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2009年07月04日(土) |
【音楽】辻井伸行氏のピアノ演奏(続) |
◆1日では、収まらないので、続きを載せます。
最初にニュース記事を一本。昨日のニュース。
◆記事:<文化庁長官表彰>全盲のピアニスト、辻井伸行さんに決まる(7月3日22時59分配信 毎日新聞)
米国のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した全盲のピアニスト、辻井伸行さん(20)が、
文化庁長官表彰(国際芸術部門)を受けることが3日、決まった。表彰式は6日。
国際芸術部門の長官表彰は、各分野で国際的に活躍し、特に顕著な成果を上げた個人を表彰する制度として07年度に創設された。
アカデミー賞で「おくりびと」が外国語映画賞に選ばれた滝田洋二郎監督と、「つみきのいえ」が短編アニメーション賞に選ばれた加藤久仁生監督に続いて6人目。
辻井伸行さんに文化庁長官の国際芸術部門表彰が辻井さんに贈られたことに関しては素直にお祝いを申し上げたい。
ただ、不満が二つある。
一つ目。これを伝える新聞記事の見出し。
<文化庁長官表彰>全盲のピアニスト、辻井伸行さんに決まる
「全盲の」は余計である。演奏家はその演奏のみにより評価されるべきである。全盲であろうが、視力があろうが、関係ない。
こういう見出しは、辻井さんに対して却って失礼である。
二つ目。記事によれば、文化庁長官の国際芸術部門表彰は
各分野で国際的に活躍し、特に顕著な成果を上げた個人を表彰する制度
だそうだ。ならば、何故、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、第1コンサートマスターを25年続けてドイツ政府から勲章を授与された
安永徹氏は表彰されないのか。
お分かり頂けると思うが誤解を避けるため、念のため記すが、私は辻井さんを表彰するべきではない、と主張しているのでは、ない。
どうして、安永さんも表彰されないのだ?
と、声を大にして訴えたい(首相官邸ホームページにメールまで送った身としては尚更。)
首相へのメール「麻生太郎内閣総理大臣。世界一のオーケストラのコンサートマスターを25年務めた日本人がいることを御存知ですか。」
この件に関しては、今日は辻井伸行さんのピアノ演奏のコンクール優勝というよりも、そのピアノ演奏の妙技をご紹介するのが目的だから、
これ以上書かない。
さて、昨日の日記ブログで辻井さんの演奏を2本載せたが、まだ、十分に書きたいことが
書けていないので、今日も引き続き、その話を書く。
◆7月2日NHK「クローズアップ現代」を見て明らかになったこと。
本当は番組を丸ごとここにアップしたいぐらいだが、法的にも技術的にも問題があるので、
番組をみていて、思わずウーム、と唸ったことを音楽と映像を交えて、記す。
番組冒頭、辻井さんがショパンのエチュード(24の練習曲集)から作品10-4という難しい(全部難しいのだが)
曲を弾いたので、それを聴いて頂く。これは、右手と左手が交互に速い音型を弾くのである。
ショパン:12の練習曲集 作品10より 第4番 嬰ハ短調
Etude 10-4 Cis moll
私の年代はショパンのエチュードの決定盤といえば、ポリーニかアシュケナージと思っている。
1946年生まれ(辻井君の42年前)のポリーニが1972年、ドイツ・グラモフォンから発表した、ショパンのエチュードは
世間をアッといわせた。それを聴いて頂こう。ただ、念頭に置いて頂きたいのは、辻井君はNHKのスタジオでの殆どブッツケ。
ポリーニの演奏はレコーディングスタジオで録音されたものだ、ということ、である。
ポリーニによる。エチュード10-4。
ダウンロード EtudesOp10No4.mp3 (2851.0K)
辻井君の演奏は普通のテレビスタジオで演奏されたものである。残響も少ないし、編集にも限度がある。
私は辻井君が弾くショパンのエチュードは、ポリーニに優るとも劣らない、と考えている。
◆クライバーン・コンクールの審査員の1人は審査メモを取るのを忘れるほど、辻井君の演奏に耳を奪われた。
「クローズアップ現代」のナレーションから。私が文字に起こしたもの。
クライバーン・コンクール審査員の1人、リチャード・ダイアーさん。
実際にコンクールで使った審査員の公式ノートを見せて貰いました。
審査員は1人の演奏者につき1ページずつ批評を書き込み、点数を付けるのがルールです。
しかし、辻井さんのページには、曲名以外、何も書かれていませんでした。
(注:ダイアーさんのコメント)
「彼の演奏が始まると、私は思わずノートを閉じてしまいました。手を膝に乗せ、すっかり聴き入ってしまったのです。
若いピアニストは、極端に音を大きくしたり、速く弾こうとする傾向があります。
しかし彼(辻井さん)は全くそんなことはしなかった。左手で安定した音を出しながら、
右手では歌うような演奏ができる。世界でも数少ないピアニストです。
辻井さんが小学生の頃、曲を覚えるために使ったテープです。
左手で弾く音と、右手で弾く音を別々に聴いて覚えていました。
辻井さんを6歳の時から12年間指導した川上昌裕さんです。辻井さんの為に、右手と左手、別々にテープに吹き込んだ曲は100を超えます。
川上昌裕さんのコメント。
ダウンロード MrKawakamiComment.mp3 (606.8K)
聴いて覚えるというが、彼が弾いている曲の複雑さはとてつもないもので、視力のある人間が目で楽譜を読んでも、
始めのうちは、「譜読み」で、大変時間を取られる。彼は、左右に分けたとはいえ、ベートーヴェンや、ショパンや、リストを
聴いて、全ての音を聞き取って、記憶して、自分の中で消化して、自らの表現を創り出している。
その大変さは、恐らく、我々の想像の及ぶところではない。
ショパンのエチュードや、リストなど、ヴィルティオーゾ系の曲は演奏効果が派手で、
聴衆はつい、演奏者のテクニックに関心が集中し、音楽そのものから乖離してしまうことがある。
そこで、クライバーン・コンクールで辻井伸行氏が弾いた、
ベートーヴェンのピアノソナタ第23番「熱情」をお聴き頂く。
ピアニッシモから、すごいフォルティッシモまでダイナミックレンジが広いので、
ボリュームは適宜調整して下さい。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 「熱情」 Op. 57 第一楽章。
ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 「熱情」 Op. 57 第一楽章
彼が、テクニック(メカニック)だけではなく、深い音楽性を兼ね備えていることが分かる。
◆最後は、華麗なテクニックと音楽性。YouTubeから、リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
最後は、クライバーン・コンクールでも、クローズアップ現代で取りあげていたドイツでの小さなホールでのリサイタルでも
聴衆を熱狂させた、「ハンガリー狂詩曲第2番」を見て、聴いて頂きましょう。
リスト:ハンガリア狂詩曲 第2番(於:クライバーン・コンクール)
昨日の「ラ・カンパネラ」でも書いたけど、本当に無駄な力が入っていないし、身体のどこかが硬くなっていると言うことがない。
このため、速いパッセージでも(勿論、練習したからだが)、指が自由に動くし、相当に強い音を出すときでも、鍵盤を叩きつける、
というような動きが全くない。
如何なるフォルティッシモにおいても、その音を出すのに必要最小限の力だけを用いている。だから、音が割れたり、濁らない。
名人である。が、ご本人は勿論「これで、もう完璧」などと思うわけもなく、勉強しなければならないことがまだまだ山ほどある、と言っている。
一層の研鑽と活躍を期待したい。
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