高く、 高く、 壁を築き上げる為に。
飽く迄、 土台から石を積み。
徐々に、 徐々に、 創り始めるけれど。
其の土台に、 隙間が生じれば。
護りの術として、 壁は、 役を全う出来無いのだ。
高く積まれた、 立派な壁自身の重みに、 耐えかねて。
土台が、 自壊して終うから。
築き上げて来た筈の、 信用に。
何処か、 隙間を感じたならば。
其の信用を、 何れだけ積み重ねたとしても。
感知した隙間から、 土台ごと、 崩れて終うのかも知れない。
家を出て直ぐ。
忘れ物に気付き、 家に戻ると。
姫は慌てて玄関先に現れ、 満面の笑顔で、 俺に口付けをした。
「なんで戻ってくるのよ〜。」
「忘れ物。」
「半分吸っただけだからね。」 「吸い込まないで口に含んだだけだから!」
子の存在を確認すれば、 吸わぬと、 言った筈の姫は。
煙草特有の匂いを、 紛れも無く宿して居る。
信用を失うのは、 一瞬で、 簡単で。
其の信用は、 記憶が消えない限り、 取り戻せないのだ。
其れは、 俺も同じ事だけれど。
---------- References Jun.25 2005, 「半ば投げ遣りなのでしょうか」 |