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2006年01月30日(月) |
「グリーンスパン米FRB議長、31日退任=在任18年半」実に実に、ご苦労様でした。 |
◆記事:グリーンスパン米FRB議長、31日退任=在任18年半、「史上最強」の評価
【ワシントン30日時事】グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は31日の連邦公開市場委員会(FOMC)を最後に退任する。
在任期間は1987年8月以来約18年半に達し、歴代FRB議長の中でもマーティン議長(51〜70年、19年弱)に次ぎ2位。7
9歳と高齢ながら、退任後はワシントンでコンサルタント会社を設立する予定。
グリーンスパン氏は就任から間もない87年10月に起きたニューヨーク株式市場のブラックマンデー(株価の大暴落)への対応や、
2001年9月の同時テロ事件後の緊急利下げなどで国際金融市場で絶大な信頼を獲得。
「史上最強のセントラルバンカー」「歴代最高のFRB議長」と呼ばれ、
ブッシュ大統領も「伝説的な人物」と最大限の賛辞を惜しまなかった。 (時事通信) - 1月30日15時0分更新
◆コメント:グリースパン議長就任時のTime,Newsweek,U.S. News & World Reportの表紙を良く覚えている。
グリーンスパンFRB議長がついに退任する。
同じ時期に、ずっと金融市場を見てきた私としては、感無量である。
私は、グリーンスパン氏がポール・ボルカーの後任として、故・ロナルド・レーガン大統領に指名されたときのことを大変良く覚えている。
それまでは、あまり有名な人ではなかったので、世界中のマスコミが注目した。 勿論、アメリカのマスコミが最も多くの情報を伝えた。
アメリカの最も良く知られた時事問題を取り上げる雑誌は、
Time、Newsweek、そして、日本での知名度はやや他の2誌に劣るが、U.S. News & World Reportと云って良いだろう。
この中でU.S. News & World Report誌が一番平易な英語、
Newsweekはやや持って回った英語、
Time は気取った英語、と、大雑把に言えば、そういうことになっている。
私は、グリーンスパン氏が18年前にFRB(連邦準備制度理事会)議長に就任したとき、
3誌の表紙に何と書いてあったか、鮮明に記憶している。
U.S. News & World Reportは、“Chairman Greenspan"(グリーンスパン議長)。 そのままですね。
Newsweekは、“Mr.Reagan's New Money Man"(レーガン政権の新・金融政策担当者)。 工夫したけど長いね。
Timeは、“The New Mr. Dollar”(新しい「ミスター・ドル」)如何にもTimeだ。
しかし、これは余談である。どれが良いというつもりはない。
英語に興味がある人にはちょっと面白いと思ったのさ。
◆ジュリアード音楽院出身の金融政策担当者。
グリーンスパン議長は2004年5月、高校生向けの講演で、
「私が人生で最初に心を惹かれたものは音楽だった。クラリネットとサクソフォーンを毎日5時間以上練習した」
と述べている。
事実、彼はアメリカで最も難しい芸術大学、ジュリアード音楽院でクラリネットを学んでいる。
日本ではクラリネットとサクソフォーンは分業だが、通常、オーケストラの編成にサクソフォーンは含まれていない。
1840年代にベルギーの楽器制作者、アドルフ・サックスという人物がこの楽器を開発したのが楽器名の由来だ。
1840年といえば、19世紀中頃。
クラシックの歴史ではかなり「新しい」楽器である。
ラベル、ビゼー、プロコフィエフ、などが使っているが、他の楽器に比べると出番は少ないから、
日本のオーケストラでは、サクソフォーンが必要な曲を演るときにはエキストラを呼ぶ。
これに対して、欧米のオーケストラでは、クラリネット奏者が持ち替えで吹くことが多い
(以前、シカゴ交響楽団が来日して「展覧会の絵」を演奏した。この曲には、アルト・サックスのかなりカッコいいソロがある。
誰が持ち替えるかと思って見ていたら、なんとコントラファゴット奏者が吹いていたので、びっくりした)。
グリーンスパン氏が「クラリネットとサクソフォーンを練習した」というのはそういう事情による。
◆アメリカの中枢部で唯一かつ最も知的な「マエストロ」(名指揮者)。
グリーンスパン議長は18年半の長きに亘って、この要職を務めたわけだが、全く見事と言うほかはない。
アメリカをコントロールする中枢部で、これほど知的で冷静な人物はいないだろう。
金融政策のあまりにも見事な采配を讃えて、アメリカでは、敬意を込めた「マエストロ」(名指揮者)という「愛称(というか殆ど敬称だ)」を付けられている。
日本語にも訳されている、グリーンスパン―アメリカ経済ブームとFRB議長という本がある。
こんなに長い題名にしてはつまらない。原書はズバリ、Maestroなのだ。
これを書いたのは、ウォーターゲート事件を暴き、近年では、ブッシュがイラク戦争を開始するまでのいきさつを描いたブッシュの戦争という本を執筆した、かの有名なボブ・ウッドワードである。
まあ、ちょっと専門的だから、「マエストロ」は読まなくても良いです。
但し、書いておきたいのは、日本がバブルになって、バブルが崩壊して今度は10年以上もデフレ不況に陥ったのに、
アメリカは90年代、経済的繁栄を謳歌したのは、このグリーンスパン議長によるところがかなり大きいという事実である。
◆芸術的な金融政策の采配。
具体的にはFF(Federal Fund)金利、公定歩合の操作で、インフレになりそうなときは引き締め、不況に陥りそうなときは金融緩和するのだが、
そのさじ加減、つまりタイミングと金利の調整幅が、実に実に巧みで、まさに「芸術的」だったのである。
「マエストロ」とはその意味で誠に言い得て妙である。
何しろアメリカが金融政策を間違えたら、世界中が混乱するのだ。
金利を上げすぎて、株が暴落すれば、世界中の株が暴落して、世界同時恐慌になるのだ。 FRB議長の責任は、ある意味、大統領よりも重い。
グリーンスパン議長は根っからのエコノミストで、経済指標の資料を自宅に持ち帰り、毎日勉強していたという。
インフレになりそうなら引き締め、デフレになりそうなら緩和、と書いたが、
そのタイミングが一瞬遅れてもダメだし、金利の変更幅を0.05%間違えてもいけないのだ。
◆緊急事態への対処の巧みさ。
グリーンスパン氏が就任した2か月後、1987年10月19日月曜日、ニューヨーク株式市場が大暴落した。
「ブラックマンデー」という。前週末終値比500ドル以上、下落率22.6%で、過去最大だった。
この時グリーンスパン氏はあわてず騒がず、次の声明を発表した。
「連邦準備制度理事会は、アメリカ合衆国の中央銀行としての使命に沿って、本日経済・金融システムを支えるため、流動性の供給源としての役割を果たす意向であることを確認する」
これで、パニックに陥っていた市場が落ち着きを取り戻した。日本も助けたけどね。生保が東京市場で買い支えたりして。
この後にも、メキシコの通貨危機とかアジア通貨危機とか、下手をすれば、世界中の経済が大混乱に陥りそうな修羅場を何度も経験した。
そのプレッシャーはものすごい筈だ。18年間、FRB議長を務め上げたのは立派である。
数ヶ月前にもうじき、辞めるというので、福井日銀総裁が日本に招待し、来日した。
以前から穏やかな人だが、これほどの功績を残しながらも実に温厚な、控えめな紳士である。
グリーンスパン議長。ご苦労様でした。 ゆっくり好きな音楽でも聴いてください。
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