JIROの独断的日記
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2011年01月29日(土) |
【音楽】1月31日はシューベルトの誕生日。エリー・アーメリング(ソプラノ)「シューベルト歌曲集」。お薦めです。 |
◆クラシックの歌=オペラではありません。「歌曲」があります。
クラシックの歌唱法というと、大抵の人はまずオペラを連想するようです。
確かに、歌を専攻する人の多くはオペラ歌手を目指すのですが、
あれが、「声楽」(クラシックの歌い方)の全てでは、ありません。
「歌曲」という、純粋に歌、つまり歌詞と旋律だけを堪能する演奏形式あります。
ドイツ歌曲に代表され、1月31日に生誕214年となるフランツ・シューベルト(1797-1828)
が「歌曲の王」と呼ばれているのは有名です。
オペラにも、勿論名作はありますが、何しろ歌「劇」ですから、多くの作品は、文字通り
ドラマティックに盛り上がります。そしてテノールやソプラノがフォルテで高い声を張り上げる
場面がクライマックスとなり、その場面(アリア)が終わると、「ブラボー」となります。
盛り上がるように計算されて作曲され、演出されていますから、それはそれで良いのです。
一方、シューベルトが600曲も書いた、「ドイツ・リート」(だけが歌曲ではないですが)は
歌劇とは無関係で、詩に旋律を付けた独立した作品で、ピアノ伴奏と歌だけです。 ◆エリー・アーメリング(ソプラノ)という歌曲の名人がいます。
長いこと、この人をご紹介したかったのです。
CD紹介の記事自体は、既に書いています。
2006年08月23日(水)「シューベルト歌曲名曲集」(エリー・アーメリング)文句のつけようがありません。(ココログ) 演奏をお聴き頂くのは今日が初めてです。
オランダ生まれのソプラノで1996年に引退しましたが、アーメリングはオペラに出た
経験はありますが、殆どはコンサートやリサイタルのソリストとして活動しました。
早く聴いて頂きたかったのですが、一時期、CDが品切れになっていました。
今は幸いAmazonにあります。
シューベルト:歌曲集です。
どれも、演奏時間は短い、一番長いのが、後でお聴かせしますが、
「アヴェ・マリア」の5分43秒。後は殆ど、3分台、2分台、1分台。
とにかく聴いて頂きます。全部で21曲も入ってますが、どなたも御存知の曲
ばかりを敢えて載せます。
最初に「野ばら」。これほど可愛い曲があるでしょうか。
アーメリングのピアニッシモの美しさにご注目下さい。
シューベルト:「野ばら」D257(詩:ゲーテ)
Schubert Heidenroslein D257
声楽の演奏技術上、特別に難しいことはないと思いますが、
本当に美しい演奏は、意外とないのです。このわずか1分50秒の曲。
ゲーテによるドイツ語の歌詞と、その意味は、つぎの通りです。
Sah ein Knab' ein Roslein stehn,
Roslein auf der Heiden,
War so jung und morgenschon,
Lief er schnell, es nah zu sehn,
Sah's mit vielen Freuden,
Roslein, Roslein, Roslein rot,
Roslein auf der Heiden
Knabe sprach: Ich breche dich,
Roslein auf der Heiden !
Roslein sprach : Ich steche dich,
Das du ewig denkst an mich,
Und ich will's nicht leiden.
Roslein, Roslein, Roslein rot,
Roslein auf der Heiden
Und der wilde Knabe brach
's Roslein auf der Heiden ;
Roslein wehrte sich und stach,
Half ihm doch kein Weh und Ach,
Must' es eben leiden.
Roslein, Roslein. Roslein rot,
Roslein auf der Heiden.
