2010年03月21日(日)  子守話113「おえかきかさ くるくる」二つの結末

3連休、わたしはパソコンに向かって原稿打ち。ほったらかしにされるたまは、合間に絵本を読んでもらうのと寝つく前の子守話を楽しみにしてくれている。

言葉が豊かになるにつれ、お話のリクエストが細かくなってくるのが面白い。こちらが眠いときの間に合わせの駆け足話は「みじかい。もっとながいの」と再提案を求められる。結末が気に入らないと、「そういうのは、いじわる」だの「そんなおはなしは、やだ」だのとダメ出しをされる。

そうやって作り直すと、たまだけでなくわたしも「こっちのほうがいいな」と思えるお話になるのが不思議。直感の「すき、きらい」が物語をあるべき方向へ導く。子どもに聞かせるお話の名編集者は、子どもなんだなと思う。

ここのところ何度か聞かせて進化した「お絵描きの傘」のお話もそう。画用紙みたいに真っ白な傘にクレヨンで絵を描いてくるくる回すと、描いたものが飛び出して……というお話。最後に雨粒を描いたら、水に溶けるクレヨンで、みんな消えちゃいましたというラストにたまは「きえるクレヨンは、やだ。きえないクレヨンがいいよう」と反発。傘を反対回しにしたら、飛び出したものが傘に舞い戻るという展開に変更したところ、「このおはなし、いいねえー」と気に入ってもらえた。

子守話113「おえかきかさ くるくる」

あるひ たまちゃんは みちばたで 
しろい かさを ひろいました。
がようしみたいに まっしろな かさです。
たまちゃんは おえかきを したくなって
クレヨンで おはなを かきました。

おはなを かいた かさを くるくると まわすと
おはなは かぜに ふかれたように 
かさから ふわりと はなれ
ふんわりふんわりと じめんに まいおり
たまちゃんの まわりは おはなばたけに なりました。

つぎに たまちゃんは ちょうちょを かきました。
ちょうちょを かいた かさを くるくると まわすと
ちょうちょは はねを はためかせて かさから とびだし
おはなばたけの はなばなに そっと まいおりました。

つぎに たまちゃんは ことりを かきました。
ことりを かいた かさを くるくると まわすと
ことりは はねを はばたかせて かさから とびたち
おはなばたけの うえを とびまわりました。

つぎに たまちゃんは 
きのみを つけた おおきな きを かきました。
おおきな きを かいた かさを くるくると まわすと
おおきな きは かさから どすんと おっこちて
おはなばたけの まんなかに ねっこを はりました。
さっそく ことりたちが きのみを ついばみに とんできました。

たまちゃんは つぎつぎと きを かきました。
うさぎや くまや きつねや りすも かきました。
それから かさを くるくると まわすと
そこは どうぶつたちが はしりまわる もりになりました。

すっかり クレヨンは みじかくなり
すっかり おひさまは かたむいて
おうちに かえる じかんに なりました。

たまちゃんは かさを はんたいまわりに くるくるまわしました。
すると かさから とびだした はなや ちょうちょや ことりや きや
どうぶつたちが すいこまれるように かさに まいもどり
かさの うえに にぎやかな もりが あらわれました。

もりが かさから とんでいかないように
たまちゃんは かさを まわさないで かえりました


ちなみに、もうひとつの結末は、最後の3つの段落部分が以下のように。

さいごに たまちゃんは あめの しずくを かきました。
しずくを かいた かさを くるくる まわすと
しずくが かさから ちって あめが ふりました。

あめは きを ぬらし どうぶつたちを ぬらし
ことりや ちょうちょや はなを ぬらしました。

すると どうでしょう。
きも どうぶつたちも ことりも ちょうちょも はなも
みるみる とけて ながれてしまいました。
たまちゃんの クレヨンは みずに とける クレヨンだったのです。

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