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2014年08月31日(日)
『東京バレエ団創立50周年記念 祝祭ガラ』

『東京バレエ団創立50周年記念 祝祭ガラ』@NHKホール

デング熱感染源で話題の代々木公園を横目に会場へ。このときはまだ判明した感染者が三人くらいだったし、殺虫剤散布直後だったのでそんなに怪しい雰囲気はなかった。晴天、夏休み最後の日曜日とあって賑やかでした。

飴屋法水、山川冬樹、さいたまゴールド・シアターの面々と、さまざまな身体を観てきた三日間の最後を飾るのは(?)東京バレエ団。お目当ては、ゲストであるシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。2005年に「最後」のツアーが行われたギエムの『ボレロ』ですが、モーリス・ベジャール追悼公演東日本大震災復興支援チャリティ・ガラ、そして今回と特別な折にはその封印を解いてくれました。しかし、もう次の「特別な折」を期待することは出来なくなってしまいました。8月14日に、彼女の引退が発表されたのです。

・シルヴィ・ギエム、来年12月引退。月末〈祝祭ガラ〉で特別に「ボレロ」上演!:NBS日本舞台芸術振興会

NHKの9時のニュースで一報を知り呆然とし(TVのニュースで報じられると言うその重大さにも改めて驚き)、Macを開けたらタさんからメールが来ていました。いつかは当然そうなるとは思ってはいても、実際それが起こると動揺する。

バレエ団50周年と言うことで会場のNHKホールはフルハウス、大入り袋も配られ(ロゴ入りミニライトが入っていました)華やかなお祝いムードでしたが、どこかに緊張感も漂っていたように思います。このあとツアーが続くと言うのにプログラムは完売。再販準備が出来たら送料無料で送ってくれるとのことで申し込んできましたが、送料だけでも相当な額になるよなあ。予想を大きく上回る売れ行きだったのでしょう。落ち着かず、開演前も二度の休憩もロビーをうろうろしてしまう。歴代公演のポスターが展示されており、眺め乍ら歩く。ああ、首藤さんの『ボレロ』や十市さんの『M』、また観たいなあ。これももう叶わないことだ。

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ミハイル・フォーキン振付『ペトルーシュカ』(ゲスト:ウラジーミル・マラーホフ)
ジョン・ノイマイヤー振付『スプリング・アンド・フォール』
ジョン・クランコ振付『オネーギン』より第3幕のパ・ドゥ・ドゥ(ゲスト:マニュエル・ルグリ)
ナタリア・マカロワ振付(マリウス・プティバ版による)『ラ・バヤデール』より“影の王国”
モーリス・ベジャール振付『ボレロ』(ゲスト:シルヴィ・ギエム)
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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の生オケで、指揮はワレリー・オブジャコフ。

『ペトルーシュカ』は祝祭ガラの開幕にふさわしい華やかさ。ムーア人役の森川茉央さん素晴らしかったなー。近年メキメキ頭角を現してきた印象です。『オネーギン』、ルグリは登場した途端拍手がわきました。いやーん素敵。オネーギンの話自体はも〜、オネーギンうぜえ! 女々しい! とイライラするのですが(笑)バレエとなれば別ですよ! いやむしろ、踊りの端々に見られるオネーギンの女々しさ素晴らしい(笑)。部屋の奥からおずっと登場し、よよよとタチヤーナにすがりつき、手紙をビリーと破かれ、いやーん! と駆けて退場ですよ。そのよよよもいやーんももう素敵だ! ムカつく素敵さだ! そんなオネーギンの人物像はさておきルグリは素敵であった。や、オネーギンもいいとこの子だから素敵なのよね、性格以外はな! ため息も漏れると言うものです。プログラム的にはこれがいちばん面白かった“影の王国”は、ヴァリエーションも多く、終始ポーズを含めた女性ダンサーの群舞が観られるのがよかった。

そして『ボレロ』。2003年『奇跡の響宴』のときにも思ったが、生オケはホント難しい。twitterで指摘されてる方がいましたが全くの同感です。『ペトルーシュカ』でもTpがかなり危なかったんだよね…や、難しいのは判るが。判るが……。カーテンコールのとき、思わずオケピをのぞきこんでしまった(二階席で丁度見える位置だった)。Tbの方目の辺りをぬぐってらして…え、泣いてる? と思ったけど気のせいだったかな。タさん曰く「そんなことで泣いてたらプロはつとまらん」。確かにね…しかしああ〜やっちまった! と思っただろうなあ。客席が「……!!!」て声にならないガ〜ンて空気に満ちました。

それはともかく、この日のギエムのメロディはとても優雅だった。これ迄リズムを鼓舞するような力強さだったり、リズムに喰い尽くされる生贄のような艶やかさだったり、ギエムはさまざまなメロディを見せてくれた。ベジャールが亡くなったあとのメロディはここ迄動きを変えていいの? と驚く程自由だった。しかしどのメロディも、マシーンのように強靭だった。ポーズがぴたりと止まる。動きがブレない。サイボーグのようなダンサーと評されたこともある正確さだ。今回もやはり正確ではあったが、感じたのは強靭ではなく流麗だった。引退を発表してホッとしたところもあるのかも知れない。勿論それで踊りが緩むことはない。日々鍛錬するアスリートとしての肉体と、表現を磨くアーティストとしての信念。その身体でしか表現し得ない、ギエムだけの踊り。たったひとりのバレエダンサーが、来年舞台を降りる。

カーテンコールは騒然と言った感じで、悲鳴のような歓声もとんでいた。オケピのひとたちも立ち上がり拍手を贈る。ギエムは微笑んで声援に応えていた。

オープニングでは、東京バレエ団50年のあゆみを振り返る映像が上映されました。ジョルジュ・ドンの『ボレロ』もあった。このときのリズム、上半身も服を着てたのでこういうヴァージョンもあるのかと驚いた。1990年の公演だったとのことだが、近年服着てるの観たことないなあ。会場や演出によって厳密な指定ってあるのかな。