酩酊下では。
表層からの抑制を失った、 内なる本能が、 素直に、 表出されて来るから。
直接的に。
身体の欲する望みを、 獲得しようと、 振る舞うのかも知れないけれど。
同様に、 酩酊下は。
普段は、 隠し持って居る筈の。
抑制を失った、 深層の、 想い迄も。
隠し切れず。
鋭敏に、 姿を現すのかも知れない。
僅かなのに。
今、 自身に棲む、 想いへの。
微量の、 違和感なのに。
「小坊主、どうしたの?」 「わからん。」
「向こうで、何かあったの?」 「わからん。」
「酔ってるの?」 「わからん。」
俺自身で把握出来ぬ、 何らかの予感を。
きっと君に、 鋭敏に、 感知されたのだろう。
「どうして今なのよ・・・」
君のか細い非難を、 耳にしながら。
君の匂いが。
此の腕の中に、 木霊した。
---------- References May.08 2005, 「顔を向ける方向が違いませんか」 |