2016年07月22日(金)  静かな生活

昨年、保育園建設が地域住民の反対で難航するケースが増えていることをニュースで知り、NHKのFMシアターで「静かな生活」というラジオドラマを書きました。

一階に保育園が入ったマンション。静かな生活をおびやかされた一部の住人が保育園を追い出そうとして、管理組合総会は紛糾。
激論の果てに司会進行を務める弱気な理事長が吠えます。

「保育園がうるさい? 子どもがうるさい? 大人のほうが、よっぽどうるさいじゃないですか。好き勝手なこと言って、自分たちの静かな生活を自分でかき乱してるじゃないですか。誰にも迷惑かけずに大きくなったような顔して、そんなの思い上がりだ。だって、子どもは、こんなに小さくて、一人じゃ何もできなくて……この子を守るのは、母親だけの責任ですか? みんなで守ってあげないと、生きていけないですよ。みんなって誰ですか? 僕たち一人一人ですよ。誰だって静かに暮らしたい。でも、みんなが自分のことしか見てない世の中で、子どもは育ちませんよ」

このドラマの中でも「保育園ママのマナーの悪さ」や「子どもを預けて働く母親への批判」は登場したのですが、そもそも自分と違う生き方を選ぶ人たちへの理解、許容がないと、その人たちが必要とする施設を受け入れることも難しいのかなと想像します。

facebookで見た「児童養護施設建設反対を呼びかけるチラシ」に込められた「自分の子さえ良ければいい」感に、そのことをあらためて感じました。

保育園も児童養護施設も、必要なのだろうけれど、うちのそばでなくてもいいじゃないかという気持ちは、誰にでもあるものだろうと思います。できれば誰だって静かに暮らしたい。けれど、静かな生活を何よりも壊すものは、渦巻く偏見や悪意なのでないか……。

きれいごとだけでは生きられないけれど、ここまで正直に危機感をぶちまけなければならないほど余裕のない世の中も怖いなと、さまざまなことを思い起こさせられました。

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