いつも受話器の向こうに、 必死にお前を想い浮かべて来たけれど、 今はお前の姿を微塵も感じないように、 大きな鏡だけを想像する。
お前の声にfilterをかければ、 ただの無機質な音声・・・ 俺自身にそう言い聞かせる暗示こそが、 自分で張れる最強のfilterだから。
けれども・・・
俺の気持ちが揺れてしまえば、 そんなfilterなんて有って無いような物。
あっさり突破されそうで、 お前の姿どころか声さえ聞くことが出来ない。
「一番簡単な方法だよね。」
お前の言葉に耳も貸さず、 一通の文だけを送りつける。
そして一方的に、 鏡に映る自分の姿めがけて大きな鉈を振り下ろす。
粉々に割れた鏡・・・
破片でつけた傷が、 俺にはいくつか残っているけれど、 お前の姿は何処にも映っていない。
自分だけの世界に逃げ込んで、 この世の終わりを待つだけ。
「一方的過ぎる。」
お前の言葉は自然で当然の言葉。
きっと俺に見えない大きな傷跡が、 お前には残ってしまったはずだ。
それで良いのか? |