仕掛けるとすれば。
敵が、 半ば無意識に応答する、 寝込みなのだ。
「ねぇ。」 「小坊主は誰が好きなの?」
真の意識を、 奪い捕る為には。
判断力を失いつつ在る、 寝込みが、 最適なのだ。
「小坊主の好きな人は。」 「何て名前なの?」
用心に、 用心を重ねても。
寝入り端には、 ふと、 高次の抑制が緩み。
眼前の女とは、 異なる名が。
口を吐いて出る。
けれども。
自身の防衛本能が、 辛うじて、 機能したのだろうか。
其の口から、 望む名が出る事は無く。
姫は、 更に追及の手を、 強めるのだ。
「小坊主の好きな人。」 「もう一人居るでしょう?」
一度では無く、 何度も、 何度も。
一瞬の隙が、 俺の口に顔を出す迄、 繰り返すのだ。
「違うよ。」 「その人じゃなくてもう一人居るでしょ?」
何か、 尻尾を掴んだのか。
其れとも、 不安の裏返しか。
姫は執拗に問い掛け。
自身の、 危機意識故か。
其れとも、 本心の想いなのか。
俺は、 眠りながら。
姫の尋問に、 娘の名を、 連呼し続けた。
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