スガシカオの新しいアルバム。
頭にきて時計を壁になげつけたら、 裏返って91時91分と表示された、という状況の歌。
世界の時刻は、本当は91時91分なのだが、 それは隠されている事実なのだと彼は歌う。
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「私達は真実の一部しか知らない」「裏側にはひどい事実が隠されている」 という不信の空気は、ネット社会で芽を出し、政治経済を俯瞰する時の姿勢として、いささかの市民権を得た。
その不信の空気ですら、市民が獲得したものではなく予め用意されていたもの、かもしれない。
世界は周到に計画実行されている。 きっちり計量され、温度とタイミングを管理されている。
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隠してやがる 裏側全部 みんな疑わしい 本当のこと 誰もいわない 現在・現在・本当の時刻は 91:91 91:91
スガシカオは歌う。
本当は91時91分なんだろ?などと真顔で言えば、頭が狂ったかと思われる。 黒澤明の映画「生き物の記録」の中島喜一みたいな末路が待っている。
アーティストというのは、社会常識という正面玄関からは受け取れないものを、 メタファーという衣をまとい、人の心の裏口からそっと、届けることができる。
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中島喜一、否、黒澤明の原水爆に対する妄想が、世界を危機から回避させたと言えないことはない。
肌で感じる不信やいかがわしさを表明するのは、無意味ではない。 法律も社会常識もへったくれもなく、遠慮なく「よくわからないがとにかく嫌だ」と、人が唖然とするまで言えばよい。
狂ったと思われる頭をどう活用するかが大切だ。
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