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2014年10月31日(金) |
「日銀が追加緩和決定、国債買い入れ年間30兆円拡大」←意味がありません。 |
◆記事:日銀が追加緩和決定、国債買い入れ年間30兆円拡大(ブルームバーグ)(10月31日(金)14時23分配信)
日本銀行は31日の金融政策決定会合で、追加緩和に踏み切ることを5対4で決めた。
長期国債の買い入れを「保有残高が年間約80兆円に相当するペース」に増やすほか、
指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J−REIT)の買い入れも
「それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペース」に拡大する。
マネタリーベース目標額は「年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」として、
従来の「年間約60兆−70兆円」から引き上げた。今会合まで長期国債は「保有残高が年間約50兆円に相当するペース」で、
ETFとJ−REITはそれぞれ年間約1兆円、同約300億円に相当するペースで買い入れを行っていた。
この決定に対し、木内登英審議委員、佐藤健裕審議委員、森本宜久審議委員、石田浩二審議委員が反対票を投じた。
エコノミスト32人に対するブルームバーグ・ニュースの事前調査では、3人が追加緩和を予想、29人が現状維持を見込んでいた。
日銀はまた、長期国債買い入れの平均残存年限を7−10年程度とし、最大3年程度延長する。
さらにETFの買い入れ対象に新たにJPX日経400連動型ETFを加える。
黒田東彦総裁は28日の参院財政金融委員会で、日本経済は2%の物価目標の達成に向け順調に道筋をたどっていると言明。
展望リポートも同様の内容になるとみられていたが、世界経済の減速懸念を背景とした原油価格急落から、
2%の早期実現に黄信号が灯っており、日銀の強気な姿勢に対する不信感が高まりつつあった。
◆コメント:総需要(特に個人消費)が増えていないのに、物価と税金を上げ(ようとし)ても、意味がありません。
アベノミクスという言葉をメディアが連発するので、なにやら新しいことのように見えますが、
安倍政権の経済政策、金融政策の発想がそもそも間違っています。
黒田日銀総裁は日本銀行の独立性なんかどうでも良いのでしょうか。
安倍政権当初からの「デフレからの脱却」「具体的な目標として、年間2%の物価上昇率」を掲げていて、
その実現の為に、前白川総裁を任期が来る前に辞めさせて黒田総裁にしました。
しかし、安倍政権の経済政策の発想は根本的に誤っています。物価上昇はあくまでも景気が好転し
国民の所得が増える、そしておカネを使うようになる(個人消費が増える)、その結果需要と供給の原理で
モノやサービスの方が足りなくなる、その結果として、物価が上がる。
これを「ディマンド(需要)・プル・インフレーション」といい、これが健全な経済のプラス局面への道筋です。
アベノミクスとやらのバカなところは、「とにかく物価が下がり続けるデフレをインフレに転換させること」自体を目標にしていることです。
黒田総裁になってから「異次元の金融緩和」とかなんとか言っていますが、要するに金融市場から国債とか記事に書いてあるような
投資信託という金融商品を買い入れる。買えばおカネを支払うのですから、日銀が金融市場に供給されます。
このような日銀の金融政策だけで、無理矢理名目上の「物価」を上げても意味がありません。これは単なる「ゲーム」、「ごっこ」です。
金融政策で資金を市場に供給すると経済全体の財・サービスの価値は通貨の流通量に一致するから、名目上は
物価が上がるのです。
◆ものすごく単純化して説明します。
これは非常に古典的な経済学説が大元で貨幣数量説というのです。
物価は貨幣の総量と一致していると。
これ以上単純化出来ない状況を想定します。
無人島にみたいな島にあなただけがいます。アンパンが一個。おカネは10円玉一個だけです。
その経済社会の全ての財産(アンパン)の価値は貨幣流通量(10円)に一致するのですからアンパン=10円です。
ところがもう一つ、10円玉が見つかったとします。
一挙に貨幣流通量(通貨供給量)が倍になりました。
その島の全ての商品アンパン一個の値段は20円。倍ですから瞬間的にインフレ率100%。
ホントは流通速度というのも考慮するのですが、まあいい。
日銀が金融緩和で通貨を市場に供給すればデフレから年率2%の物価上昇率を実現出来る、
と(絶対、そうだ、とは言いませんが、安倍首相の意向を受けて)考えているから、今日の決定がなされました。
