無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2005年02月11日(金) 狂っても人生/映画『新暗行御史』

 朝のニュースで、開成中、桜蔭中の合格発表の模様を中継。
 そのへんでハナ垂らしてるガキンチョとはまるでオツムの出来が違ってそうなキリリとしたお顔だちのお子サマたちが「やった〜!」なんて満面の笑みで叫んでるんだけれども、一番喜んでるのは塾だの家庭教師だので既に湯水のごとく投資している親御さんなのであろう(^o^)。お父さんが涙まで流してるの見てると、全く親って辛いよなあと思う。
 翻って私自身も親に大学まで出してもらったわけだが、しょっちゅう言われていたのは「一人っ子だからこそ大学までやれた。お前に兄弟がいたら大学まではやれなかった」である。大学でバイトして奨学金をもらっていても、物価の高い東京では、学資生活費の大半を親に頼らなければならない。ゼミの教授には「大学院まで行かないか」と勧められてはいたのだけれども、当時の親の経済状況がそれを許さなかった。と言っても実家自体が貧乏だったということではなく、何度か日記にも書いてきた親戚どもに金をたかられまくっていたからである(だからその親戚が今更いけしゃあしゃあと借金を申しこみに来たところで、私が相手にするわきゃないのだ)。そんな状況であっても、大学まで出してもらったのだから、親には充分感謝をしているのだが、その半面、高校時代は家業の手伝いばかりさせられていて父には「うちで宿題なんかするな!」と怒鳴られて、受験時ですら勉強に専念させてくれなかったのは今でも恨みに思っている(おかげで宿題が間に合わずにしょっちゅう先生に叱られていた)。全く、教育熱心だったのかそうでなかったのか、よく分からない。要するに子供が自分より勉強ができることに劣等感を感じていたただの馬鹿だったのだ。テレビに映っている親御さんたちも充分馬鹿っぽいが、ウチの馬鹿親は子供の足を引っ張るばかりだったから、それよりゃよっぽどマシだよなあと思う。
 テレビに映っている子供たちの中に、「これからの進路は?」と聞かれて、「それは社会の“混沌”の中で自分で見つけていきます」とか答えていた子がいた。いかにも優等生的な様子で、こまっしゃくれた言葉遣いではあるのだが、こういう年頃は、覚えた言葉をともかく会話の中に使ってみたいものなのである。まだ世間ずれしていない証拠で、かえってかわいらしいくらいだ。ただ親は微笑ましく見守るばかりじゃなくて、もちっと言葉遣いに気をつけるように注意したほうがいいとは思う。
 コメンテーターは「荒れる子供たち」を想定しているのか、「こういう勉強に専念する子供たちもいないといけませんね」とか言ってたのだが、舌の根も乾かぬうちに「塾に通えるのは一部の子供だけで、今のゆとり教育は貧乏な子供たちの学習の場を奪っています」と言って批判したのにはガクッときた。不況不況とは言うものの、そこまで貧乏なうちが今の日本にどれだけいるというのだろうか。1パーセントもいないんじゃないか。
 学力に格差ができて何が悪いのだろう。有名進学校に合格した子供たちは、まさにその「ゆとり」の時間を有効に使って学力を伸ばしたのである。今「ゆとり教育」に文句をつけてる連中は、みんな土曜日曜は怠けて遊び呆けてたやつらや、その親たちだけではないのか。学校の授業というものはどうしても成績が真ん中あたりの子供を標準にせざるを得ないので、トップクラスの子供たちにとっては退屈なものでしかない。「分かりやすい授業」などというものは、そういう子供たちにとっては邪魔でしかないのだ。だから早い段階で勉強する子としない子に「格差」をつけて、する子には「ゆとり」の時間を使ってどんどん学力を伸ばしてもらう。才能のある子が周囲にムリヤリ合わせられて「出る食いは打たれる」状況になっているのを改善することが「ゆとり教育」の目的なので、落ちこぼれのために考えられた施策ではない(いや、落ちこぼれだって、時間を有効に使えば授業に追いつくことは可能なはずだ)。かけっこで横一列にゴールさせて誰も一番にしないような「悪平等」には文句をつけるくせに、自分たちの努力不足は棚にあげておいて、勉強での格差をなくせと文句を付けるというのは卑怯なだけではないか。今、自分たちが唱えている「ゆとり教育」反対の声が悪平等のそのものなのである。
 落ちこぼれて何が悪いか。落ちこぼれたからといって卑屈になり他人を羨むその精神自体が差別的ではないか。その人の人格を見ず、学力だけで内面を勝手に推し量っているくせに、それでどうして自分たちのほうが正しいなどと思いこめるのか。もしも自分が落ちこぼれなかったら、そいつらは決して「ゆとり教育」に反対はしないはずである。目を覚ませ。自分たちが馬鹿なのは誰のせいでもなく自分だけの責任だし、どうしてオレだけひどい目にあっているのだというのはただの被害妄想だ。「ああ、自分は馬鹿なのだな」と気がついたら無理に進学しないで自分の道を探し、さっさと働いたほうがよっぽど人間的には立派だろう。「進学しかない」という狭い判断が自分の人生の道も狭めてしまっているのである。
 「でも、せめて高校まで進学しないと就職口がない」とか文句垂れる馬鹿親もまだいるが、それこそ高卒以上しか採用しない「会社」に文句を付けるべきで、批判の矛先が学校や文科省にというのはお門違いも甚だしい。ゆとり教育はもう十年以上前から推進、段階的に実施されてきたもので、そのことはさんざっぱら告知されてきたにも関わらず、対応を怠ったのは企業や会社の方なのである。安上がりだからとか言って外国人の不法就労者を雇ってないで、さっさと中卒に門戸を開け。日本をダメにしてるのはそいつら中小企業だ。
 それなのに文科省では「ゆとり教育の見直し」とか言って、「内容の削減はともかく、授業時間の削減はよくなかった」とか言っている。これは全然逆で、授業時間の削減を行って内容を凝縮しなければならないのである。伸びる子はどんどん伸ばし、落ちこぼれる子は落ちこぼらせる。そうしなければ、日本の次代のリーダーは馬鹿どもに足を引っ張られるばかりだ。こんな腰砕けの姿勢じゃ、またぞろ愚民にいいように翻弄されるだけだぞ。いい加減、馬鹿はほっとけ。


