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2010年04月02日(金) |
【音楽】1800年4月2日、ベートーヴェン交響曲第1番が初演されました。驚嘆するほど上手なアマチュア・オーケストラの演奏です。 |
◆ベートーヴェンの1番はあまり演奏されませんが、既に大家の風格があります。
ベートーヴェンの生涯は1770年-1827年です。誕生日は12月ですから、交響曲第1番が初演された4月2日はまだ29歳でした。
曲の解説などを読むと、交響曲1番の時点では、先輩のハイドンやモーツァルトの伝統的な作風に則って書いており、
習作の段階だ、との説明がありますが、私はこの1番でベートーヴェンは、「ベートーヴェンしかあり得ない音楽」
を書いたと思います。既にこのころから聴覚の障害は始まっていたのですが、
なによりも、ベートーヴェンが音楽に抱いた、炎のような情熱が伝わってきます。
今日はそれを、全曲お聴き頂きますが、いつもと違った所があります。
◆初めてですが、或るアマチュア・オーケストラの素晴らしい演奏をお薦めします。
私は最近流行りのTwitterを使いますが、そこでたまたま知遇を得た(?)方が、
今は解散してしまったのですが、かつて存在した東京の社会人と学生によるオーケストラで
フルート奏者だったことを知りました。仮にRさんとします。
Rさんが所属していたのは、2000年から2004年まで活動していた、「アンサンブル 響(ひびき)」という
アマチュア・オーケストラです。ベートーヴェンの交響曲第1番を演奏したのは2002年だそうです。
Rさんは、録音をお持ちでしたから、ネット経由で聴かせて頂きました。
そして驚嘆しました。
この中にひとりもプロはいないのです。そして、指揮者も素人で、25歳の会社員。
指揮などしたことがなく、このコンサートで初めて振ることになり、泣きそうだった、とのことですが、
どうして、どうして。あまりにも見事な演奏です。
これほど素晴らしいベートーヴェンをアマチュアで聴いたことがありません。
いや、プロとかアマチュアとか、どうでも良い。兎に角これほどの名演は滅多にないです。
皆様にも是非ご紹介したくて、Rさんには、この日記・ブログに録音をアップすることのご承諾を得ました。
ダウンロードしたい方はご自由に、と、有難いお許しも頂きました。
有難いことです。早速演奏に参りましょう。
◆アンサンブル「響」演奏:ベートーヴェン作曲:交響曲第1番ハ長調作品21
全曲通して言えるのですが、どのパートも実によく鳴っているのです。
弦楽器全てのセクションががピタリと合い(1人でも音程の悪い人がいたらすぐに分かります)、
第1ヴァイオリンからコントラバスまで、厚いずっしりとした音なのです。
旋律を弾く第1ヴァイオリンだけが上手くても駄目で、内声部の第2ヴァイオリン・ヴィオラ、
低音のチェロ、コントラバスまで、皆が平均して上手くないと弦楽器群全体としていい音になりませんが、
このオーケストラは、皆さん上手です。
木管(Rさんは1番フルートです)の艶やかな温色。Rさんのフルートは玄人はだしの柔らかく
それでいて、良く通るいい音です。音程も全然狂いません。
金管。トランペットは荘厳で、ここぞというときには、輝かしく鳴り響きます。
ホルンは、「これぞ、ホルン」な音。ふくよかで、品が良い音です。
ティンパニさん、常にバランスを考慮して叩き過ぎず、必要とあらば、強打でアクセントを付ける。
ベートーベンの交響曲におけるティンパニの役割を良く心得ておられます。
それでは、『アンサンブル響」の演奏(2002年)で
ベートーベン:交響曲第1番ハ長調作品21 第1楽章 Adagio molto - Allegro con brio
Beethoven Symphony No.1 Adagio molto - Allegro con brio
これが全員素人なんです。自分のパートだけではなくて、ちゃんと全体のバランスを
考慮して弾いているし、吹いているし、叩いている。当たり前と言ってしまっては実も蓋もない。
第二楽章をお聴き下さい。こういう緩徐楽章はもっと難しい。音の動きが遅いわけですから、
