ほんの少し、 時を回して了えば。
かたかたと音を立てて、 崩れて終う。
二度と、 同じ景色を此の手には出来ぬ、 一揃いの筒を。
何故に、 此の手に持たせたのだろう。
互いを具象化し、 互いの傍に添え置く筈の、 其の姿が。
儚く、 脆く、 繊細に映る事に。
何の違和感も、 持たぬのだろうか。
眼前で繋がる、 手と、 手を。
決して離さずに。
眼前に在る想いが、 真実で、 貴重で、 唯一だと。
力強く言う、 坂の街の人は。
同時に。
「いつかは消えてしまう。」 「この想いはなくなってしまう。」 「でも。」 「なくなったとしても大切。」
眼前で繋がる、 手と、 手が、 切り離され。
眼前に在る想いが、 消えた、 其の刻の事を。
力強く主張した。
「次は二月。」 「毎年二月と五月なの。」 「二月まで待てる?」
「其処迄待つの?」 「待てる訳ねぇじゃん。」
僅か十五分しか無い逢瀬の残りを、 貪るかの様に。
再び、 繁みに顔を埋め。
応じる様に。
二つの万華鏡は、 かたかたと、 揺られて姿を変えて行く。
儚く、 脆く、 繊細に。
---------- References May.11 2007, 「奥深き想いの証拠ですか」
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