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2012年12月07日(金) |
「時論公論:問われる原子力政策」NHK水野解説委員 |
◆文字起こしです。
12月7日に三陸沖を震源とするマグニチュード7.3の地震がありました。
地震そのものや、津波により、被害、死者が出なかったことは良かったのですが、
かねて、小出助教が福島原発の特に4号機にある使用済み核燃料プールが、次の
大きな地震などによって、壊れたら、一挙に冷却水が失われ、原子炉内よりも大量の
核燃料がメルトダウンする危険がある、と指摘したことを思い出しました。
奇しくも、地震の前日、つまり12月6日、木曜日夜のNHK「時論公論」で、原子力専門の
水野倫之解説委員が、今回の衆院選で各党の公約・政策には「核のゴミ」の処理方法に関して
何も具体的なことが触れられていない、という点を批判していたのです。
水野解説員は、311直後から、危ないことは危ないというので、信頼する人が多いです。
私も、彼が、福島原発の事故直後、東電がレベル4だと言ったのに対して、
「いや、明らかにチェルノブイリ並のレベル7です。」と断言し、近隣住民に避難を勧告していたことを
覚えています。
その水野解説委員の言葉は、参考になると思ったので、「時論公論」を文字に起こしました。
ご参考になれば、幸いです。
◆NHK 時論公論「問われる原子力政策」水野倫之(のりゆき)解説委員
福島第一原発の事故後、初めての国政選挙となる今回の衆議院選挙では、原子力政策が大きな争点となっています。
各党の公約では原発を今よりも増やす、というところはなく、依存度を下げるかそれともゼロにするかで大きな違いがでています。
しかし、その手順や道筋については、あいまいなものが多いうえに、使用済み燃料など「核のゴミ」をどう処理するのかはっきり示しているものはなく、
公約通りの政策が本当に実現出来るのか、が、厳しくとわれることになります。
今夜の時論公論では衆議院選挙で問われるべき、原子力政策のポイントについて考えたいと思います。
福島第一原発の事故について、政府はすでに去年、収束を宣言していますが、放射性物質の除染は進まず、今も福島県を中心に16万人以上が避難を余儀なくされています。
また、現場では、放射線が極めて強いため、建屋内部の状況は殆ど分かっておらず、汚染水の漏洩が相次ぐなど、安定化と廃炉に向けた先の見えない作業が続いています。
このように、いまだ収束からはほど遠い状況ということもあり、今回の各党の公約を見ますと、現状よりも原発を増やすというものはなく、
代替となる再生可能エネルギーなどの開発に力をいれる点は共通しており、原発への依存度を下げるか、それともゼロを目指すか、で大きく分かれています。
政権与党の民主党は、原子力規制委員会が安全と確認してものは再稼働を認めるものの、2030年代の原発稼働ゼロをめざす、としています。
これに対して政権の奪還を目指す自民党は、原子力に依存しない社会を目指すとしつつも、3年以内に再稼働の結論を出し、
10年以内に電源の「ベスト・ミックス」を確立するなど、時間を掛けて依存度を決める方針です。
原発ゼロを訴えているのは8党ありますが、時間軸に差があります。
再稼働を認めず、即、ゼロとするもの。そして段階的にゼロを目指すとするもの。
この中でも未来の党は、当面再稼働派認めない方針です。
ただ、各党ともゼロにしたり依存度を下げる為の具体的な手順や道筋についてはあいまいで、公約どおり実現出来るのか、が問われることになります。
まず、どの原発から減らしていくのか具体的に示されていません。事故の後、廃炉が決まったのは事故を起こした4基の原発だけで、
現在、多くの原発で再稼働を目指して津波対策などの工事が進められています。
わたしが先月取材に訪れた、静岡県の浜岡原発では、全国でも最大規模となる海抜18メートルの防波壁の本体部分が殆ど出来上がっていました。
浜岡原発は、東海地震の確率の高さから政府の要請で運転停止に追い込まれましたが、いち早く工事に着手し、他にも電源喪失に備えた発電機を設置する高台では、
耐震性を確保するための大規模な基礎工事が行われていました。
費用は少なくとも、1,400億円にのぼる見通しですが、地震を懸念する周辺自治体の中には、永久停止を求めているところもあり、
再稼働にめどが立っているわけではありません。政府も浜岡原発をどうするのか、明確にしようとせず、
工事自体は電力会社の自主的な取組だ、としています。
