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2010年03月26日(金) |
【音楽・映像】韓国のソプラノ、スミ・ジョー(Sumi Jo)がロ短調ミサの稽古でカラヤンに気に入られる瞬間。 |
◆ドキュメント「カラヤン・イン・ザルツブルク」というDVDがあります。
これは、晩年のカラヤンのザルツブルグでのオペラのリハーサルや、日常生活を記録した映像で、
23年前に制作されたものです。当時は勿論DVDなどありませんから、VHSビデオとして発売され、
とても評判になったのです。それまでにもカラヤンの映像は、出回っていましたが、本番で、
目を閉じたままベルリン・フィルを指揮する「巨匠・カラヤン」の映像ばかりでしたが、
「カラヤン・イン・ザルツブルク」では、素顔のカラヤンを見ることが出来たからです。
VHSが絶版になったあと、一時期「レーザーディスク」として復活しましたが、それも間もなく消滅し、
長い間見ることが出来ませんでした。
一昨年、カラヤン生誕百年にあたる2008年、元の映像をソニーが買い取り
(どうもその契約締結までに時間がかかったらしいのです)、改めてDVD化しました。
ドキュメント カラヤン・イン・ザルツブルク [DVD]
残念ながら、VHSで見た記憶にあったシーンがやや、カットされていますが、
大変興味深いので、是非お薦めします、と今までにもお薦めしたのですが、
言葉で「大変、興味深い」と書いてもわかりませんから、一部をお見せします。
◆韓国のソプラノ、スミ・ジョー(Sumi Jo)がカラヤンに気に入られた瞬間。
DVD全体は一時間半弱ですが、その中で、バッハのロ短調ミサを演るので、
ソロ歌手に稽古をつける、シーンがあります。ここでは、韓国のソプラノを起用したカラヤンですが、
本当はどの程度の実力か、未知数だったようです。
ロ短調ミサの稽古なのに、途中で、スミ・ジョーに興味を持ったカラヤンは、
これからの予定を訊きます。スミ・ジョーは「近々、夜の女王を歌います」」と答えます。
「夜の女王」といったら、モーツァルトの晩年の最高傑作「魔笛」においてソプラノが歌う役なのですが、
声楽の「超絶技巧」が随所に出て来て、大変難しい。一番難しいのは、第二幕の
「復讐の心は炎のように胸に燃え」というアリアで、ソプラノのあらゆるオペラのレパートリーで、
最も高い声を出すことを要求され、また、非常にテクニックを要する、コロラトゥーラ・ソプラノの
腕の見せ所です。
繰り返しますが、この映像は「ロ短調ミサのリハーサル」なのですが、
カラヤンは、スミ・ジョーを気に入ってしまい、「夜の女王」を今ここで歌え、と要求します。
尤も、「復讐の心は〜」は喉に負担がかかりすぎるので、ここでは、第一幕の、
「恐れずに,若者よ!」というアリアの後半、ソプラノの技量が問われる部分からいきなり歌わせます。
そんなのは予定に無かったので、スミ・ジョーは最初、面くらいますが、ピアノ伴奏者が伴奏を始めてしまいます。
話が逸れますが、こういう歌のリハーサルの伴奏、ときには歌手に稽古を付けるピアニストを「コレペティトゥア」、
通称「コレペティ」という専門家がいるのです。ヨーロッパの指揮者は、まずコレペティをやり、
それで、自分もオペラを覚えていく、という人が殆どでした。
これは、本当に専門職で大抵のオペラは覚えていて、歌手より詳しいぐらいなのですね。
だから、バッハの「ロ短調ミサ」のリハーサルで、カラヤンが、
スミ・ジョーに、いきなり「魔笛」を夜の女王のアリアを歌わせようとしたら、
譜面などなくても、すぐに弾けるのです。
主だったオペラのスコアを全て覚えていて、どの曲のどこからでもいつでも弾ける、
それがコレペティです。本当に勉強していないと出来ないことです。
さて、そうして、突然歌わされた、スミ・ジョーですが、何とか歌います。
説明が長くなりすぎました。映像をご覧下さい。
スミ・ジョーが何とか「夜の女王」を歌った後の、カラヤンの表情にご注目。
素晴らしい。気に入った!
と、その表情が雄弁に語っています。
BachMassHmoll.BWV 232
スミ・ジョーはこの後、世界的に活躍しますが、その発端は、この時に、
カラヤンに才能を認められたのが、大きな要因になっています。運が良い人です。
それにしても途中からテノールがレッスン室に入ってきますが、カラヤンが、
すっかり、スミ・ジョーに興味を持ってしまったため、ずっと座って待たされています。
しかし、相手はカラヤンですから、
あのー、ちょっと外へ出て来ていいですかあ?
などと言えず、忍の一字で控えていて、ちょっと気の毒です(笑)。
カラヤンのことを悪く言う人もいますが、このDVDには他にも色々な映像が
記録されていて、それらを見ると、やはり名マエストロだったと思います。
このDVD、もう一度お薦めします。
それでは、皆様良い週末をお過ごし下さい。
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