JIROの独断的日記 DiaryINDEX|past|will
◆記事:「イスラムは米国の一部」オバマ大統領、エジプトで演説(読売新聞 - 06月04日 21:18) 中東・欧州歴訪中のオバマ米大統領は4日、エジプトのカイロ大学で演説し、 ◆コメント:世界中をアメリカにしたがるから、上手くいかないのである。 オバマ大統領は、ブッシュ政権時代に(本当はその前からだが)悪化した、イスラム諸国との関係を修復して、 イスラムは米国の一部 は、BBCの記事の一部を引用すると Mr Obama said Islam had "always been a part of America's story". とあり、イスラムは常にアメリカの歴史の一部だった、という部分を訳したのであろう。 分かってねえなあ、と思う。 アメリカのこういう発想が、イスラムだけではなく、世界で嫌われるのだ。 「イスラムは常にアメリカの歴史の一部だった」という発想。この演説をもう少し詳しく読むと、米国内のイスラム教徒は 米国の中で、重要な役割を演じてきた、ということなのだが、それとは別にアメリカという国家、特にブッシュ時代にはびこった、 ネオコン(ネオ・コンサーバティブ。新保守主義者)達の思想は、単純化するならば、 「世界中をアメリカにすれば、世界は丸く収まるのだ」という独善的かつ傲慢なものだ。 これが世界をより不安定にしている。 イラクを見れば一目瞭然。日本のマスコミの取材に答えて、ネオコンの1人が 中東が不安定なのは、民主主義が根付いていないからで、中東(イスラム世界)に民主主義を植え付ければ、平和になるのだ と、はっきり答えていた。そしてこの場合の「民主主義」とは「アメリカ式民主主義」を意味するのである。 だから、という大義名分で(その他に大量破壊兵器の証拠を捏造して)イラク戦争を仕掛け、独裁的支配者だったサダム・フセインを 引きずり降ろし、後、処刑した。しかし、イラクは安定するどころか、今だに戦闘が絶えない。イラクをアメリカにしようとしたら、 当然、イラク人は反発し、反米テロが活発化し、むしろ、フセイン独裁時代よりも遙かに不安定で、何万人もの一般市民が戦闘の犠牲になった。 この日記・ブログで過去何度も書いたが、私が学生の頃に、国際法の教授が、 世界の如何なる、国、地域の文化、社会・政治体制にも、それが成立するまでの歴史と必然性があるのだから、 と、何度も強調していたのを、私は非常に鮮明に記憶しているのだが、正にそのとおりであることが、よく分かる。 アメリカ人、特にネオコンがやろうとしていることは、これと完全に逆である。 繰り返し強調するが、極端な表現を用いるならば、アメリカは「世界をアメリカにすれば、全て上手くいく」と考えている。 だから日本にも、毎年、大内政干渉の「年次改革要望書」を突きつける。 歴代の日本の政権の中でも特に小泉政権は、唯々諾々とそれに従い、アメリカ流市場万能主義、競争原理を 導入した。その結果、「弱者は勝手にのたれ死んで下さい」という「格差社会」が生まれた。 これに対して、論理で全てが割り切れるほど、人間社会は単純ではない。 アメリカ式に従うのは正しくない、と書いたのが、「国家の品格」の藤原正彦氏である。 藤原氏の意見は正しい、と私は考えている。 話がイスラムから逸れた。 オバマ大統領の真意が何処にあるにせよ、「イスラムはアメリカの一部」という考え方は、ネオコンの発想から脱していない。 イスラム諸国はあくまでイスラム文化圏である。 アメリカはアメリカである。 両者は全く別の歴史的背景と文化を持つ、互いに独立した存在なのだ、という認識を持てないのがアメリカのバカなところで、 このおかげで、世界が引っかき回され、不必要に不安定になっている。 更に、アメリカは、イスラム世界と対立するイスラエルを常に支持している。 これは、良く知られているように、ユダヤ系アメリカ人は米国内の様々な分野で要職に就いており、政治的に大きな影響力を持つため、 ユダヤ人の支持を得ないと、選挙でも勝てないし、政治運営も上手くいかない。 歴代の米国政府は、ユダヤ人国家・イスラエルを支持せざるを得ない。 だから、イスラエルが、これまでに数え切れないほど、ガザ地区のパレスチナ人、それも女子供を含む非戦闘員までも無差別に殺戮し、 これに対して、国際社会から批判が大きく、国連安全保障理事会が非難決議を採択しようとしても、 アメリカが拒否権を発動し、邪魔をする。 そのような背景がありながら、オバマ大統領が、ノコノコイスラムへ出かけていって、 アメリカはイスラムのお友達ですよ といわれても、イスラムのアラブ人達は、「よくも、いけしゃあしゃあとそういうことがいえるな」と感じるだろう。 今までのことに触れずに「新しい時代を共に築こう」と呼びかけても、簡単にいくわけがない。 【読者の皆様にお願い】 是非、エンピツの投票ボタンをクリックして下さい。皆さまの投票の多さが、次の執筆の原動力になります。画面の右下にボタンがあります。よろしく御願いいたします。
2008年06月04日(水) 昨日(6月3日)はビゼー(1838-1875)の命日でした。「アルルの女」と「カルメン組曲」の歴史的名盤。すごいよ。
JIRO
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