自身を前進させ、 自身を高みに押し上げれば。
物事を正確に捕らえられる様に、 成長出来ると、 想っていたけれど。
自身を高める事で。
少しだけ、 物が見えなく成る事も、 存在するんだ。
表と裏を、 如何にして見極めるか。
経験値しか、 判断材料が存在し得ないと言うのに。
逆に其の経験値が、 困惑や躊躇を産むから。
昔彼だった男が、 力強く答えた。
「もう大丈夫です。」
其処に拘る理由も無く、 彼自身も器量も、 そんなに悪い物では無い。
振り回されずに、 早く前を向いて欲しいと、 そう願い続けて来た。
昔彼だった其の後輩が、 力強く答えた。
「小坊主さん。」 「もう大丈夫です。」
酒を酌み交わしながら、 昔彼の彼女だった人の事を、 話せば。
当時見えなかった雌の性格も、 予想される行動も、 良く見える様に成った。
けれども。
「どうせな。」 「お前に彼女が出来た頃に。」 「ちょろちょろ戻って来るんだよ、御嬢は。」
「ですよね!」 「戻って来て欲しく無い時に・・・」 「其れじゃいけないんですよ!」
俺と彼の読みは、 一致している様で違うんだ。
昔御嬢の彼だった、 俺の後輩が。
「もう大丈夫ですから。」
力強く答えた、 其の時。
瞳に宿った切ない曇り。
期待感が消えてない事を、 俺は彼から感じた。
先が見えるからこそ、 期待感を消せないのか。
---------- References Nov.20 2003, 「爪の先に甘い毒を仕込むのですか」 |