午前中、娘と公園で遊んでいたら、滑り台の脇に不審な鞄を見つけた。
鞄のファスナーは空いていて中身がちらりと覗いていた。教科書や可愛らしいポーチが入っていて、見るからに「高校生の通学バッグ」って感じだった。周囲を見渡してもそれらしき人はおらず「ひったくりに財布を抜かれて捨てられた鞄だろうなぁ」と思ったのだけど、もしかしたら公園で子供を遊ばせている人の鞄という可能性もあり、落し物の確信が持てなかったのでしばらく様子を見ていた。
1時間ほど娘を遊ばせていたのだけれど、鞄の持ち主が現れるでもなく、最初からいた親子連れは帰ってしまった。鞄は交番に届けるべきなのだろうと思いつつ、正直なところ「手続きが面倒だし、何も私がやらなくてもなぁ…」と言う考えが頭をよぎった。しかし「いやいや。娘の前で(たとえ娘が理解していなくても)それはダメだろう」と思い直し、娘に鞄を交番に届けるから遊びを辞めて帰ろうと説明して駅前の交番へ向かった。
娘は最近、お誕生日に戴いた自動演奏付きのピアノの中にある「いぬのおまわりさん」がお気に入りで、生まれてはじめて交番へ行くってことに満足しているようだった。どうも娘は何か楽しい勘違いをしているようだったので「あのね。交番におまわりさんはいるけれど、犬のおまわりさんじゃなくて、人間のおまわりさんだよ」と説明したら、ちょっと不思議そうな顔をしていた。
きっと手続きに時間が掛かるだろうと危惧していたが、案の定かなり時間が掛かってしまった。鞄の中の物が多かったのでチェックして文書化するだけでも、けっこうな時間。退屈で娘がグズグズ言うだろうと思っていたのだけれど、娘は初めて行く交番が珍しかったのか存外大人しく待っていてくれた。鞄の中には落とし主のバイト先の社員証が入っていたので、たぶん持ち主に届くだろうとのこと。財布は入っていなかった(抜かれた?)けれど、教科書類の他にもiPodなども入っていたので、持ち主に届けられると良いのだけれど。
財布も無かったし、おそらくひったくりに合った鞄だと思うのだけど、高校生の鞄をひったくるなんて酷いなぁ…と憤りを覚えた。学生さんが持っているお金の額なんて知れたもの。被害にあった高校生はきっと怖かっただろうし、なんとも気の毒なことだ。
その夕方、娘とお風呂に入っていて「今日は交番に行ったね」などと話をした。「人間のおまわりさんがいたね」と言うと娘はニヤリ。おまわりさんは優しいお兄さんだったのだ。公園遊びを早めに切り上げて交番へ行くだなんて、娘にとっては面白くなかっただろうと思っていたけれど、行って良かったと思う。娘にはよく理解出来なかったかもしれないけれど、これも1つの経験だろう。私も、知らん顔をせずに届けて良かった。知らん顔をしていたら、きっと心のどこかに引っかかっていただろうから。あの鞄が持ち主の手に戻ることを願いつつ、今日の日記はこれにてオシマイ。