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2010年09月21日(火) |
「郵便不正事件証拠改竄」に関する所感。 |
◆記事1:最高検、主任検事を証拠隠滅容疑で逮捕 郵便不正事件(朝日新聞)(2010年9月21日21時51分)
郵便割引制度を悪用した偽の証明書発行事件をめぐり、押収品のフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして、
最高検は21日夜、大阪地検特捜部でこの事件の主任を務めた前田恒彦検事(43)を、証拠隠滅の容疑で逮捕した。
朝日新聞が21日朝刊で疑惑を報じたことから、最高検が捜査に乗り出していた。
朝日新聞が入手した特捜部の捜査報告書などによると、FDは昨年5月、厚生労働省元局長の村木厚子氏(54)=一審・無罪判決=の元部下の
上村(かみむら)勉被告(41)=虚偽有印公文書作成・同行使罪で公判中=の自宅から押収された。自称障害者団体が同制度の適用を受けるため、
上村被告が2004年6月に発行したとされる偽の証明書の作成日時データなどが入っていた。 (注:色太文字は引用者による。)
◆記事2:厚労省局長を逮捕 証明書偽造の疑い、部下に発行催促か 郵便不正、当人は否認=続報注意(朝日新聞)(2009.06.15)
自称・障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)を郵便割引制度の適用団体と認めた証明書を不正に発行したとして、
大阪地検特捜部は14日、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長の村木厚子容疑者(53)を虚偽有印公文書作成・同行使の疑いで逮捕した。
厚労省によると、同省局長が逮捕されるのは初めて。
村木局長は容疑を否認し、「凛の会や証明書のことは知らない。私はこの件に関与していない」と述べているという。
障害者団体向けの郵便割引制度が企業のダイレクトメール(DM)発送に悪用された一連の郵便不正事件は、
制度適用を審査する立場にある厚労省幹部の逮捕にまで発展した。特捜部は15日午前、厚労省の局長室や埼玉県和光市の自宅を家宅捜索した。
また特捜部は14日、証明書発行のための決裁文書を偽造した同容疑で逮捕していた元部下で障害保健福祉部企画課係長の上村勉容疑者(39)らも
共犯容疑で再逮捕した。係長は「村木局長から証明書を早く発行するよう催促された」と供述しているといい、特捜部は局長を追及する。
ほかに再逮捕されたのは、凛の会元会長で白山会代表の倉沢邦夫容疑者(73)
▽凛の会元幹部の河野克史容疑者(68)。再逮捕の3人は容疑を認めているという。
特捜部の調べによると、村木局長は、障害保健福祉部の企画課長だった04年6月初め、上村係長ら3人と共謀。
凛の会に障害者団体としての実態がないにもかかわらず、企画課長の公印のある偽の証明書を作成。
河野元幹部らが6月10日、企業の不正DMを発送するため当時の日本橋郵便局(東京都中央区)に提出した疑いがあるとされる。
証明書は5月28日付に日付をさかのぼって作成されていた。
◆コメント:村木局長逮捕も証拠改竄も朝日新聞が「スクープ」として伝えている。
時系列的には記事2のほうが、先である。村木局長が逮捕された記事で、この記事だけでは分からないが、
この時に、朝日新聞は、結局冤罪と判明した郵便不正事件を自社がスクープしたと得意気なのである。
それは、「朝日新聞 会社案内 2010」という、昨年、朝日新聞への入社を志望する学生に配られた
パンフレットで明らかである。
「朝日新聞 会社案内 2010」には、「特報--調査報道・スクープ」という箇所に、
「調査報道・スクープ」の実例として、郵便不正事件を取りあげている。
郵便制度の不正利用の実態を特報
というタイトルの文章では、一連の事件は
朝日新聞が取材を重ね(中略)調査報道で明らかにしました。
と、得意気で、さらに、
報道を受けて、大阪地検特捜部も2009年2月、強制捜査に乗り出しました。
そして、
厚労省の職員と局長も逮捕しました。
と、要するに、「郵便不正事件」が明らかになったのは朝日新聞の検察担当記者の手柄なのだ、
と鼻高々なのである。ここまでぶち上げておきながら、つい先日、9月10日、大阪地裁が村木元局長に無罪判決を下した次の日の
朝日新聞社説は、次の通り。
◆(社説)村木氏無罪 特捜検察による冤罪だ(2010.09.11 東京朝刊)
あらかじめ描いた事件の構図に沿って自白を迫る。否認しても聞く耳をもたず、客観的な証拠を踏まえずに立件する。
郵便不正事件での検察の捜査はそんな強引なものだった。
大阪地裁は昨日、厚生労働省の局長だった村木厚子被告に無罪を言い渡した。
村木被告は、郵便割引制度の適用団体と認める偽の証明書をつくり、不正に発行したとして起訴されていた。
