事実を伝える事が、 必ずしも正解では無くて。
必要の無い事実が、 胸の中に隠されたとて。
何ら、 問題は無いのだ。
隠匿行為こそが、 相手の、 想う心なのだから。
けれども。
其の秘密が、 融け出した時に、 相手が、 抱えるであろう不安感を。
残らず拭う責務も。
想いの内に、 必ず、 添えるべきでは無いのか。
偶然出会った、 姫と、 姫の友人が。
久方振りの会話を始めた。
「旦那元気?」 「うん、元気元気。」
「身体の方は?」 「ああ、大丈夫。」
「彼、あんまり強い人じゃないからねぇ。」 「そうね。」
元旦那と、 連絡を取る事は。
必要不可欠の行為だ。
けれども。
俺の存在を無視して。
姫の友人は、 姫へ、 旦那の話を放ったのだ。
現在形で。
其の友人は、 料亭の、 女将じゃないか。
雰囲気を察せぬ筈が無い人物の、 其の一言は。
一体、 何を意味するんだ?
帰り道の、 俺の視線に。
姫が、 気付かない筈は無いのに。
何も言わないんだね。
---------- References Aug.31 2004, 「跳べない鳥だと言うのでしょうか」 |