷めぬ頭の酔い。
「約束したじゃない!」
姫の頭は、 端から怠惰と決め付け、 徐々に体温を上げて行く。
待ってよ。 五分で良いんだ。
いや。
呑み過ぎて起きれぬ俺を、 非難しても、 一向に構わないから。
其の言葉を吐きながら、 泣かれたら。
過去の事実と比較を縒り併せた、 最終兵器を吐かれたら。
「旦那がそう言う好い加減な人だったから!」 「ここまで言わないと動かない人だったから!」 「すごく嫌なんだよね!!」
俺は、 何も出来ないよ。
其の嫌な旦那に酷似している俺の、 何処が良くて。
姫は傍に居るんだよ?
---------- References Mar.30 2004, 「何処が好きと言えますか」 Mar.17 2004, 「前科を消す術が在りますか」 Mar.12 2004, 「都合の良い状態が必要ですか」 |