 夜、シネテリエ天神までアニメ映画『新暗行御史』を見に行く。
 東京では昨年のうちに公開が終わっているのだが、福岡ではやっと今月になって公開、でもってモーニングとレイトの二回のみで一週間のみの限定公開。今日がもう最終日である。なんかもー、泣くに泣けんよ(+_;)。パンフレットを買ったら「単行本10巻12月発売予定!」とか書いてあるのな。とっくに買ってるって。
 長大な原作を1時間半のワクにはとても収められないので、原作の「新・春香伝」と「曼陀羅華」だけを抽出して映像化。そのアイデア自体は悪くないのだが、何と言っても原作の「序章」における「暗行御史」の初登場シーンの意外さ、鮮烈さにはまさに度肝を抜かれたので、これを映像化してくれなかったのはやや恨みに思う。もっとも、原作ファンはとっくに文秀(ムンス)の正体を知っているわけで、製作スタッフは序章を映像化しても今更だよなあ、と判断したのかもしれない。しかし、映画で初めて『信暗行御史』に出会ったという人もいるはずで、そういう人が改めて原作を読んだらかなり興を殺がれることになる。
 本郷みつる脚本は、春香(チュンヒャン)が山道(サンド=暗行御史の護衛)となっていく過程を描く形で二つのエピソードをうまくつなげており、その点でソツはないのだが、ストーリー展開の意外性などは失われていて面白味にも欠ける。いや、それ以前に原作を未読の人間にはかなり不親切な作りになっていて、聚慎が滅びた後、文秀がどうして旅をしているのか、彼がやたら呼吸器を使っているのはなぜなのか、あるいは柳義泰(ユイテ)が島民に外法を施すのはなぜなのか、物語を牽引するための説明が殆どなされない。原作を読んでいる私ですら、画面を右往左往するキャラたちをただ漫然と見せられるばかりで、いっこうに物語に惹き込まれなかったから、初見の方はなおのことだろう。本郷さん、『クレヨンしんちゃん』から身を引いて以降、今一つパッとしないのが寂しい。
 劇場公開ではなく、テレビシリーズだったらなあ、とも思うのだが、そうなると作画のクオリティを図れるかどうかも疑問なので、痛し痒しだ。
 いや、作画がいいと言っても、実際に「見れる」のは山道のアクションシーンくらいのもので、ほかは総じて平板なのである。原作の梁慶一の絵は日本のマンガキャラをかなり意識したものなので、アニメ向きかと思っていたのだが、それでもマンガとしては充分濃密だったのだろう。アニメキャラクターになった途端にその魅力が半減している。
 それでも昨日までに見た『オペラ座の怪人』や『きみに読む物語』よりはよっぽど面白いのである。日本映画はダメダメだという人は多いが(これは日韓合作だけど)、ダメ率で言えばハリウッド映画の方が圧倒的に数は多いので、何でもかんでもハリウッドが一番みたいなマスコミの流したエセ情報に洗脳されないでモノは見ていただきたいものだ。

2004年02月11日(水) 入院日記10/さらば関西人
2003年02月11日(火) 映画を見る以外に休日の過ごし方なんてあるんですか/映画『音楽』/『プーサン』/『エデンの海』/『日本一のホラ吹き男』
2002年02月11日(月) うまいぞもやしマヨネーズ/『ONE PIECE ワンピース』22巻(尾田栄一郎)
2001年02月11日(日) 水の中の失楽/アニメ『も〜っとおじゃ魔女どれみ』1・2話ほか



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