想いの奥底を、 自身の言葉で揺らせるならば。
既に、 揺らせて居るだろう。
一層だけ、 緩衝材を挟んだ、 其の領域迄。
指先が届いても。
更に深層に、 薄皮一枚先に、 触れられぬから。
時を経ると。
白で染めた筈の、 場所に。
最深部の黒が、 浸み出して来るのだ。
「私が別れようって言ったの?」
少しずつ。
姫の手元に、 現実が集まり始め。
自身の振る舞いと想いを、 重ねられずに。
混乱が生じる。
隣で、 腕にしがみ付く姫は。
「本当は別れたいのかな?」
溜息の後に。
其の手に、 より強い力を込めながら、 口にした。
其処からは、 想いを向ける先が違うよ。
俺の言葉を求めても。
一時の、 最深部の想いが浸み出す迄の安心しか、 得られない。
姫の底に、 棲まう想いは。
姫自身しか、 診る事の出来ぬ場所なのだから。
---------- References Jul.05 2004, 「喧嘩に組み込む気でしょうか」 Jul.03 2004, 「別れた方が幸せですか」 |