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JIROの独断的日記
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2004年05月16日(日) 「陸自撤退につながる解釈 サドル派で内閣法制局が報告」 「戦闘行為の定義」のバカらしさ。

◆記事:陸自撤退につながる解釈 サドル派で内閣法制局が報告

内閣法制局が、イラクで米軍との衝突を繰り返しているイスラム教シーア派の対米強硬指導者サドル師支持派について、陸上自衛隊のサマワからの撤退にもつながりかねない解釈をまとめ、4月に福田康夫前官房長官に報告していたことが15日分かった。政府関係者が明らかにした。

内閣法制局が報告したのは、サドル派を「国に準じる者」とする解釈。福田氏はこれを政府見解とすることを留保。防衛庁は解釈を認めれば、サマワがイラク復興支援特別措置法上の「非戦闘地域」でなくなる可能性もあるため、激しく反発している。

 石破茂防衛庁長官はこれまでの国会答弁で、自衛隊の派遣先となる非戦闘地域について「海外での武力行使を禁じた憲法9条を担保する規定」と説明。その際、「戦闘」については「国または国に準じる者による、組織的、計画的なもの」と定義してきた。

法制局の解釈に従えば、サマワでサドル派による攻撃や応戦があった場合、イラク復興支援特別措置法上の「非戦闘地域」でなくなる。(共同通信)[5月16日2時5分更新]


◆コメント:何の問題かというと、「戦闘行為」の定義の問題なのです。

この日記で、既に何度も引用したが、イラク復興支援特別措置法第2条第三号の文言(もんごん)は次のとおりである。


3  対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる次に掲げる地域において実施するものとする。



ここで、「戦闘行為」を定義している。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」。それから、これだけでは分からないけれども、政府の見解としては、「戦闘行為」の要件が三つあるのだ。


    1.上にあるように、「国際的な紛争」であること。つまり、イラク人同士の内紛で、いくら武器が使われても、イラク復興支援特別措置法では戦闘行為とは云わない。

    2.組織的、計画的であること。個人的なものは犯罪であって、戦闘行為ではない。

    3.相手が、国、又は国に準ずる者であること。フセイン政権瓦解直後はイラクは主権国家の呈を成さなくなっていた。戦争というのは、ちゃんとした主権を持った国家同士が宣戦布告してからやるのを戦争というのであって、そうではない集団から攻撃されても、それは国家ではないからイラク復興支援特別措置法では、「戦闘行為」とはみなさない。


と、いうことで、役人と政治家はイラク復興支援特別措置法で活動できるのは「非戦闘地域に限る」といいつつ、なかなか、戦闘地域の認定ができないように、「戦闘行為」の概念を非常に特別なものにしていたのだ。


◆つまり、相手が「国家」でなければ、いくら攻撃してきても「戦闘行為」ではないのだそうだ。

こうすれば、たとえば、テロリストに単発で攻撃を受けても、テロリスト集団は国家ではないから、「戦闘行為」が行われているとは云えず、「サマワは非戦闘地域です」と言い逃れができるからである。今に始まった事ではないけれども、役人と政治家はこういう、姑息な細工をするのが得意だ。

しかし、今回は珍しく、内閣法制局の方から、「サドル派は国に準ずるものだ」と云ってきたわけである。それなのに、政府はなるべくアメリカの手前、自衛隊を引き上げたくないから、福田は握りつぶした。石破防衛庁長官やら、制服組のトップ(軍隊というのは、兵隊は、少しも戦争なんかしたくないのだが、自分が戦場に赴かない幹部はしたいのである)も猛反対していることを、共同通信が突き止めた、というわけである。

法律というのは、目的論的解釈といって、何のためにその条文があるのか、という、究極の目的を考えて解釈するべきなのだ。イラク復興支援特別措置法で、活動範囲を「非戦闘地域に限る」とした目的は、自衛官の安全を確保するためなのだから、なるべく、その方向に沿った解釈をするべきで、つまり、少しでも危なくなったら、活動は止める、という考え方が、正しい。

にも関わらず、どうして、政府がこういう滑稽な「戦闘行為の定義」をするのかといえば、イラク復興支援特別措置法が、アメリカのご機嫌をとるために「まず、自衛隊派遣ありき」で成立した法律だからである。なるべく、自衛隊を派遣できる余地を残したい。

しかし、これは、日本国憲法が国民(もちろん自衛官を含む)に保障する、平和的生存権を脅かす、非常に危険な思想であり、やはり、こういう人たちが国家の指導部にいることが、日本の悲劇である。


2003年05月16日(金) 「国税庁、高額納税者番付公示」 プライバシーの侵害という以上に、生命の危険がある

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