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2005年08月27日(土) |
道路公団民営化のいい加減さを見ると、郵政改革が真面目に検討されているとは思えない。 |
◆できるだけ、冷静、客観的に考えました。
私は、何が何でも、小泉首相のあら探しをしたいわけではない。
8月7日にも書いたが、個人的に、もしも、小泉首相と知遇を得たら(あり得ないが)、
あの人も私も音楽好きだし、ロンドンに住んでいたことも共通している。 だから、雑談をしたら面白いおっさんだろうと思う。
しかし、ある政治家を人間的に好きか嫌いかということと、彼(又は彼女)の政治的理念の評価は峻別しなければならぬ。
だから、極力、冷静、客観的に考えてみた。
その結果、やはり政策と、政治的姿勢に問題があると考えざるを得ない、という結論に達した。
◆衆議院が解散された、8月8日の演説をおぼえてますか?
あのときに、小泉首相は「郵政民営化は、行財政改革の第一歩。」と叫んでいた。
では、道路公団民営化はなんだったのか?
今、日本には、「道路公団」が4つある。
- 日本道路公団
- 首都高速道路公団
- 阪神高速道路公団
- 本州四国連絡橋公団
これが、10月1日から民営化される。
◆10月1日に発足する新会社の社長は、全員、旧道路公団幹部という、露骨さ。
上の四公団のうち、日本道路公団は3つに分割されるので、民営化後は6つの株式会社になる。
民営化される、ということは、あたりまえだが、民間企業になることだ。
だから、その会社を運営するのは民間人であり、お役人ではなくなる、と考えるのが普通の発想である。
4月に新会社の「会長」は早々と発表された。彼らは民間から登用された。
ところが、である。「社長」はすべて、民営化前の道路公団の経営陣がそのまま横滑りするのである。
具体的には、
- 東日本高速道路会社(東京)は日本道路公団理事の井上啓一氏(60)
- 中日本高速道路会社(名古屋)は道路公団総合情報推進役の高橋文雄氏(57)
- 西日本高速道路会社(大阪)は道路公団理事の奥田楯彦氏(60)
- 首都高速道路公団の後継会社となる首都高速道路会社社長には首都公団理事長の橋本鋼太郎氏(64)
- 阪神高速道路公団の後継会社である阪神高速道路会社社長には阪神公団理事長の木下博夫氏(62)
- 本州四国連絡高速道路会社社長は本州四国連絡橋公団総裁の堀切民喜氏(73)
◆「郵政民営化は、行財政改革の第一歩。」と8月8日に小泉首相は叫んでいたが、道路公団民営化は何だったのか?
上の人事を見ただけでも怪しい。
長い間、土木建築業者と道路公団の役人の「談合」はほぼ公然の事実であったが、ちょうど1年前から、民営化を前に、これを放っておいてはいけない、というわけで(政治家も役人も、土建屋も本当に悪いとは思っていないと思うが)、鉄鋼製橋梁(橋梁とは「橋」のことです)談合事件で公正取引委員会などの捜査が入った。
だが、こういうときの、常套手段で、一番偉い奴は「知らなかった」とシラを切り、中間管理職の課長級が逮捕される。
所謂「トカゲの尻尾切り」である。それで済んだことにする。日本の悪習である。
会長は民間、しかも、道路建設と関係が深く、橋梁工事で問題となった、新日鐵や神戸製鋼所の出身。
社長が道路公団出身。
もの凄く、意地悪く言えば、会長と、社長で談合が可能である。
◆記事:高速道6社の会長予定者「談合しません」宣誓
道路関係4公団民営化推進委員懇談会が23日あり、10月に発足する高速道路会社6社の会長就任予定者が出席し、橋梁(きょうりょう)談合事件に絡み、「新会社の会長として談合は一切しない、させない」と不正の根絶を宣誓した。
不正行為で生じた損害には賠償を求める方針も示した。
猪瀬直樹委員が「二度と談合はしないと宣誓してほしい」と求めたのに応じた。
しかし、談合組織加盟社の役員だった2人は、事件を「遺憾」としたが、就任辞退の考えのないことも表明した。
橋梁談合をめぐっては、東日本高速道路会長になる八木重二郎氏が副社長を務めていた新日本製鉄と、西日本高速道路会長となる石田孝氏が専務だった神戸製鋼所が談合組織に加わっていたことが判明し、起用を疑問視する声もある。 2005年08月24日07時45分 (朝日新聞)
あまりにも、人をバカにしている。
何が、「宣誓」だ。せめて念書を書かせて署名捺印させろ。何十年も「当然の慣習」として談合を行ってきた連中なのだ。
鋼鉄製橋梁に係る談合にしても、一般人が「駐車違反で運悪く違反キップを切られ」たと言うぐらいの認識であるに違いない。
◆道路問題の本質
人事の話はこれぐらいにしよう。
道路公団民営化とはなんだったのか?
