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JIROの独断的日記
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2008年06月15日(日) NHKスペシャル「激流中国 病人大行列 〜13億人の医療〜」視聴後雑感

◆番組概要:激流中国病人大行列 〜13億人の医療〜 NHK より転載。

NHKスペシャルの番組サイト

(なお、この番組は、同サイトによれば、2008年6月17日(火)深夜【水曜午前】0時55分〜1時44分総合 で再放送される。

興味のある方は録画してご覧になることをお薦めする。)

市場経済化が加速する中国で、今、政府自ら、最も取り組まねばならない課題としているのが「医療」問題である。

激流中国では、北京の大型病院に密着し、その現実を浮き彫りにする。

私たちが取材した公立病院には、連日、全国から大勢の患者が押し寄せる。診察を受けるのは二日がかり、徹夜で並ばなければならない。

なぜそうまでしなければ、診察を受けられないのか?医療制度はどうなっているのか?

かつて中国は、国家が医療費を負担し、医療サービスは無料だった。

しかし制度の見直しで、利用者負担へと変わり、保険制度の整備も遅れているため、医療費が患者に重くのしかかるようになった。

一般の人々が病院に行くのは、いよいよ症状が悪化してからで、地方の病院等ではとても手に負えず、こうした大型病院で診てもらうしか手がないのだ。

しかも医療費が、患者家族にとって“破産する”ほど高額となるケースも頻繁に起きている。

一方、制度見直しによって、病院は独立採算となり、優れた医師や医療設備を導入し、大勢の患者を集めることのできる病院だけが生き残れるようになっている。

こうした“医療格差”がますます拡大する中、患者家族、そして病院、「それぞれ」をつぶさに記録した。


◆コメント:北京の有名病院の診察を受けるために徹夜で800人が毎日並んでいる。

冒頭から中国の人には悪いが、中国に生まれなくて良かった。

これまで、私は日本の医療行政、社会福祉行政について、こうした分野に国家が資金を援助することは義務的支出であり、

これを減らすことを決めた小泉内閣と、その流れを受け継ぐ福田内閣の方針は間違っている、と述べたことが何度もあるが、

ますます、その考えが強まった。

上の番組サイトの説明にもあるように、かつては中国でも医療費は国家が負担しているが、今や、個人の負担である。

そして、周知に通り、自由主義経済の導入により、中国国内の貧富の差は日本とは比べものにならないぐらい激しい。

日本並みの高度な医療を受けることが出来るのは、都市部で商売に成功した金持ちか、例によって政府の要人とその家族ぐらいである。

今日の番組では、北京から700kmも離れた、安徴省(あんきしょう。中国地図で場所を見て下さい)で農家を営む、

ある一家を取りあげていた。梨農家である。一家の主が出稼ぎで得る収入を含めても、年収は15万円ほどである。

ところが、番組サイトに映っている、この医者が院長を務める北京の同仁病院は、

容赦なくカネをむしり取るのである。


◆地方の貧しい家庭で病人がでるとどうなるか。

安徽省の一家の小学生の男の子の左目の具合がおかしい。最初は村の医者に診て貰ったが、医療機関とは言えない。聴診器と体温計と血圧計しかないのだ。

日本でいう健康保険が無くなってしまったので、日本で言えば全額自己負担。薬はあっても誰も高くて買えない。

あるオバサンなど、盲腸だと分かっているのに、手術など受けられない(施設もないし、都会の病院に行くカネもないから)。

薬で散らしていたが、あんなのを放っておいたらやがて、虫垂に膿が溜まりすぎて破裂し、腹膜炎を起こすだろう。そうなったら、

手術なんかできないのだから、いっかんの終わりだ。


それはともかく、子供の目の病気が何なのか村の医者では、装置もないから診断できないといわれた。

親子三人は北京の同仁病院へ向かい、氷点下8度の中、夜通し並んだ(可哀想に・・・)。

診察料は前払いで、まずは診察券を買わなければならない。

地方から患者がどんどんやってくるので、なんと、朝5時、真っ暗な時間、極寒の中、800人の患者が、病院が開くのを待っているのだ。

