無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年05月09日(月) あえて取材しないという選択を取れないのは何故?/『弁護士のくず』2巻(井浦秀夫)

 平日だけれども、土曜日の休日出勤の代休で休み。
 朝から夕方までは家でゴロゴロしながら日記の更新など。平日は体力使い果たして寝てしまうことも多いので、なかなか書くに書けないのである。

 テレビのニュースは相変わらず兵庫県尼崎市JR福知山線の脱線事故の詳報。
 平日はワイドショーを見ることがないので、どういった塩梅かと思ってチャンネルをひねり回してみるのだが、なんだかもう、ゲンナリするほどに酷い。いや、腹立ちは、事故を引き起こした責任のあるJR西日本に対するものと、テレビの過剰報道との両方に分かれるのである。
 JR西日本に対しては、1991年に起きた「信楽高原鉄道事故」 (JR列車と信楽高原鉄道車両が正面衝突し、死者42名を出した事故。複線でJR列車が一時停止して信楽列車をやり過ごさなきゃならないのを、ダイヤを気にしてJR列車が単線に突っ込んでいったために起きた)の時の教訓を何一つ生かせていなかったという憤りである。関係者に緘口令を敷いた隠蔽体質、責任のなすりつけ、今回の事故と全く変化がない。
 しかし、悲しみもまだ癒えない遺族に証言を強要し、それを「JRの体質をたてなおすためにはこれしか方法がない」と言い訳するみのもんたを見ていると、「デタラメこいてるんじゃねえ」と横っ面を張っ倒したくなる。“いつ、誰がテレビにそんなことをしろと頼んだ?”視聴率稼ぎが目的の連中に善人面されることくらいむかっ腹が立つことはない。
 しかもこいつら、ついこないだまで「ボウリング場で宴会」がどうのと非難しまくってたくせに、「JR西日本の管内放送では、その日、死者が出たとも脱線事故だとも一切放送しなかったために、事故の規模を知らずにボウリングに参加していた可能性があります」といけしゃあしゃあと喋ってやがる。
 一般のアンケートでも、今回の事故は「個人の問題ではなく、JR西日本の体質が問題」とする意見が圧倒的に多かった。その世論を受けて、マスコミはコロリと個人攻撃を止めて、システム批判に切り換えているのである。この節操のなさ、定見のなさは何だ。
 人の生き死にをショー化していながら(でなきゃなんでこうもBGMにアニソンが流れまくるのだ。これが「演出」でなくてなんだと言うのだ)、こういうキレイゴトを垂れ流す行為が、逆説的に生命を軽んじる結果になっていることになぜ気づかない。みのもんたの言は、「またこんなに人が死にましたねえ。たくさん死ねば死ぬほど、取材する対象が増えてショーを続けられますねえ。もっともっと事故が起きませんかねえ」と言っているに等しい。
 昼日中からテレビを見ることがあまりないので、断言はしかねるが、みのもんた、いつもあんな調子なのか? でもって、みのファンの主婦連は、アレを聞いて「もっともだ」とか頷いてるのか? あんな白々しい演出にコロリと騙されてるのか?
 なんだかもう、信じられない世界が真昼の日本を覆っているようである。


 夕方から、ラクーンドッグさんの誘いで、基礎練習に参加。
 その前に、細川嬢をしげの車に乗せてかなきゃならなかったので、いったん別の場所で待ち合わせ。ところがこれがひでえ渋滞に巻き込まれてしまって、5時前に家を出たのに、千代町の「パピヨン」に着いたのは六時過ぎ。本当なら六時前には着いているはずである。
 ラクーンドッグさんとは本屋で合流、そのあと「パピオ」の練習場に向かう。
 練習場自体は10時半まで予約を入れていたそうだが、私は明日からまた仕事なので、そこまで付き合っていたら体力を消耗してしまう。ただでさえ病み上がりなので、最初の基礎練習と「フルーツバスケット」まで付き合わせてもらった。
 キソレンったって、もう何年もまともに体を動かしていないので、腹筋も背筋も腕立て伏せもどれ一つとして満足にいかない。まるで体が曲がらず、すぐにへたばる。細川嬢もしげも、体が動かないようなことを口にするが、中年の私に比べれば段違いによく動いている。
 「フルバ」は(と略すとマンガのタイトルみたいだが)、満遍なくみんながお立ち台に(笑)。ラクーンドッグさんが、「宮崎駿の映画を見たことない人」とお題を出すが、誰も立たない。そりゃ、たいていの人が見てるだろう……と思うのだが、ドッグさんは『魔女の宅急便』も『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』、全てご覧になっていないとか。『ロード・オブ・ザ・リング』も『ハリー・ポッター』も一本も見たことがないそうで、これはこれですごいと言う気がする。でもこれじゃいつまでもオニから逃れられないのも当然である。
 私が立ったときに、「SMに興味がない人」と言ったら、ドッグさんしか立たなかった。女性陣はみんな興味があるのか。ドッグさんが細川嬢に「どこまでもですか!?」と言ったら、細川嬢、「あります!」と即答。恐るべし!
 本当は「フルーツバスケット」の後、読み合わせもある予定だったのだがそれはパスさせていただいて帰宅。
 途中、ラーメン屋に寄って、ホルモン丼を食う。焼肉屋で食べるホルモンはたいてい生焼けか焼き過ぎかで美味くないのだが、店で出されるホルモンはどうしてちょうどよい焼き加減になっているのか、これが不思議で仕方がない。


