目の前の光景と、 奥底の記憶を。
一つ一つ、 丁寧に照会して。
其の記憶を、 別の事象で上書きして行く事が。
己に隠して在る、 目的なのだ。
目の前の白い化粧が、 刻々と上書きされて行く様に。
けれども其れは。
今を差し置いて、 過去へ立ち戻る作業を含むから。
時には、 自身へ刃を穿つ事に成る。
眼下に見える、 細長い建物。
階段を下り、 建物を一歩出れば、 左手にホテルが在るのだろう。
今、 背後に在るのは、 科学館で。
其処は、 小さな彼と遊んだ、 唯一の場所だ。
俺の視線が、 一瞬泳いだ事に。
姫は、 気付いたに違いない。
魅せる視線が、 そう語るけれど。
如何しても、 俺に必要な作業だと。
口を開かず、 我慢して居るのかも知れない。
貴女の、 唇を奪いに行った場所だと。
貴女の旦那に、 宣戦布告した場所だと。
貴女との想い出は。
眼前に在る、 此の駅が中心だったのだと。
姫に、 伝えられる日が来るだろうか。
---------- References Jun.02 2003, 「少し塩辛いでしょうか」 Oct.19 2002, 「柔らかかったですか」 Mar.14 2002, 「挑んでも良いですか」 |