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2008年05月16日(金) |
5月16日生まれの指揮者、オトマール・スウィトナー氏をご紹介しましょう。 |
◆オトマール・スウィトナー(指揮者)(1922〜)
この指揮者は私と同年配以上で、20数年前、N響のコンサートに行ったり、テレビで見ていた方には懐かしい筈だ。
N響は、以前書いたが、有馬大五郎氏という偉い人のおかげで、スウィトナー、サヴァリッシュ、ホルスト・シュタイン
という、名指揮者が毎年呼べたのである。本当に有難いことであった。当時の日本にとっては夢のような現実だった。
音楽を聴き始めて、ロクに分からない(いまだに分かっていないが)子供の私は、彼らの真価を理解出来ていなかったが、
一流の指揮者。本当の音楽に、十二分に接することができたのである。
今日は、もう引退してしまったが、オトマール・スウィトナー先生の誕生日である。
◆この本は面白い。「斜めから見たマエストロたち」
NHK交響楽団の事務長を長年勤めた長谷恭男という方が、これら名指揮者や名演奏家のエピソードを綴った、
「斜めから見たマエストロたち」という本は、私のような者にはたまらなく興味深い。
少し長くなるが、スウィトナー氏をあるとき、ドイツ語ペラペラの有馬先生と長谷氏が食事に招待したときの話を抜粋引用する。
◆スウィトナー氏への愚問
スウィトナー氏がR・シュトラウスのアルプス交響曲を指揮したときのこと。オーケストラの練習を見学していた私は、
氏があの大曲を完全に頭に入れていて、ロクにスコア(引用者注:総譜)も見ないで楽員にあれこれ注文をつけるのに感嘆していた。
数日後、有馬先生がスウィトナー夫妻を渋谷のステーキハウス「小川軒」に招待され、私もお相伴にあづかった。
有馬先生はドイツ語の達人だったので、質問がありますから通訳してください、とお願いした。
先生は、「アホなことは聞くなよ」と云われたが、私は云った。
「マエストロはもしここにピアノがあったら、あのアルプス交響曲を楽譜を見ないで完全に弾けるのですか?」
有馬先生は苦笑しながらも極めて鄭重に尋ねて下さった。マエストロは質問が分からない様子で1分以上も考えて、
「ヤー」(引用者注:Yesの意)と答えた。「それ見ろ。困っとるやないか」と先生。恥をかくなら皿までもと、
「では例えば、左手の3の指はヴィオラとクラリネットで、それが2と4に移って、二つの楽器が反進行する、ということも
理解しながら弾いていらっしゃるのですか?」ここでは、マエストロの沈黙が長かった。しばらくすると申し訳なさそうに答えた。
「勿論そうです。それが出来なかったら棒が振れませんので・・・」
有馬先生は「困った奴じゃ。愚問ばかり発しやがって」と云って、席を立った。
お分かりと思うが、長谷氏の質問に対してスウィトナー氏がすぐに答えなかったのは、怒ったのではない。
指揮者にしてみれば、余りにも当たり前のこと、出来て当たり前のことを質問されたのでキョトンとしたのである。
指揮者になるってのは、そういうことなのである。すごいものだ。
◆私が生まれて初めて買ったクラシックのレコード。スウィトナー、シュターツカペレ・ベルリンによる「ウェーバー序曲集」がCDで復刻しました。
中学生の私が小遣いを貯めて、初めて買ったクラシックの「LPレコード」は、このスウィトナー氏のものだった。
シュターツカペレ・ベルリンとは「ベルリン国立歌劇場管弦楽団」のことである。
何故、これだったのか、明確には覚えていないが、直前のN響定期でスウィトナー氏が指揮した、精霊の王者(支配者)という序曲に感激したから、だったと思う。
なかなかCDにならなかった(或いはなったが一度廃盤になっていた)ものが一昨年、リマスターされたのである。
序曲集 スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリン
一番有名な「魔弾の射手」が無いのが残念なのだが、ここに収められている演奏だけでも、私は素晴らしいと思うのです。
二曲聴いて頂きます。
一曲目は曲名がこれほど不安定な作品は珍しい。ドイツ語のまま「リューベツァール」と云ったり、それを訳したのか「精霊の王者」といったり、
「霊界の支配者」になったり、一体どれが正しいのか。私は、「リューベツァール」といつも呼んでいる。途中トランペットとティンパニがカッコイイ。
弦も管も難しそうだけどね。
ダウンロード Rubezahl.mp3 (4689.7K)
好きなんですよ。これ。ウェーバーの音っていうのが確かにあるのです。ウェーバーでしか聴けない音。
二曲目は大変有名な「オベロン序曲」です。最初静かに始まりますが、序奏部のあと、グイグイと前に進む音楽が素晴らしい。
ダウンロード Oberon.mp3 (9055.0K)
如何でしたか。少し地味ですが、これは名指揮者の名演です。それは確かだと思います。
それでは。
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