手元に、 巻き戻らぬ記憶。
封じて、 決して開かぬ記憶。
自身の流れの内で、 跡切れた、 其の一時は。
大抵は、 然程の意味を保たぬ事が多いけれど。
恐らくは。
互いの其の想いの根源が、 其処に、 在るにも関わらず。
何故に。
何時迄も、 断端として留まり続けたのだろうか。
今。
其の扉が改めて開いた、 其の意味を。
必死に、 思案する。
初めて逢った、 其の日。
「手を繋ぐ訳でもなく。」 「小坊主は一歩先歩いてさぁ。」
「彼の時は。」 「距離感とか良く分からなくて。」
「彼の頃はさぁ。」 「こうなるとは思いもしなかったよね〜。」
「やっと想い出した。」 「初めて逢ったの御茶ノ水じゃ無いね。」
「やっと繋がった?」 「忘れてたなんて酷い人だよね。」
少し前を、 ぎこちなく歩いて居た、 俺の姿に。
あの子は、 何を映して居たのだろう。
「もう一回歩こっか。」
「今度は手ぐらい繋いでよね。」
段葛の。
咲きかけの躑躅を撮した、 其の拍子に。
ずっと抜け落ちて居た、 其の日付が。
眼前に、 零れ出た。
---------- References Aug.15 2002, 「安堵しても良いのですか」 Aug.02 2004, 「挑発の応えに成り得る質でしたか」 Jun.02 2011, 「過去の真が垣間見えますか」
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