無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年04月30日(土) 続く事故(ヒビキのタイトル風)/『ビジュアル探偵明智クン!!』1巻(阿部川キネコ)

 F(遠心力)=m(質量)×v(速度)2/r(距離)
 兵庫県尼崎のJR福知山線の脱線事故、死亡者はついに107人。最終的な事故原因はどうやらやはり「スピードの出しすぎ」「急ブレーキをかけたための脱線」ということらしい。過密ダイヤとか何とか言われてるけど、結局は運転士の責任なんで、今の報道は、「憤懣の持って行き所」を探して、迷走しているように思える。
 電車事故だのバスの転覆だの、人為的な事故がこれだけ相次ぐと、「ミスは許されない」という言葉がかえって空々しいものに聞こえてくる。人間はどうやったってどこかでミスをしてしまうものなのだ。だったら、そもそもミスを誘引する要素自体を減らしていくしかしようがないのではなかろうか。福知山線の事故についても、運転士にプレッシャーを与えた過密ダイヤも問題だが、時間に縛られた現代日本人の精神構造が招いた悲劇だとも言えるのである。生活にもっとゆとりを、とは誰もが口にするが、具体的にのんびりできる余地がないんじゃ、いつか何かの事故が起きることを覚悟するしかないのが「現実」というものではなかろうか。
 昨29日夜、羽田空港で間抜けなトラブルが起きた。
 工事のため閉鎖されていたA滑走路に、管制官ら管制グループ18人全員が滑走路閉鎖を失念して誤った指示を出したために、帯広発の日本航空1158便(エアバスA300型機、乗員・乗客51人)が着陸した。当時、滑走路上には工事車両などがなかったため、けが人などはなかったが、この2分後、札幌発の日航1036便(ボーイング777型機、乗員・乗客161人)も閉鎖中の滑走路に向けて最終着陸態勢に入っており、気づいた管制官が慌てて着陸をやり直させている。つまり、一歩間違えば、飛行機と工事車両、飛行機と飛行機が滑走路上で接触するなど、重大事故にもつながりかねない深刻なミスだったのである。
にもかかわらず、18人全員がモノワスレって事態はあまりに間抜け過ぎで、ニュースを知らない人に伝えても冗談としか受け取ってもらえないのではなかろうか。例えて言うなら、管制官みんなガンビー。これが小説だったら、読者は絶対「リアリティがない」と文句をつけるはずである。着陸の指示を出した管制官も、事情聴取に対して「漠然とは閉鎖があることは頭の隅にあったが、昨日がその日との認識はなかった」と話しているというから、やっぱりガンビーである。

 例年、この時期はシティボーイズの公演を見に上京していたのだが、今年は北九州公演があるのでパス。のんびりと朝からテレビを見る。
 日本映画専門チャンネルで『クレージーの大爆発』、『放浪記(1935/夏川静江主演版)』、時代劇専門チャンネルで『木枯し紋次郎』など。感想は長くなるのでパスね。
 あとは、マンガなど読む。


 マンガ、阿部川キネコ『ビジュアル探偵明智クン!!』1巻(芳文社)。
 世の中に妖しいマンガは数あれど、これくらい本屋のカウンターに持って行き辛いマンガもあるまい。いや、女性は全然平気でしょうが(笑)。表紙に登場しているのは、一見、長髪の美女、よく見ると全裸のオトコ。これが主人公の明智くんだ。『新・ルパン三世』主題化付きOPの峰不二子のボーズで、ライフル構えてるんだけど、なんかねえ、潤んだ瞳にマニキュア塗って伸ばした爪がもう完全に男の客を引かすこと請け合いってなキャラでねえ。阿部川さんの『辣韮の皮』や『WAKIWAKI タダシさん』が面白かったのでこの本も買っちゃったのだが、表紙だけなら絶対に買ってない。誰が買うか。
 しげが一時期ボーイズにハマッてたおかげで、ウチには妖しい表紙のマンガがそこここに散らばっていて、これ以上、自分の生活環境を不穏にしたくはないのである。
 けれど、帯にはなんと桑田乃梨子の推薦文が! 作者どうしがお友達なんだろうが、これだけ傾向の違うマンガを描くお二人が……ってのもフロイト的になかなか興味深い(おおげさ)。
 タイトルから分かるとおり、お話は名探偵もののパロディ。でも主人公の明智くん(下の名前は不明)はオリジナルの明智小五郎とは何の関係もない。まあナルシストってところは似てるかもしれないが、やたらと脱ぐわコスるわ、鬱陶しいったらありゃしない。探偵になる以前の過去は謎に包まれているが、路上詩人だったことがあるとか。もちろん詩の中身は独りよがりで芸術家気取りで、でもリリカルという一番困ったタイプ。「レモネード色の街に一人ぼっち……」ってどんな街や。黄砂、降り積もっとるんか。桑田さんがなんでこんなのが好きなのかよく分からないのである。
 依頼人だった山村美々(通称みっちょん)をなし崩し的に助手にして、数々の何事件に挑む! というのが基本的なストーリーラインだけれど、もちろんマトモなミステリマンガのはずもなく、次から次へと現れる変な探偵仲間が、事件を逆に紛糾させていく。不思議ちゃん探偵悪梨須(アリス)はただのストーカー、自称明智くんのライバル金田一くんは霊視ができるパンク探偵、陰陽探偵京極院晴明はモロあの人。
 しかし極めつけなのは何と言っても「横溝ドイル」くんだろう。“体は大人(33歳)、心は子供”、つまりはただのアダルトチルドレン(つかとっちゃんボーヤ)で、女と見れば“ぶって”擦り寄るあたり、キモいったらないのだが、オリジナルだって子供の演技してるときは気色悪いんだからどっこいどっこいだろう。たまたま出かけた先で必ず事件が起こる「地獄の探偵」ぶりもオリジナルと同じ。オリジナルの腐れぶりに腹を立てている人にとっては、毎回エロ行為に走ってみっちょんにぶちのめされるドイルくんは、すこぶる溜飲の下がるキャラだろう。ちゃんと「眠りのドイル」を見せてくれるところも芸コマである。
 作者の阿部川さん、『辣韮の皮』でもチラッとそのミステリオタクな面を見せてはいたが、実際、かなり内外のミステリを読み込んでるんじゃなかろうか。明智くんがボソリとつぶやく「ああ……ドラマ化しないかな……あの探偵事務所がうらやましい」という台詞、もちろんこれは関崎俊三『ああ探偵事務所』がドラマ化されたことを指しているのだが、同時に江戸川乱歩『二銭銅貨』の冒頭のフレーズのパロディにもなっている。こういうミステリファン向けのくすぐりも多く、某有名推理作家のデビュー作の「見えなかった」オチや、理系人気作家の「回転する館」オチに対して、「なめんなよミステリー」と突っ込んでるのも、同じ思いを抱いているファンにとっては小気味よく感じられることだろう(私はアノ二作ともアリだと思ってるんですが)。

2004年04月30日(金) 東京の夜は更けて(1)/中洲の夜のキティちゃん
2003年04月30日(水) メモ日記/白い人たちの夜。
2002年04月30日(火) 今もまだへにょへにょ(疲れてんだよ)/『開田無法地帯』(開田あや・開田裕治)
2001年04月30日(月) 別れのトワレ/映画『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』ほか



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