今、 其の時は。
今後、 一度たりとも手に入れられぬから。
貴重な一瞬を。
丁寧に、 丁寧に、 想い続けるのだけれど。
悠久の、 時の流れから、 較べれば。
一生など、 微々たる物で。
今、 其の時など。
刹那にも満たぬ、 取るに足らぬ存在なのだ。
其れ故に。
形創られた、 穏やかな流れの中で。
一瞬に、 乱れぬ様に。
一瞬に、 惑わぬ様に。
想いを、 紡ぎ続ける筈なのに。
何故に其の一瞬を待てぬのだ。
もう少しだったのに。
九十三年と言う、 時の長さからすれば。
三ヶ月半など、 曾孫を抱く迄の時など、 刹那にも満たない筈なのに。
其の、 刹那の猶予は。
俺に、 注がなかった。
「行ってらっしゃい♪」 「寂しいだろうけど。」 「おじいちゃんの顔やきつけてお別れして来てね。」
俺を笑顔で送り出す、 姫こそ。
何時か逢いたいと希った、 其の対象を、 喪失して終ったのにね。 |