音を間違えても目立つし、長い音の音程が悪ければはっきり分かる。
ベートーベン:交響曲第1番ハ長調作品21 第2楽章 Andante cantabile con moto
Beethoven Symphony No.1 Andante cantabile con moto
終わりの方でトランペットが鳴りますね。こういうの嫌なんですよ。弱音だからといっておっかなびっくり
吹くと、緊張して音の出だしで、ひっくり返ったり、伸ばしている最中に音が揺れる。
このトランペットさんは、弱音だけど、厳かな、良く通る音です。
第三楽章です。スコアにはメヌエットと書かれていますが、実際はスケルツォ(速い三拍子)です。
ベートーベン:交響曲第1番ハ長調作品21 第3楽章 Menuetto: Allegro molto e vivace
Beethoven Symphony No.1 Menuetto: Allegro molto e vivace
いいですねー。
この楽章は音の強弱のメリハリを付けないと面白くないですね。弱い音で始まった後、
急激にクレッシェンドしないとダメです。しかしやり過ぎてもおかしい。
アンサンブル「響」の演奏は、それがちょうど良い加減で、プレーヤーが心得ています。
再生開始後1分30秒ぐらいから「トリオ」と呼ばれる中間部にはいります。
木管の音の良さが不可欠ですが、オーボエさん、上手。
その陰でヴィオリンが速い音符を弾いていますが、一音もいい加減に聞こえない。
全員がきちんと弾き、しかもピタリと合っている。たいしたものです。
いよいよ、フィナーレ(終楽章)です。
この楽章の始まり方、一度聴いたら忘れないです。ベートーヴェンはよく考えたな、
と思うのです。
最初のゆっくりしたアダージョという部分。一つずつ音が上に向かって伸びるのです。
リズムを無視して文字で書きますと、
ソ、ソラシ、ソラシド、ソラシドレ、ソラシドレミ、ソラシドレミファ
上手いことを考えたな、と思います。ベートーヴェンのベートヴェンたる所以ですね。
やっぱり、天才です。お聴き下さい。
ベートーベン:交響曲第1番ハ長調作品21 第4楽章 Adagio - Allegro molto e vivace
Beethoven Symphony No.1 Finale Adagio - Allegro molto e vivace
音楽も演奏も、実に素晴らしい。
アレグロになってからは、ワクワクするような音楽です。私はこの楽章が大変好きです。
やはり、主旋律のヴァイオリンは音の動きが細かく、速いのです。絶対難しい筈です。
そして、アクセントを付けるティンパニ。大事なパートです。全体の響きに影響します。
このティンパニさん、音が深い。トランペットは良く鳴っています。それでいて、前に出過ぎない。
演奏終了後、ブラボーが飛ばないのが、唯一の不満ですが、これは無論、その時のお客さんに対する文句です。
「アンサンブル 響」が今は存在しないのが残念ですが、
前述のとおり、ここまで素晴らしい演奏だと、アマチュアとかプロとか関係無いです。
音楽を聴くときは、それによって慰められたい、勇気づけられたいという、素直な気持ちが大事だと思います。
似非(えせ)クラシック・ファンは、プロのコンサートでも、終演後に必ず
「あそこが良くなかった。ここで音程がどうのこうの」とあら探しをして得意になるものです。
こういう奴はアホです。「音楽」はそのように聴くものではない。聴いて楽しむのです。
「アンサンブル 響」がなくなってもその演奏は記録されているのですから、
コンサートから8年経った今でも、演奏の素晴らしさは消えません。
TwitterでRさんと偶然ではありますけれども、お話出来てこの演奏を
広く皆様にご紹介したいと思いました。
少なくとも私にとって、ベートーヴェンの交響曲第1番のお薦めは、
この演奏です。皆様もお気に召したら、保存してお聴きになって下さい。
Rさん、ご協力、ありがとうございました。
それでは皆様、良い週末をお過ごし下さい。
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