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2006年01月02日(月) |
「長き世のとをの眠りのみな目覚め波乗り船の音のよきかな」1月2日の夜に見る夢を初夢と云う(異説あり) |
◆季節の行事の消失は仕方ないけど無風流ですなあ。
昔は日本の各家庭で、私などはずっと東京だが、それでも季節の行事があったものである。
初夢を語るのに、いきなり話が飛ぶが、夏はお盆(盂蘭盆=うらぼん)の入りには、お迎え火、終わりにはお送り火を焚いた。
その季節には「おがら」という麻の皮を剥いだ茎の部分を乾かしたものを、花屋さんで、売っていた。
これに火を付けて煙りを出すのである。
「おがら」は中が空洞になっていて、燃やすと良く煙が出る。
ご先祖様はこれに乗って、あの世から夏休みに遊びに来るのだと子供の頃、祖母から教わり、
なるほどそういうものか、と、私は他愛なく信じていた。
お迎え日もお送り火も、残り火を消すときには、バケツの水をかける、などという乱暴なことをせずに、
私の家にはヤマブキ(という植物)が生えていたから、その枝を小さく折り、
葉っぱ毎水の入ったコップに浸し、その枝に付いた水滴をパラパラとおがらの燃えかすに振りかけて、丹念に消すのであった。
床の間には明かり(提灯ですね)を飾り、仏壇にはご先祖様のために御馳走を供えるのである。
お盆の最終日には、お送り火をお迎え日と同じように焚き、皆で手を合わせ、
「また来年もいらしてください」と祈るのであった。
子供心に、死後何年も経っている故人をこのように丁寧に供養するとは、何という美しい習慣であろうか、と思った。
損得勘定でできることではないのだ。死んだ人を供養しても一文の得にもならない、
という発想しかできない人は、悪いが、育ちが悪い人だ。
残念ながら、これは、東京の人口がもっと少なくて、
家と云えば戸建ての一軒家を指すのが当たり前だった時代だったからこそ可能であり、
今の東京は庭のある家でもみだりに「たき火」ができないらしい。
事前に消防署に届けなければならない。なんという無風流。
今の東京の子供は、たき火で焼いた焼き芋の味を知らないのだ。
◆年始廻り
初夢の話をするのにお盆の話が長くなってしまった。
尤も昔は、めでたいことが重なると、「盆と正月が一遍に来たようだ」という慣用句で喜びを表したように、
お盆は年中行事の中でも正月に次ぐ「ビッグイベント」だったのだ。
正月の話だった。
正月の行事と言っても、地方により、また各家庭により千差万別であろう。
私が苦手だったのは、元旦に親父が羽織袴に着替え、近所に一軒一軒、年始の挨拶をして回る時に、
「お供」をさせられることで、これは、小学校中学年ぐらいまで続いた。
どうして、我が家が挨拶に出向くのかというと、近辺では大正14年生まれの父が一番「目下」だったからである。
挨拶は、目下が目上にするものである。
私は引っ込み思案の子供で、よそのお宅を訪問したり(年始回りは玄関先だけだが)、
お客さんが自宅に来たときに、出て行って挨拶をするのが、恥ずかしくてたまらない。
だから毎年元旦は憂鬱であった。
しかし、今にして思えば、あのような「きちんとした」行儀、礼節、という習慣の存在を知っていて良かったと思う。
こういう習慣が廃れてきたのと人心がギスギスしてきたのは、無関係ではないような気がする。
昔は一見無駄なことをすることにより、気持ちに余裕ができていたのだろう。
◆初夢
さて、漸く初夢である。
何日に見る夢を初夢というか、調べてみたら、次のような説明であった。
「はつゆめ【初夢】
新年に初めて見る夢。夢占(ゆめうら)としてその年の吉凶を占う。当初は除夜の夢であったが,除夜には寝ない習慣のせいか江戸中期から元日の夜の夢となり,他の事始めが2日なので2日夜の夢となった。室町時代から宝船を枕の下に敷いて寝ると吉夢を見るという風習が広まった。吉夢を順に並べて〈一富士・二鷹・三茄子(なすび)〉などという。」
今でも元旦の夜を初夢としている人がいるようだが、まあ、これは各家庭の習慣と云うことで良かろう。
私が生まれ育った家では、1月2日の夜を初夢としていた。
引用した説明にあるように、宝船を枕の下に敷くのが、本来の姿だが、
現代では簡略的に、折り紙で宝船を折り、その上に、
「長き世のとをの眠りのみな目覚め波乗り船の音のよきかな」(ながきよのとおのねむりのみなめさめなみのりぶねのおとのよきかな)
という、見事に回文になった和歌を書く。本当は七福神の絵が描いてあると更に良いこれを枕の下に敷いて寝る。
これで、縁起の良い初夢が見られる。
こういうときに、「科学的根拠は?」などと云うものではない。
無風流だ。
信じれば、良いのである。
2005年01月02日(日) 「タイ南部、邦人百数十人が安否不明=不明者身元特定、早くて1カ月」日本政府、早く動け。
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2003年01月02日(木) 1.初夢の行事 2.辛い正月