もみじマーク、もとい高齢運転者標識のリニューアルに関するニュース。
政界からの「高齢者いじめ」の名の下に、表示義務違反に対する罰則をなくし、このたびデザインも一新された。
新しい「四葉のクローバー」なるマークは、これまでの緑とオレンジの二色のデザインに、黄色と黄緑色が加わった。
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年寄りを年寄りと言って何が悪いのか。 3歳の子どもと一緒にしてもらいたいのか。
もみじマークを年寄りいじめと言う人達は、親やその親から、年齢の重ね方を教わってこなかったのだろうか。
そうかもしれない。
何しろ今の老人達は、上の世代を、ことごとく戦争で失っている。 連綿と伝えられてきた、老いることの実態を知らないのだ。
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それに加えて現代社会の私達は、生老病死と無縁のシステムや仮想世界に囲まれ、システムと一体化して生きている。 そこでは、子どもも若者も中年も年よりもないまぜのファッションをしていていて、 年相応にするべきだとは誰も思わない。
新しい四葉マークみたいに何もかもが混在して、自然の姿を見失っている。
だから、ある日唐突に、生物としての自然の変化-それも成長と異なる部類の-を 自分だけが押し付けられることに、孤独感を感じ、不条理を感じ、尊厳を傷つけられる。
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「老人力」という言葉を思い出す。赤瀬川源平さんの明言、名著である。 昨今はなんだか、若い頃と変わらない自分を演じるための、自己欺瞞の方便みたいに使われている。
赤瀬川氏は、自分の老化現象と向き合ったからこそ、老いた今を生きるための言葉を見つけた。
人々を喜ばせた「老人力」という言葉は、「老人のパワー」ではなくて、「老人の意味」と捉えたらよいのだ。
大切なのは、老いないことではない。 何もしないまま、年をとることだ。
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