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JIROの独断的日記
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2011年03月25日(金) 首都圏の人々も「被災者」である。

◆敢えて書きますが、東京の人間も「被災者」だと思います。

地震から昨日(3月25日)で、二週間でした。

今なお、避難所生活を送られている皆様には

心よりお見舞い申しあげます。


その気持ちにウソはありませんが、震源から遙かに離れ、

地震自体による家屋の倒壊、火災、また津波による被害を受けず、

死者が殆ど(ゼロではありません)出なかった首都・東京は常識的には到底

「被災地」とは言えず、従ってそこに住む東京都民や近隣県の住民も到底

「被災者」と認識されていません。


しかし、誤解を恐れずに敢えてかきますが、東京や首都圏のかなりの地域の

人々も東北関東大震災の「被災者」に属すると思います。


◆今までに無い、イレギュラー(不規則な、例外的な)ことが連続するストレス。

何故、首都圏の住民も被災者なのか。

それは、
「生まれてこの方経験したことがない出来事の連続」

がもたらす不安・ストレスが大きな要因、いや、そのストレス自体が「災害」です。


地震当日

私は会社(千代田区神田のビル9階)にいましたが、

14時46分に東京も揺れました。それは勿論、映像で見る震度7の恐怖より

遙かに、小さかったけれども、半世紀以上の自分の人生で最大の揺れでした。

「最大の揺れ」が「数分間続いた」のですから、恐くない訳がない。


あれ以来、ものすごい回数の余震が起きているのは皆さん御存知の通り。

余震が来るたびにドキッとします。


そして3月11日は首都圏のJR、私鉄、地下鉄の多く(一部は深夜運転再開)が

地震発生後、かなり早く、「本日、これより終日全面運休」と宣言しました。

驚くほどの人が都心か郊外まで歩いて帰宅しました。

私も神田から荻窪まで、後で道のりを測ったら14.5キロほどを、

約4時間半、歩いて帰りました(地震直後に「20キロを5時間」と書きましたが、

訂正します)。

歩いて帰ることが出来るのが分かったのが「収穫」だった、と後から

言えないこともありませんが、正直、二度とご免です。

自宅が近づくにつれ、文字通り「脚が棒になる」状態で、

歩くたびに「足」ではなく「脚の付け根」に痛みが走りした。


週明け、14日(月)。首都圏の鉄道各線は全面運休か、通常の2割程度の運行本数。

ものすごい混雑で、会社にたどり着けず、途中で引き返しました。

政府が「計画停電」を実施する、と発表しました。

戦争中、「空襲警報」と共に「灯火管制」が行われた、

という話は勿論知っていますが、平時の日本でこんな事は

生まれて初めてです。


まもなく、福島の原発から放射能が漏れているらしい、というニュースが流れ始め

15日(火)、メディアは、ISIS(米国のシンクタンク。科学・国際安全保障研究所)は

福島原発の事故は、既に過去最悪のチェルノブイリの危険度、レベル7の次に危険な

「レベル6」に達しており、残念ながら、レベル7になる可能性が高いとの見解を

発表したと報じました。

場合によってはこちらの生命に関わる事態が余震のみならず、

原子力発電所からの放射能漏れ、という形で発生する可能性がある

とは思っていませんでしたから、大きなショックを受けました。


それと同時に「買い占め」が始まりました。

何故か、米が無い。パンが無い。その他保存食など、どこのスーパーもコンビニも

品切れで棚がスカスカです。加えて、トイレットペーパー、が無い。ガソリンが無い。

無くなる理由はないのに、誰かが「買い占め」を始めると、他人と同じ事をしないと

心配で仕方が無い、という日本人の行動様式が、事態の悪化に拍車をかけました。


17日(木)、急に気温が下がり、エアコンを使う人が増えました。

午後2時過ぎ、海江田経産相が、
このままだと、今晩、東京で予測不可能な大規模停電が発生するかも知れない

という談話を発表しました。

これを受けて国交省が首都圏の鉄道各社に運行本数削減などの節電措置を取るよう要請した

ことが分かり、ちょうど夕方にさしかかるところでしたから、

皆、地震当日や、週明けの鉄道の混雑を、瞬間的に思い出し、

「大規模停電」(結果的には回避されましたが)が起きる前に帰宅しようとし、

首都圏の鉄道は、パニック的な大混雑となりました。


今週は、21日(月)、菅首相が、福島、茨城、栃木、群馬4県の知事に対し、

4県全域で生産されたホウレンソウとカキナ、福島県産の原乳について

「当分の間、出荷を控える」よう指示
を出しました。


