手当たり次第に、 手元の鍵を、 鍵穴に差し込んだところで。
其の扉を、 上手く開ける筈が無い。
類似の鍵を以て、 確かに、 其の扉が開く事は在るけれど。
身も、 心も。
同時に扉を開ける鍵など、 多くは無いのだ。
其れ故に。
熟慮を重ね、 其の身を削り研磨して。
型を逢わせた鍵を、 鍵穴に、 差し込むのに。
其の扉の鍵穴は。
既に、 姿を変えて居る。
「もぉ!」 「此の鍵も違う!」
俺の、 諦めに似た叫びに。
「其の鍵じゃ。」 「心の鍵は開かないですよ?」
小悪魔の様な笑みを、 浮かべながら。
同僚は、 そう応えた。
鍵穴が逢う筈は無い。
此の鍵は、 姫の為に磨いた鍵だ。
其れを、 十分理解して居るのに。
類似の鍵として。
此の鍵は、 目の前の扉を開き掛けて居る。
---------- References Feb.03 2005, 「何故に其の手を切らぬのですか」 Feb.01 2005, 「灰色なら逃げられますか」 |