全体の方針が決まらないまま、全国の多くの原発でも浜岡と同じように、巨費をかけて対策工事だけが進んでいるというのが現状です。
今後、原発を減らしていく、というのであれば、どんな基準によってどの原発から停止させていくのか、早くそのプランを具体的に示すべきだと思います。
公約の中には、原発の40年運転制限制度の適用を示しているところもありますが、この制度では、安全が見込まれれば、最長で20年間運転の延長も認められています。
また、延長を認めないとしても、最近運転を始めた原発もあることから、40年制限制度だけでは、2050年代まで原発は残り、30年代にゼロにはなりません。
運転年数以外にも、トラブルの発生頻度や周辺での大地震の発生確率、そして、敷地内の断層の状況など、各原発の潜在的なリスクをリストアップして
判断していくなど、有権者が納得出来る基準を示して欲しいと思います。
そしてもう一点。
原発をゼロにしたり、減らすためにも道筋をつけなければならないのが、使用済み燃料など「核のゴミ」をどう処理するかですが、
これも、各党の公約はあいまいです。
野田政権は9月に、新しいエネルギー戦略で初めて2030年代の原発ゼロを打ち出しましたが、同時に再処理を継続する、という
矛盾した方針を示しました。
日本はこれまで使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、燃料として使う「核燃料サイクル」を基本とし、
青森県が再処理工場を受け入れてきました。
しかし、原発ゼロ政策によって、再処理工場に使用済み燃料が止め置かれたままとなるのを青森県が恐れ、
使用済み燃料を各原発に返還する構えを見せたから、です。
全国の原発のプールには、既に大量の使用済み燃料がたまり、この上使用済み燃料が返還されることになれば、多くの原発で運転再開ができなくなります。
使用済み燃料などの放射能レベルの高い「核のゴミ」は、地下300メートルよりも深くに埋めて処分することになっていますが、
放射能レベルが下がるまでに10万年かかることから、安全性への不安が根強く、最終処分地については、これまで全く目途が立っていません。
野田政権は、再処理以外に当面の使用済み燃料の処理方法を打ち出すことができなかったわけです。
さらに、再処理によって日本は既に29トンのプルトニウムをかかえています。
プルトニウムは数キロあれば、核兵器を造ることができるとされるため、日本は使うあてのないまま、
持てないことを国際約束しており、消費する必要があります。
そこで野田政権はプルトニウムが燃やせる大間原発の建設再開も容認せざるを得なくなり、
結局、大きな矛盾をかかえた原発ゼロの戦略は閣議決定されませんでした。
つまり、使用済み燃料など「核のゴミ」の処理方法に具体的な道筋を示すことができなければ、
原発ゼロや、脱原発依存もうまくいかないわけです。
この問題について今回、公約で明確な方針を打ち出している党はありません。
原発の再稼働を認めず、再処理の中止を求めたところもありますが、その場合に、
既にたまっている使用済み燃料やプルトニウムについての具体的な処理方法や、処分場所まで
触れているものは、ありません。
原発を減らすのであれば、 使用済み燃料は暫くは原発内で保管せざるを得ないことが予想されます。
しかし今回の事故では、プールで保管し続けることの危険性も明らかになりました。
各原発で水を使わなくても保管できる専用の容器による貯蔵に切り替えるなどの対策が必要で、
各党は、考え方を示すべきだと思います。また、貯まっているプルトニウムについて、
現状のまま保管しつづけることは、核不拡散上、許されません。
脱原発を決めたドイツもプルトニウムがたまっていますが、2022年までに一般の原発で燃やして処理することを決めています。
各党は、国際的に納得が得られる処理方法を示さなければなりません。
そして「核のゴミ」の最終的な処分についても、各党は将来の原発比率にかかわらず、
答えを出さなければならない問題だ、ということを再認識しなけれなりません。
すぐに処分地を決めることは難しいにしても、この問題に、
どう取り組んでいくのか、考え方をしめしていかなけばなりません。
今回の選挙戦を通じて、原発への依存度だけでなく、
「核のゴミ」問題にどう対応していくのかについても論戦が深まることを期待したいとおもいます。
(以上)
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