さらに23日。菅首相は、福島県産のホウレンソウ、小松菜、キャベツ、ブロッコリー、

カリフラワー、クキタチナ、シノブフユナ、サントウナ、アブラナ、チジレナ、コウサイタイ

を当分の間食べないよう、指示
を出しました。


24日。東京都葛飾区の浄水場の水道水から放射性ヨウ素が検出され

直ちに健康に害を為すほどではないとしても、

1歳未満の乳幼児の飲用自粛要請が東京都から発せられました。

東京都水道局の記者会見が放送された30分後には、スーパー、コンビニ、ネットショップ、

自動販売機の水が完全に売り切れました。


翌日には飲用自粛要請は放射性ヨウ素が規制値未満になったので

少しは安心したもの、
水道水から放射能が検出された。

と聞いて冷静でいろ、と言う方が無理で、特に小さいお子さんを抱えたお母さんで、

ミネラルウォーターが買えなかった人は、本当に心配だっただろうと思います。


このように、我々首都圏の人間は、地震から2週間の間、ほぼ毎日連続して、

生まれて初めての、緊急の或いは極めて例外的な出来事を経験し続けているのです。


◆今の状況がいつまで続くのか分からない不安。

14日間、ほぼ毎日、「生まれて初めて経験する異常事態」に遭遇しても、

それが、いつ頃終わりそうなのか、目途が立っているのなら、人間は耐えられます。

不謹慎ですが、もし今回の災害が「地震だけ」だったら、勿論津波の犠牲者がお気の毒なことに変わりはありませんが、

その後の復興に関しては、日本人は歴史が示すとおり余り悲観的にならなくて済んだのでしょうが、

放射能漏れで色々な影響が出てしまって、もう以前と全く同じ「日常」があり得ないだろう

と、口に出さなくても思っている人が多いです。


◆全然話題にならない被災者、音楽家。

以上、列挙した通り、東京や首都圏の住民も、地震の後、様々なストレスを感じています。

更に、私の本来好きな分野、オーケストラに関して書くならば、

地震の後、キャンセルになったコンサートやリサイタルが、かなりの数になります。

公演中止がつづくと、音楽家は経済的に本当に困窮してしまいます。

地震のあとだから、コンサートを中止ということではなく(そういうのもあるでしょうが)

物理的に不可能になってしまったのは、東京交響楽団が本拠地にしているミューザ川崎
ミューザ川崎シンフォニーホールでの公演について 2011年3月22日(火)

すでにお知らせしている通り、3月11日の地震で、ホールの天井仕上げ材等が落下する被害が発生いたしました。
現在の状況から、半年程度はホールでの公演開催は不可能となりました。

チケットご購入のお客様、ホールご利用者ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。

このホールは東京交響楽団がリハーサルにも使用していたので、ひじょうにこまっているはずです。

また、被災地そのものに拠点を持つ仙台フィルハーモニー管弦楽団。
気の毒に、
演奏会中止のお知らせ≪3月17日更新≫

今回の未曾有の震災のため、2011年3月〜6月までの主催公演については、すべて、やむをえず公演を中止させていただきます。

この他にも、フリーの方も、頼まれていた仕事が全部キャンセルになったそうで

音楽家も「今度弾けるのはいつなのか」分からないのは、非常なストレスでしょう。


◆以上のようなことを声高に訴えにくい、というのがストレスです。

色々書きましたが、直接的・物理的な「被災」ではありませんが、

震源から遙かかなたのここ首都圏の人間とて決して以前と同じではなく、

今までごく普通の日常として認識していた環境が次々に制約を受けたり

場合によっては、消滅している。しかし、こういうことを訴えたくても

「岩手・宮城などの被災者のことを考えたら、それぐらいどうってことないだろう」と

言われると、飲み込むしかありません。それがまた辛いところです。


何とか我慢しているのは、地震から2週間経ったとは言え、まだ

脳が一種の「興奮状態」にあり、気が張っているからだとおもいます。

妙な、というか不謹慎な傍証かもしれませんが、11日の地震以来、

それまでは、一週間に必ずと言ってよいほど何度も起きていた鉄道の

「人身事故」即ち飛び込み自殺が、地震の後には私の知る限り一件しか

ありません。戦争中、自殺者は少なかったそうです。

放っておいても命が危ない、という環境では、人間は自ら死のうとはしない

のでしょう。現在、戦争と自然災害は全くことなりますけど

「もしかすると、まだ命が危ない」と無意識に感じているからではないか

と思います。

命は助かったし、家も残っていますが、首都圏の住民とて

一種の「地震の被災者」といっても過言では無い、と思います。

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