■アドフェストはカンヌ広告祭のアジア版と思っていたけれど、カンヌよりはエントリー作品数がずっと少なく、こじんまりした感じ。カンヌではCM部門は「飲料」「ファッション」「コスメ」「公共広告」といったカテゴリーごとに別々のホールで上映されるけれど、アドフェストでは移動しなくても全カテゴリーを見られる。並行してセミナーのようなものが開催される。カンヌでもセミナーはあったけれど、エントリー作品を見るので精一杯だったし、人気のあるセミナーは人があふれて入れなかった。時間にもホールにも余裕があるアドフェストでは、セミナーにせっせと出ることに。■午前はガン・レポートのプレゼンテーション。世界の広告の動向をまとめたガン・レポートなるものを毎年発行しているガン氏による最新の広告業界トレンド報告。どこの国のどの会社がいちばん賞を取っていて勢いがあるかといった話が中心で、そこにはあまり惹かれなかったけれど、「世界のトップクリエイター50人に聞いた『いい広告を作るのに必要なもの』」の報告に、やられた。1位「Passion」2位「Hard work」3位「Fun」。今最も脂の乗っているクリエイターたちの作るものは様々だけど、根っこにあるのは「情熱を持ってベストを尽くすために頑張って、そのことを楽しむこと」。「どんな理由で何度ボツを食らってもめげちゃいけない」「面白いことしたくてウズウズしていないと(hungry creators, thirsty clients)」「求めて、愛して、楽しんで、祝福しなきゃ!(We have to want it! love it! enjoy it! celebrate it!)」「好奇心をもって、楽しいことを探して、すてきな人間でいること(Be curious,look for fun stuffs,be nice human beings)」「もっといいアイデアを見つけることをやめちゃいけない(Never stop searching for better idea)」……次々とパワーポイントで映し出された言葉はどれも力強くて、自分の気持ちに重なる部分も多くて、思わずメモを取った。広告を映画や他の仕事に置き換えてもあてはまると思う。「ハンガリーは天気が悪いので、ひたすら働くしかない(Hungry has bad weather, we have nothing but to work)」というユーモラスな答えも。
■バイキングランチでパワーをつけ、午後は世界中でパワフルに活躍している広告会社ネットワーク、TBWAのプレゼンテーション。日本では渋谷でアディダスの空中サッカー(屋外ボードのサッカーグラウンドの上に、命綱をつけたサッカー選手が立ち、サッカーを実演)広告で度肝を抜いてくれたが、各国で話題になるキャンペーンを仕掛けている。たとえば、「スウェーデンでいちばん小さい超無名銀行を有名にするために、大手銀行に一方的にサッカーの試合を申し込み、対戦にこぎつけ、練習風景をCMで流すことで国民の人気を勝ち取った」ケースは、『ブレ・スト』もぶっとぶすごい発想。それを実現させているのだからすごい。広告は表現(デザインやコピー)も大事だけど、その表現をどう展開していくかという「仕掛け」次第でパワーを持つのではと考えるわたしには、とにかく刺激的で面白い内容だった。■夕方に、プリント部門(雑誌、ポスター、屋外ボードなど)の授賞式。同じ人が何度も壇上に上がる。賞は集まるところに集まる。わたしが気に入った作品はことごとく選外。最高賞を取ったのは、迷彩服を着た戦士フィギュアの広告。今の時代にこれが選ばれるとは、と意外な気がしたけれど、「こういう時代だからこそ、じゃないか」という意見もあった。■夜はランチバイキングで同席したプロデューサー氏のお誘いでロブスターを食べに行く。日本にオフィスを開いたデンマーク人、ベトナムでデザイナーをしているスウェーデン人、日本人が10名ちょっと。「TBWAのプレゼン良かったですねー」と言うと、「何言ってんだ。広告は表現だ」という人もいて、広告論議に。広告について熱く語るというのも広告祭ならでは。
2002年03月19日(火) パコダテ人ノベライズ計画