枯葉が舞い散るこの時期になると毎年のように森茉莉の『枯葉の寝床』という作品のことを思い出す。
作品の内容よりも題名に惚れていて、ひとところに吹き集められた枯葉を見ると「ゴロリと横になりたいなぁ」と思うのだ。『アルプスの少女ハイジ』に出てくる干し草のベッドに通じる物があるように思う。
昨夜は風が強かったので公園に行くと枯葉の吹き溜まりが出来ていた。私は例年のように「あぁ…ゴロリと横になりたい」と思った訳だが、私も37歳の大人…しかも1児の母だ。まさか人目も憚らずにそんなことをが出来るはずもない。しかし、娘はそんな私の気持ちを知ってか知らずか、枯葉の上に仰向けになって寝ころんで「お布団〜」と言って喜んでいた。娘は枯葉の吹き溜まりを見つけるたびに、ゴロンゴロンと寝そべって空を見上げていた。
昨年の今頃、娘は枯葉の吹き溜まりを見ても、踏み鳴らして歩くことしかしなかったけれど、1年経った今、彼女も枯葉の吹き溜まりを見て「お布団みたい」と思うだけの想像力がついたのだなぁ。
娘の成長を愛おしく思うと同時に、私は娘に嫉妬を覚えた。
枯葉の寝床に寝そべって見上げた空はさぞ綺麗だっただろう。そして、なんとも言えない良い匂いがしたのだろう。しかし、これは子供の特権。もっとも、住宅街にある児童公園で自らを解き放てば大人にだって不可能ではないだろうけれど、私には生憎とそこまで自由になる勇気は持ち合わせていないのだ。
大人になると子供時代には出来なかったことが沢山出来る。お金をかせいで自分の好きな物を買ったり、お酒を飲んだり。だけど、だからって大人は子供より自由に生きている訳ではないのだ。大人は見えない何かに縛られているからこそ、子供には許されない快楽を味わうことを許されているのかも知れないなぁ……なんてことを、ふと思った。
大人と子供のどちらが幸せか…なんて単純にはかる事は出来ない。でも、今日ばかりは子供時代に戻れたら……なんてことを思わずにはいられなかった。私は大人だけれど、いつか人の目の無いところで枯葉の寝床でゴロンゴロンしたいなぁ……って事で今日の日記はこれにてオシマイ。