刹那に、 前触れも無く、 単純に、 其れが起こった故か。
其れを受け取り、 意味や、 意義や、 裏や、 選択肢を、 複雑に組み合わせた故か。
正に呆気にとられた表情で、 奴は問の音を発し。
正に呆気にとられた表情で、 俺は其の答えを返す。
「こういう場合。」 「やっぱり帰るよな?」
「たぶん。」 「帰った方が良いんだと想う。」
人一倍強がりの、 彼女だから。
自分の辛抱に負けまいと、 殊更強く辛抱し、 自身を駆り立てるのだ。
自分の言葉に泣き、 泣く自分を支えようと語気を強めて、 更に涙を溢れさせて。
「絶対帰って来ちゃ駄目!」
浮かぶ言葉を、 只勢いの侭、 意味の繋がらぬ順序で口にする時は。
今直ぐ飛んで帰って、 良く頑張ったと、 頭を撫でてあげるべき時。
彼女の頑張りを、 全うさせてやる事には、 ならないけれど。
全うさせてやらなくても、 きっと良いんだよ。
---------- References Nov.29 2003, 「其の価値を忘れて居ませんか」 |