それでも、人気のある医者の診察券はあっと言う間に売りきれる。買えなかったものは、また24時間待つのである。

これだけで、病気が悪くなる人が当然出るだろうが、中国人である。医者と言えどもカネには貪欲だ。先にカネを払わなければどうしても診て貰えない。

安徽省の子供は眼科医の診察を受けることができた。診断を告げる医者の冷淡なこと。

「手遅れですね。左目が網膜剥離です。左目は失明します。せめて右目を大事にするために、レーザー治療を受けることを薦めます」

にべもない。これでも医者か。途方に暮れる母親。今の診察だけでも高い診療費を払ったのに、

レーザー治療を受けるにはまた、別にカネがかかる。日本円にすると4500円だが、

これは、この一家の一ヶ月の収入に匹敵する大金なのだ。しかし、子供の目が心配な親はレーザー治療を受けた。

そこで、又技師の言葉の残酷なこと。
「2週間後に検査をしますから、また来て下さい」

と、無表情に告げる。今度は1万4千円かかる。2週間後までに、この一家は費用を工面できず、そこらじゅうから借金をしまくって、

予定より、3週間も遅れて、再検査を受けた。幸い右目のレーザー治療は成功だった。

実は、一家には、2年前脳梗塞で倒れたおばあさんがいる。この時も莫大な医療費がかかり、蓄えていた金は使い果たし、借金をしていたのだ。

そこに加えて子供の病気で、また親戚中から借金。お母さんは途方に暮れていた。


◆同仁病院「VIP専用病棟」の唖然とするほどの豪華さ。


一方、同仁病院の院長は、さすが中国人。医者としての腕は知らぬが、病院経営の手腕(金儲けの算段)は見事なものであった。

一般庶民は、徹夜で並ばせていながら、貧乏人用とは別の、VIP用病院を作っている。

ここでの医療費は、一般人の20倍であるが、前述したような金持ちや、政府要人などにとっては、大した出費ではないし、

徹夜で並ばなくて済む。

高い金を払うだけあって、VIP病棟はまるでホテルのようだ。病室は綺麗だし、高級レストランもファストフードもなんでも手に入る。

患者一人に専属の看護婦が付き、診療は院長自ら行い、4〜5人の腕の良い医師のチームが丁寧に応対する。

院長は野心家だ。辺りの土地を買い取り、集合住宅や医療介護付き老人ホームを造る不動産事業を計画している。

それによって得た収益で、更に富裕層にターゲットを絞った、豪華な病院を建設するのだという。

はっきり言って、この院長の頭の中には、地方ではどうしても受けられない医療を受けたくて何日も徹夜で待っている患者はどうでも良いのだ。


◆国家の義務的支出を極端に削るとどういうことになるか、という悪い見本だ。

書き忘れたが、同仁病院に急患が救急車で運び込まれた。急に家で倒れて意識がない、という女性。

病院に到着するなり、救急車の乗員が患者の家族に

「救急車代を払って下さい」

・・・・・。

ICUで検査を始める前に、看護婦が、患者の家族に、
「診察料を払って下さい」

・・・・・。

全て前払いなのだ。尤も、民度の低い国民だから、後払いにすると、払わないで逃げてしまうものが多いらしい。院長が言っていた。

全体を総括すると、中国人はとにかく13億人もいるから、全員の医療費の全額を国家が負担するわけにはいかないだろうが、

かつては医療費は無料だったのに、いきなり、全額自己負担にしてしまったのは大失政である。

人間には平和的生存権があるのだ、という基本認識が無く、はっきり言えば、
貧乏で、治療費を払えない人は諦めて死んで下さい。

が、中国政府のホンネであることは明らかである。ただ、これに対して国民の堪忍袋の緒が切れる寸前なので、

何とか、方法を考えなければ、と国家の中枢部がやっと動き出したところだ。

やはり、あの国はまだ発展途上国だ。

今日のテレビを見て、日本に生まれた好運を有難く思った。

但し、だからといって、小泉路線の医療制度改革を許すべきではない。黙っていたら、

極端な話、日本も中国と同じようなことになりかねない。後期高齢者医療制度、その他、

医療行政に異議のある人は、次の衆議院選挙で与党を大敗させましょう。

我々の意思表示が最も明確に現れるのは選挙しかないのだ。

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