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JIROの独断的日記
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2010年05月20日(木) 【音楽・映像】毎度お付き合い頂きます。5月21日は不世出のトランペット奏者、モーリスアンドレの誕生日です。

◆「全くこの人、ラッパを咥えて生まれてきたのではないか、と思います」(音楽評論家・故・大木正興)

大木正興氏(1924‐1983)は、昭和後期の音楽評論家です。

私が子供の頃、N響の定期、その他の演奏会は録画され、確か毎週木曜日の午後10時から、

「NHKシンフォニー・ホール」という番組で放送されていました。その司会というか、

コメンテーターを長く務めておられたと思います(実際には何年続いたから分かりません)。


今は毎週日曜21時からNHK教育テレビで「N響アワー」という番組がありますが、

その「源流」に相当するのが、「NHKシンフォニー・ホール」だと思います。


この大木正興さんは、大変に正鵠を射た音楽評論をなさるので、定評がありましたが、

今のクラシック番組のように(良いか悪いかは別として)、大衆に(言い方が悪いですが)

「擦り寄る」つもりなど毛頭ないのです。いつも仏頂面というか、クソ真面目に曲と

その日に放送された演奏の寸評を加えるだけで、ニコリともせず、冗談も言わない方でした。

その大木正興さんが、フランスの天才トランペット奏者、モーリス・アンドレの演奏を、

初めて聴いた後に発した言葉が、

全くこの人、ラッパを咥えて生まれてきたのではないか、と思います。

卓越したテクニックと音楽性は、驚嘆すべきものがあります。

アンコールで吹いた曲の、あの最後の高い音、あの音ひとつだけでも、素晴らしいと思います。

と、手放しで絶賛したのです。当時、トランペットのソリストなどアンドレ以外にいなかったのです。

大木正興さんが主に聴いてきた独奏楽器は、ピアノやヴァイオリンだったはずです。

しかし、大木正興さんの優れた所は、そういうことではなくて、楽器が何であれ、音楽を正しく公平に

聴き、秀でた演奏者には、賛辞を惜しまない、ということでした。


今でもヴァイオリンやピアノに比べたら、ソロ・トランペットなんて・・・、という風潮がありますが、

40年も前の大木正興さんにそういう偏見は全く無かったと言うところが、すごいと思います。

これは、正しく音楽を聴き、評価する才能と人格が無ければ出来ないことです。

あの滅多に、「絶賛」しない大木正興さんがモーリス・アンドレを「大絶賛」して下さったのは

私にとって、嬉しい歓びでした。


◆音質は良くありませんが、映像を、ハイドンとフンメルの協奏曲。

バロックでも現代ものでもない、古典派のトランペット協奏曲は、、極論すれば、ハイドンとフンメルしかありません。

今までに何度も演奏はお聴かせしているのですが、実際に演奏している映像を見ると、もっと面白いです。

YouTubeで見つけてきたので、音質は全然良くありませんが、それはこの際想像で補い、

モーリス・アンドレがトランペットを吹くときの、自然さにご注目頂きたい。

どんな楽器でもスポーツでも何でも「名人」に共通する、

「難しいことをしているのに、普通に見える」という状態。私らもちょっと練習したら、

これぐらい吹けるのでは?という錯覚に陥りそうになるほど、平気で吹いています。


ハイドン:トランペット協奏曲 変ホ長調から、第一楽章。







ケロッとした顔で吹いてますが、トランペットにとってはかなり高音域なんです。

全身の力が見事に抜けた理想的な吹き方です。

再生開始後5分05秒からのカデンツァは、モーリス・アンドレのオリジナルのもので、

大変難しい。皆、憧れたものです。それを吹くときも「別に普通じゃん?」的表情を見て下さい。


もう一曲(楽章)。フンメルの第三楽章。

2分30秒から、細かい音型が連続しますが、アンドレの表情は、全然変わりません。

「そんなに簡単そうに吹かないでくださいよ」といいたくなるほどです。



Maurice Andre Hummel 3.Mov.







わずかですが、演奏終了後のオーケストラのプレイヤー達の表情と態度にもご注目下さい。

ヴァイオリンやヴィオラの奏者達が、楽器と弓を置いて、お客さんと同じように拍手していますね?

これは、楽器は違うけれどもプロの音楽家が、本気でソリストを讃える時の態度です。



映像というか、動画じゃないのですが、CDが廃盤になってしまったのですが、

アンドレが、オペラのアリア、しかもコロラトゥーラの難しい曲ばかりをラッパで吹いたレコードがありました。

その音声だけアップしてくれている方がいました。

よりによって(?)モーツァルト「魔笛」の夜の女王のアリア、

「復讐の心は炎のように胸に燃え」です。ソプラノのレパートリーであらゆる作品で最も高音が要求されます。

ラッパで吹いて易しい訳がないのですが・・・。


Maurice Andre plays the Queen of the Night







なかなか、すごいでしょ? このCDも復刻されるといいのですけどね。


◆お薦めCD。

これは、弊日記・ブログを長く読んで頂いている方には、新しい物ではないのですが、

思い出して頂けると有難いです。ハイドンは、ハイドン:トランペット協奏曲をお薦め。

これは、何気なしに、すごい演奏が含まれておりまして、なんと、モーツァルトのオーボエ協奏曲ハ長調を、

そのままトランペットで吹いてるんです。このエラートというフランスのレーベルが多分アンドレの音源を持っている、

と思いますが、暢気な会社です。モーツァルトの方も強調しないと・・・。

お聴き下さい。



モーツァルト:オーボエ協奏曲ハ長調 K.314 第三楽章(トランペット版)


Mozart Oboe Concerto K.314 Rondo (Trumpet)



アンドレ以降、上手な若い人が大勢出て来てますが、モーツァルトのオーボエ協奏曲をラッパで吹いたのは、

いまだに、モーリス・アンドレだけなのではないかと、思います。


もう一枚。これもかつてご紹介しました。アメリカのAmazonから取り寄せたのです。6枚組で約14ドル。送料込みでも今の為替なら、

比較的割安なのです。Trumpet Concertos

この中から、アルビノーニ。作品9-2ですね。



アルビノーニ オーボエ協奏曲 Op.9-2 第一楽章


Albinoni Oboe Concerto Op.9-2 First Movement



次も綺麗なのです。チマローザという作曲家のオーボエ協奏曲から。


チマローザ オーボエ協奏曲 ハ長調 第一楽章。


Cimarosa Cmajor Larghetto



第三楽章 シチリアーノ



Cimarosa Cmajor Third Movement Siciliano



綺麗ですよね。

まだまだ、お聴かせしたいモーリス・アンドレは沢山あるのですが、

今日はこの辺で。それでは。

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