日本の高速道路料金は非常に高い。(イギリスは全国何処まで走っても完全に無料だ)。そして、いつまでたっても無料にならない。
これは、各高速道路が独立採算制になっておらず、プール制という方式を採用しているからだ。
つまり、日本で一番儲かっている高速道路は東名高速道路で、とっくに建設費を通行料金から得た収益で取り戻している。
独立採算なら、東名高速は今頃、無料のはずだ。
しかし、プール制を採用しているため、東名高速がいくら稼いでも、赤字の高速道路の維持・運営費や、財投から借りた資金の返済に回されてしまうのだ。
今、存在している高速でも、採算が取れていないところが沢山あるのだから、もうこれ以上、新しい高速道路は造るべきではないというのが、道路公団民営化の議論が始まった頃の多数意見だったのである。
◆政財官の癒着と猛烈な反対。
ところが、道路族議員、つまり土建屋と癒着している国会議員の猛烈な反対にあった。
また、道路公団の役人にとっても、道路建設を行う土建屋は、大切な「伝統的」天下り先である。
道路公団は暇な役所だが、役人を辞めても、土建屋の役員になって、毎日座っているだけで高い給料を貰い、億単位の退職金を得られる。
役人を辞めるときにも多額の退職金を受け取っている彼らは、笑いが止まらない。
こんな「美味しい」既得権を失ってなるものか、というわけで、ここからも妨害がはいった。
◆結局、まだ、2000km以上も、明らかに赤字となる高速道路を造ることが決まってしまったのだ。
とにかく、既得権を守ろうとする、政治家・土建屋・道路公団役人の結託はすさまじく、道路公団民営化法案はすっかり骨抜きになってしまった。
現在、道路公団が財投、つまり、郵貯と簡保から借りたカネ40兆円もある。
黒字の高速道路はすくないから、利子を払うこともままならない。郵貯・簡保から見れば、もの凄い不良債権である。
これ以上、無駄な高速道路を造るべきではない。これは中止になるはずだった。
しかし、結局、道路公団民営化前の予定はそのまま続く。
これからも、新しい(儲かりそうもない)高速道路の建設が続くのだ。 その総距離は2000kmにもなる。
この法案を作ったのは、「民営化推進委員会」で、首相直轄の諮問委員会である。
にも関わらず、小泉首相は何も言わなかった。
◆結論:小泉首相は郵政民営化をして「この程度の改革ができずに・・・」と言っていたが、道路公団で既に頓挫している。
小泉首相は、「郵政改革ぐらいできずに構造改革ができるか」と訳の分からないことを言っていた。
それをいうなら、、道路公団民営化で、「この程度のことしか」出来なかった内閣が、郵政民営化で突如革新的な結果をもたらすことができるのか。
甚だ疑問である。
2004年08月27日(金) 「ここ一番」で実力を発揮する、ということの厳しさ。
2003年08月27日(水) 今頃になって、「火星大接近!」なんて騒がなくても・・・。といいつつ、リンク集。