無責任賛歌
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2005年05月10日(火) |
彼は誰か。/『のどかnobody(ノーバディー)』2巻(田山りく・及川雅史) |
「想定外の事件」というのはまさしくその通りだろう。 いつぞやの三馬鹿のような、無自覚な連中とは違う。カメラマン・記者ではないが、命を賭した仕事に従事していることは間違いない。ただし、その「思想的背景」は知る由もない。
イラクの武装組織「アンサール・アルスンナ軍」(アルカイダと深い関係があるとされるイスラム教スンニ派の武装組織で、外国人の拘束、殺害事件を多数起こしているグループ)が、昨九日、イラク西部ヒート近くで米軍基地から出てきた車両を襲撃し、イギリスの警備会社「ハート・セキュリティー」から派遣されて米軍基地の警備支援に当たっていた日本人、斎藤昭彦氏を拘束した。斎藤氏は重症だという。 率直な疑問を口にするなら、「米軍基地にどうして他国の『警備』が必要なのか?」ということなのだが、識者によれば、近年、アメリカなどでは兵士を抱えるコストを削減するために、有事のみに利用する傭兵・ボディーガードを民間会社に依存する割合が大きくなっているということである。要するに「準兵士」として働くわけで……って、つまり「MASTERキートン」(ロイズで働く前のね)か! と、実際にそういう人が活躍している現実は知識として知ってはいたものの、日常のニュースの中にこうして飛び込んできた途端に何か戦慄のようなものを覚えてしまうのは、やはり安楽な中に暮らしている日本人の心の間隙というものであろう。 斎藤氏はかつて1979年から81年にかけて陸上自衛隊第1空挺団に所属し、その後、フランスの傭兵部隊に20年間所属し、200人からの部隊も率いていたという。ハート社は元特殊部隊所属の除隊者で構成されており、斎藤さんが雇われたのもそういった経歴が買われたためらしいが、だとすれば斎藤さんにとって、他国の警備会社の傭兵となることも「国防」の延長線上にあったことなのだろうか。その線がよく見えない。 しかし、武装組織は明らかに斎藤さんを「米軍の一味」と見ている。斎藤さんを除いて、ほかの傭兵たちはみな殺したということだが、なぜ斎藤さんだけをとりあえずではあるが助けたのか。テレビのニュースでは、「日本人は金ヅルだから」というコメントを寄せる識者もいたが、果たしてそうか。「金銭要求のための人質」あるいは「自衛隊撤退を要求するための人質」ならばまだ生存の可能性はあるだろうが、「そうでない」可能性のほうが高いのではないか。自らの「宣伝」工作のためという意見もあったが、こちらの可能性が高いと私も思う。犯行声明文に具体的な要求がない点もその推測を裏付けているように思う。 だとすれば、極めて厳しい現実を我々は覚悟しなければならないのではないか。 日本政府はもちろん情報の収集、および救出に尽力するだろうが、明らかに「米軍協力」が明確である今回のケースは、これまでの中で最も危険な現実を日本人に付きつける結果になりはしないか。これでまたね、「自衛隊撤退」を訴えるトンチンカンな連中が現れそうな気がするが、これはもうそういうレベルの問題ではないのである。 私のような凡人には、イラクに行く動機自体、心の中に全く見出せない。今や、どんな目的でイラクに行こうと、テロリストたちに利用されることにしかならないことは状況が示している。覚悟のない傭兵がいるわけもないが、だからと言って、余りにも我々の日常とかけ離れた立場に身を置いている斎藤さんの心情が分からぬ以上、憶測だけでは賛同も反対も示すことはできない。 なんかね、ネット見てるとさ、斎藤さんと三馬鹿とを一緒にしてる連中もバカだけど、斎藤さん立派! と持ち上げている連中も、「傭兵」の何を知ってそういうことを言ってるのか、分かんなくてね、やっぱりバカなんじゃないかって気がしてくるのよ。斎藤さんは「自衛隊」としてイラクに入ったわけじゃないんだから、我々との繋がりをどう実感すればいいのか、今の段階では「よく分からない」というしかないのが大半の日本人の現状じゃないかと思うんだけど、何だかもう「知ったかぶり」なやつが多くてヤダねえ。
私はもう、いったい、イラクとは何なのだろう、と根本的な疑問を自分に対して問いかけるだけである。
斎藤さんの弟さんが会見を開き、「ご迷惑をおかけしまして」と涙を流している。しかし、何をどう迷惑をかけたというのか、それすらも見えない今は、困惑したままテレビの画面を茫然と見流すしかないのである。