その根底には、今書いたような、物価は通貨の流通量で決まるのだというコケの生えたような昔からの考え方に立脚しています。
しかし、実際には無駄なのです。
◆どうして無駄と分かるか。資金供給量(マネタリーベース)日銀当座残高に注目することです。
日本の世の中に流通しているおカネの総量はどれぐらいか。以前はマネーサプライといいました。
今は、「マネタリーベース」といい毎月の始めに発表されます。日経記事だと「資金供給量」と言います。
10月2日の日本経済新聞の記事です。
◆記事:9月末の資金供給量、252兆5845億円 2カ月連続で過去最高更新 (日経電子版)(2014/10/2 9:56)
日銀が2日に発表した9月のマネタリーベース(資金供給量、月末残高)は252兆5845億円と、8月末(243兆4929億円)を上回り、
2カ月連続で過去最高を更新した。増加率は3.7%と8月(0.1%)に比べて拡大した。
9月は国債の大量償還があり、日銀の当座預金残高が膨らんだ。
日銀が大量の国債を買い入れて資金を供給する量的・質的金融緩和を続けているほか、
四半期ごとの貸出増加を支援するための資金供給があったことで当座預金に資金が積み上がった。
マネタリーベースは市中に出回るお金(紙幣、硬貨)と金融機関が日銀に預ける当座預金の合計。
日銀は量的・質的金融緩和により、2014年末にマネタリーベースが270兆円になる見通しを示している。
(注:色太文字は、引用者による)
資金供給量という統計は、記事に説明があるとおり、金融機関が日銀に預ける当座預金(日銀当座預金残高)を含むのです。
その日銀当座残高は、過去最高の額に達しています。日経のみならず、このことは毎回、記事の中で触れていますが、その意味を
書かないのです。
市中銀行(3メガ銀行、地方銀行など)の取引先である一般企業が、「これから、景気が良くなるだろう」と
感じるならば、銀行から融資を受けて新しく工場を建てたり、モノの生産に必要な機械の数を増やす、などの
「設備投資」が増えるのです。そのような融資案件が多ければ、銀行は手許のおカネがそれほど残りませんから、
日銀当座残高が「過去最高を更新」するはずがない。それは誰も市中銀行から大口融資を受けていないことを
端的に物語っています。ですから、そのような「資金需要」がないところに、どれほど、
「追加的金融緩和策」で市場に資金を注入したところで、国民(個人)が景気が良くなった と感じることはありません。
◆金融政策決定会合で「賛成5、反対4」など初めてかどうか分かりませんが、極めて異例です。
日銀の金融政策決定会合は毎月開かれますが、大抵「全員一致で決定」するのです。
今回はなんと追加的な金融緩和措置にたいして、会議のメンバー9人中、4人も反対していた。
という事実がもっと注目されるべきなのです。そもそも、先進国の中央銀行で、日銀ほど独立性が
ない中央銀行は他にはない。政治に屈する日銀はだらしないのですが、平気で金融政策に介入してくる
安倍首相をはじめとする国会議員は、本来してはいけないことを毎回しています。
あってはいけないことです。
◆総需要を創出する為に、減税するべきです。
これは、奇を衒っているのではなく、私は以前から何度も書いています。
個人消費はGDPの約6割を占めるのですが、給料が増えていないのに、金融政策によって物価を無理矢理押し上げ
しかもまた消費税率を現在の8%から10%へ引き上げたら、個人消費が増える訳が無いのです。
前述したとおり、正しい物価の上がり方、というのは、ディマンド・プル・インフレーションです。
人々の懐具合が暖まる。つまり、可処分所得(実際に使えるお金)が増えれば、モノやサービスが売れる。
売れすぎて、供給よりも需要が多くなり、その結果物価があがる。
すると企業は銀行から融資を受けて設備投資を行い生産を増やします。
モノやサービスが売れて企業の儲けが伸びれば、政治家が経団連に「賃上げ要請」などしなくても、
自然に給料が増え、つまり家計所得が増え、その結果さらに個人消費が増えるという好循環が始まります。
現状では、いきなり給料が、大手から零細企業まで増えるということはありえないので、
家計の可処分所得を増やす為には、消費税を、せめてもとの5%にもどして、さらに所得税を減税するべきです。
IMFや格付け機関がなんといおうと、財政健全化がおくれようが、実体経済が好転しないと意味がない。
安倍内閣の経済政策は、実体ではなくて、まず「デフレからの脱却、物価の上昇ありき」を目指すから
根本的に間違っている、と私は毎回、言うのです。
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