 CS日本映画専門チャンネルで西河克己監督『絶唱』(1966・日活)。
 大江賢次の同名小説(河出文庫で現在でも入手可能)の、舟木一夫・和泉雅子主演による二度目の映画化。久しぶりに見返したけど、
 最初の映画化は1958年、同じ日活の滝沢英輔監督作、小林旭・浅丘ルリ子主演。三度目は1975年、この二回目と同じ西河克己監督によるモモトモ(山口百恵・三浦友和)映画。
 完成度という点では、三度目のものが一番だったように思うが、この二度目の映画化はオープニングで舟木一夫の主題歌が哀切込めて(つか陰気に)流れるところがポイントで、「な〜ぜ、死〜んだ〜♪ あ〜あ〜あ、小〜ゆ〜き〜♪」と、おいおい、最初からネタばらししていいのかよって苦笑してしまい、本編でも、他の二本での情熱的な小林・三浦に比べて、舟木一夫ときたら、徹頭徹尾、腺病質な演技で観客の感涙を絞るものだから、「何じゃこりゃ?」という印象だけは強いのである。
 「なぜ死者との婚礼が行われたのか?」というミステリー的な興味で引くには、途中の大地主の息子と山番の娘との身分違いの恋の過程が案外スムーズに展開してしまうので、かなりダレる。クライマックスは婚礼そのものではなく、病床の小雪のもとに帰ってくる順吉が間に合うか否か、そこにかかっているが、西河監督はこのあたりを舟木・和泉版と、モモトモ版とではシチュエーションを微妙に変えている。そのあたりが見所と言えようか。
 劇中で「木挽き唄」を歌うシーンがあるので、この原作は「歌手兼俳優」の若手コンビを売り出すのに重宝されていたことが分かる。歴代のコンビの中で、本作の和泉雅子だけが異質に見えるが(つか、冒険女優が何で結核で倒れる薄幸の美少女なんかやってるんだってな感じ)、それは現在の和泉雅子を見ているからそう思えるので、当時は彼女も「アイドルスター」だったのである。いや、私もギリギリその時代を知ってるからねえ。ちょっとヒイキしちゃいたくはなるのよ。少女時代の梶芽衣子が、「太田雅子」名で、恋のライバルを演じているのも要チェック。


 マンガ、井浦秀夫『弁護士のくず(九頭)』2巻(小学館)。
 主演・ビートたけし(笑)の弁護士マンガ、オフィス・キタノから訴えられるような様子もなく、ちゃんと続いています。主人公の九頭元人が髪を金髪にしたらさすがにクレームが来るかもしれませんが。
 弁護士ものは小説にしろマンガにしろ、どうしたって「庶民の見方」的な視点でしか描かれないが、どれもこれもが『家栽の人』になっちまったらそれはそれで面白くない。ミステリーとしての興味がどんどん薄れていくからである。
 依頼人を解雇した会社の上司を、恋人を若い女に取られた中年女を、父親の愛人に遺産を取られまいと遺言書を隠した家族を、夫に依存しているくせに気位だけは高くて離婚訴訟を起こした女を、九頭は口先三寸で罠にかけ、本音を引き出し“丸く(なったのかどうか)”収める。丸く治めるためには嘘八百を並べても構わない。
 「金をふんだくってやりましょう」
 「判決が出る前にカタをつける」
 「お前はバカなんだよ! ちゃんと自覚しろ!」
 「うまく騙されて気持ちよく協力してくれる人がいてさ」
 「こいつバカみたいにヒトがいいから何やっても怒らねーよ」
 およそマトモな弁護士の言だとは思えないが、これでも大人しいのを選んでいるのである。被告をあるいは原告である依頼人にすら、「罠」を仕掛けるような行為を、果たして弁護士がホントにやっていいのかどうか、読んでていつも気になるのだが、一応、監修に弁護士さんが付いているので、ある程度は(こっそりとは)行われていそうである。
 その「罠」の部分がミステリーなんですね。いくつかの作品には「どんでん返し」も用意されていて、だからあまり細かいネタばらしはできないのだけれど、絵柄で食わず嫌いをされる向きもあるかもしれないが、これはなかなか拾い物のシリーズである。

2004年05月09日(日) クレーマーの話、続き。
2003年05月09日(金) すっ飛ばし日記/すれ違いな二人
2002年05月09日(木) 明日は誰の夢を見るかしら(^o^)/『スーパーまるでん』3巻(森下裕美)ほか
2001年05月09日(水) 病気で寝ててたいして書く事ないはずなのに(^_^;)/『死神の惑星』1・2巻(明智抄)



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