飛び石連休が終わって(大型にはならないのよね、うちの職種の場合)、普段の勤務に戻りはしたのだが、途中でちょっと体調を崩したこともあってか、どうもエンジンがグズってる感じ。 急な頼まれ仕事あり。たいした手間はかからないので、さっと片付けちゃえばいいのだが、これがどうにも取りかかれない。ほかの仕事があるのを言い訳に、明日に回す。休憩時間にウトウトすると、あっという間に時間がなくなる。夜中に頻繁に目覚めているので、睡眠が浅いことも原因なのだろう。休日の前くらいはやっぱり睡眠薬を飲もうかなあ、という気になってしまうのは、やっぱり気弱になってる証拠だろう。
同僚が雑談で由布院映画祭の話題をしているのを小耳に挟む。 「『タカダワタル的』って映画を今度上演するそうですよ」 「誰ですか、高田渡って」 なんて会話をしているものだから、つい、「ああ、あれでしょう、『自衛隊へ行こう』の」と口出ししてしまったものだから、「藤原さん、高田渡をご存知でしたか!」と、しばしその場の4人ほどで高田渡話で盛り上がってしまった。 浅学非才でモノシラズな私ではあるが、それなりに手持ちの知識だけで少しはお喋りができることがある。高田渡などは私の趣味の範囲からはちょっと離れてはいるのだが、それでも「こういう人のことは知っておいたほうがいいよなあ」というアンテナにだけは引っかかっていたのだ。 話題はそれからあっちこっちへ飛んでいって、千石イエスの経営してたバーが今どうなってるかとか、黒い霧の池永さんのバーの様子はどうだとか、ドカベン香川のバーは(バー話ばかりではないか。全部福岡にあるのである)、なんてお喋りで時間をつぶす。みなさん、仕事が煮詰まっていて息抜きしまくっているのである。いいのかこれで(笑)。 とりあえず今日は週明け早々だからまだアイドリング。起動は明日から明日から。
ここしばらく、しげの「さびしんぼう」というか、情緒不安定、かなり長引いているのだが、車に乗っていると、いきなりハンドルから手を離して私の手を握ってくるので、運転は大丈夫かと気が気でない。 しょうがないので、こちらから手を握り返して、片手運転させているのだが、オートマ車じゃなきゃ、事故を起こしているところである。つか、オートマでもちゃんと両手で運転してくれよ。 「晩飯は?」と聞くと、「作るの忘れたんで、コンビニで弁当を買う」と言う。 今更もう、お前は昼間何やってたんだよ、と文句は言わない。文句を言うほどの元気など週明け早々ありゃしない。週の半ばは忙しくて言う元気がないし、週末は疲れ果ててやっぱりそんな元気はないのである。 弁当買ったら、またゴミが出ちゃうなあ、と思ったので、「じゃあ、車の中で食べようか? そしたらゴミもその場でゴミ箱に捨てられるし」と提案したら、これがいたくしげの気に入ったらしい。 そのままでは狭苦しいので、助手席の背もたれを倒して、私は後部席に移動して、弁当をわけて食べる。食べてる最中、しげは私の顔を見てニコニコしているのである。いつもとちょっと違った食事の仕方をするだけで癒されていると言うか、この程度のことで喜んでるとは、よっぽど日ごろから私が邪険にしているようだ。本当はしげが不幸ぶりっ子してるだけなんだけど。
マンガ、田山りく原作、及川雅史作画『のどかnobody(ノーバディー)』2巻(角川書店)。 天才建築家、長瀬のどかが、傾きかけた温泉旅館をリニューアルして救っていく、温泉旅館版ビフォーアフターの第2弾。今回は「熱海」「箱根」「伊東」「石和」が舞台。富士山が切り取られた一幅の絵画のように眺められる温泉とか、天井から葡萄がたわわに実る温泉とか、うーん、こういう温泉が本当にあるのなら、一度行ってみたいもんだと思わせるが、いかんせん、殆どが関東周縁。それに温泉郷自体は実際の場所に取材しているけれども、旅館はあくまでフィクションらしい。残念。 今回は、これまで連戦連勝を誇ってきたのどかが、大失敗をやらかすエピソード(のどかの彼氏さんも初登場。職業が落語家ってのがユニーク)や、謎のアシスタント(笑)の三井ケイ(ミケちゃん)が、その驚くべきオタク知識を発揮する番外編(入りてえぞ、アンモナイト風呂!)もありで、1巻より好調な印象だ。 絵柄がもう、思いっきりほのぼの系のアニメ絵なので、しげからは「結局“萌え”で買ってるんじゃん」とジト目で見られているが、確かにストーリーは他愛無いけれど、「こういう温泉に入りたいなあ」という気分で読んでるだけなんで、余り目くじら立てないでほしいものである。
2004年05月10日(月) いそがしいそがし。&ゴールデンウィーク映画興行成績。 2003年05月10日(土) すっ飛ばし日記/イラストな女 2002年05月10日(金) 人生は重い荷物を……。/『新映画宝庫 Vol.4 スタークラッシュ 大宇宙映画放浪編』ほか 2001年05月10日(木) 仕事復帰、半分だけだけど/『× ―ペケ―』6・7巻(新井理恵)
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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