村木被告は大阪地検特捜部に逮捕された当初から容疑を否認し、一貫して無実を訴えていた。
判決は証拠とかけ離れた検察の主張をことごとく退け、「村木被告が偽証明書を作成した事実は認められない」と指摘した。
検察は、ずさんな捜査を深く反省すべきだし、村木被告の復職をさまたげるような控訴はすべきでない。
偽証明書は、村木被告が障害保健福祉部の企画課長の時、障害者団体として実態がない「凛(りん)の会」に発行された。
企画課長の公印が押されており、村木被告の容疑は、部下だった係長に偽造を指示したというものだった。
係長は捜査段階で容疑を認めたが、公判では村木被告の指示を否定した。
取り調べで係長は、偽造は自分の判断だと訴えたが、検事は取り合わなかった。参考人だった厚労省職員らも公判で強引な取り調べの実態を証言した。
大阪地裁は係長らの調書を信用せず、証拠として採用しなかった。検察側の立証の柱はもはや失われていた。
特捜部が描いた構図は、「凛の会」会長が民主党の国会議員に口添えを依頼し、厚労省では「議員案件」として扱われていた、というものだ。
だが、議員会館で口添えを頼んだという当日、その議員はゴルフ場にいたことが公判で明らかになった。特捜部はそんな裏付けすら怠っていた。
検察の捜査をめぐっては、東京地検特捜部が1993年に摘発したゼネコン汚職で、検事が参考人に暴行を加えて起訴されるという不祥事が起きた。
その後も、特捜部に摘発された被告らが「意に反した調書をとられた」と公判で訴えるケースは少なくない。
特捜検察に対する国民の信頼が揺らいでいるということを、検察当局者は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
特捜検察はかつてロッキード事件やリクルート事件などで、自民党長期政権の暗部を摘発した。
政権交代が可能になったいまでも、権力の腐敗に目を凝らす役割に変わりはない。
冤罪史は「自白」の強要と偏重の歴史である。今回の事件もその列に加わりかねなかった。
検察は、これを危機ととらえねばならない。弁護士や学識経験者も加えた第三者委員会をつくって検証し、
取り調べの可視化などの対策を打つべきだ。それとともに報道する側も、より客観的で冷静なあり方を考えたい。
これには驚いた。自分達が村木被告人を間違って罪人扱いしたことへの反省の言葉がただの一言もない。
ただひたすら、検察だけを(検察が悪く無いとは勿論言わないが)責めている。
更に更に、開いた口がふさがらないどころか、顎が外れそうになるくらい驚いたのが記事1である。
特に色太文字で強調した部分。
朝日新聞が21日朝刊で疑惑を報じたことから、最高検が(証拠改竄の)捜査に乗り出していた。
自分達が冤罪の素地を作ったことは棚に上げ、検察による証拠改竄をスクープしたのも、我が朝日新聞だ、というのである。
検察による証拠改竄が本当ならば、勿論、もう検察など無い方が良いのではないか、というほど、超弩級の大失態だが、
なにか、村木元局長の無罪が決定してから、11日目の朝から、突然、検察としては本来隠蔽したいはずの大失態、
証拠改竄の詳細が一斉に報じられていたのが、奇妙な気がする。
司法かなにか知らないが、国家中枢の誰かの保身の為ではないか、という気がするのである。
そもそも、元東京地検特捜部検事だった人の話では、今回、村木元被告人の控訴断念は、検察としては、
それだけで大変なことだそうだ。つまり、殆ど同じ証拠関係で村木元被告人の共犯とされていた倉沢被告人は、
既に今年の4月に、やはり無罪判決を受けているが、これに関しては大阪地検は、既に控訴しているのである。
殆ど同じ証拠を元に村木被告人の控訴を断念したら、倉沢被告人の控訴を維持出来ない。
検察の立場としては、これ以上みっともないことはない、「控訴取り下げ」をしなければならなくなる。
高裁、最高裁までいって、無罪判決なら、検察としては主張が裁判所に受け入れられなかっただけだが、
控訴取り下げとなったら、要するに「間違って控訴しちゃいました」と天下に宣言することになるわけで、
検察、それも特捜の威信もへったくれもない。前代未聞の大失態。大恥である。
そうせざるを得ない、という理由を作る為に、
検事の一人が、つい暴走して証拠をでっちあげちゃったんです。
と、前田恒彦検事はトカゲの尻尾切りに使われてませんかね。
いずれにせよ。今回はバレたから、最高検はとことん調べます、といっているが、
この分だと、過去どれほど冤罪があったのか。もしかして冤罪で死刑にされた人もいるのではないだろうか?
と勘ぐられても仕方有るまい。
日本は法治国家といえるのだろうか。国家が、国家にとって都合の悪い人間を、証拠をねつ造して
犯罪者にでっち上げ、牢屋にぶち込んだり、死刑にするのでは、旧ソ連や、今の北朝鮮などを笑えない。
近代国家の体を成していないことになる。暗澹たる気持だ。
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