例え溺れかけ、 藻掻き続けて居る状態でも。
どれだけ、 切羽詰まった状況下で在っても。
特別な着信は、 最優先事項として存在する。
例え笑顔を向けられぬ、 そんな環境下で、 何かをして居ようと。
余程手の放せぬ状態で無ければ。
其の着信に、 喜びを隠して反応するのに。
妙な時間に届いた、 非通知着信。
一瞬振動に目を遣り。
そして、 直ぐに其の目線を切った。
貴女の電話だからこそ特別で在って。
只の着信は、 他人と何ら変わりない。
必要の無い着信に、 自身の手を止めて迄反応する必要など、 何処にも無いのだ。
残された貴女の声。
伝言として残された、 正真正銘の、 貴女の声。
後で巻き戻した貴女の声は。
何故か本当に貴女に、 聞こえてくれない。 |