少年が小さなばらを見つけた
野に咲く小さなばら
みずみずしく さわやかで美しかった
間近で見ようと駆け寄って
嬉しさいっぱいで見とれた
小さなバラ 小さなバラ 小さな赤いバラ
野に咲く小さなバラ
少年は言った 「お前を折るよ、
野に咲く小さなバラよ」
小さなバラは言った 「私はあなたを刺します
あなたが私のことをいつまでも忘れぬように
そして私は傷ついたりしないつもり」
小さなバラ 小さなバラ 小さな赤いバラ
野に咲く小さなバラ
それなのに乱暴な少年は折ってしまった、
野に咲く小さなバラ
小さなバラは自ら防ぎ、刺した
苦痛や嘆きも彼には通じず
それは折られてしまうとは
小さなバラ 小さなバラ 小さな赤いバラ
野に咲く小さなバラ これで、色太文字で強調した部分のアーメリングの歌い方ですね。
あたかも空に抜けて行くような美しいピアニッシモ。
楽器でも歌でも、弱い音、小さな声こそ難しい。
楽器なら音がかすれたり、揺れたりしやすいです。
しかもピアニッシモであっても、聴衆に聞こえなかったら意味が無い。
歌は正直に書くと分かりませんが、高音のピアニッシモが易しいとは
到底、考えられません。
そこら辺は恐らく場数を踏んだプロでなければ到達できない境地でしょう。
私は「野ばら」があまりにも好きなので、随分色々な人の演奏を聴きましたが、
結局、やはり、アーメリングほど美しく歌える人を知らない(いるかも知れませんが、
「私は」まだ聴いたことがない、ということです)のです。
以前、他の歌手の野ばらを比較したことがありました。
演奏家による「解釈」。「野ばら」でもこれほど違う。 かなり下の方へスクロールして頂くと、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、高めのバリトン、低めのバリトンによる
「野ばら」を聴き比べることが出来ますが、面倒臭いでしょうから
再録します。悪いから歌手の名前は出しませんが、最後の
Roslein, Roslein. Roslein rot, を聴いて下さい。
ソプラノ。
「野ばら」ソプラノ。
メゾ・ソプラノ。
「野ばら」メゾ・ソプラノ。
高めのバリトン。
「野ばら」高めのバリトン。
低めのバリトン。
「野ばら」低めのバリトン。
それぞれ、勿論下手じゃないのですが、アーメリングほど
最後の"Roslein, Roslein. Roslein rot,"の繊細さが、感じられません。
低めのバリトンの人はピアニッシモはピアニッシモなんですが、男声の声質上
やむを得ないところもありますが、弱いというより、ささやきに近い。
これは、それぞれの歌手の「解釈」なのでしょう。此方のほうが好きだ、
という方がいても、勿論一向に構わないのですが、私にとっては、
アーメリングを聴いた後では、どうしても少しもの足りません。
もう一度アーメリングを聴くと、お分かり頂けると思います。 ◆「ます」「アヴェ・マリア」「子守歌」
「野ばら」のウンチクが長くなってしまったので、
後はなるべく、知ったかぶり無しで参ります。
有名なのばかり。まずは「ます」です。ピアノ伴奏も綺麗ですよね。
シューベルト:「ます」D.550(詩:クリスティアン・フリードリヒ・ダニエル・シューバルト)
Schubert Die Forelle,D.550 op.32
実に品の良い演奏です。
更に有名な、シューベルトの「アヴェマリア」
シューベルト:「アヴェ・マリア」D.839(サー・ウォルター・スコット原詩/アダム・シュトルク独訳)
Schubert Ave Maria, D 839
最後です。「子守歌」。これは詩の作者は「不詳」だそうです。
シューベルト:「子守歌」D.498
Schubert: Wiegenlied, D 498
如何でしたか。
他にもこのアルバムには、多くの曲が収録されています。
何しろシューベルトはわずか31年の生涯で600曲もの歌曲を書いています。
私は勿論ですが、多くの人がまだ知らない名曲が、多分山ほどあるのでしょう。
まずは、このCDからお薦めします。
それでは。
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