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去年の秋、たまにしか訪れない書店でいつもの書店では見かけない本を漁っていたところ、ハヤカワ文庫のコーナーに赤い巻き毛に白い小花の冠を付け、野の花に囲まれた綺麗な人物画の表紙を見つけました。
復刊されたばかりの『北風のうしろの国』です。
ぱらぱらとめくってみます。
小さな男の子を抱いた優美な女性の姿の「北風」が、ロンドンの街の煙突の通風管をなぎ倒し、屋根の瓦を吹き飛ばして、冬の夜空を吹き荒れていました。
強い風に吹き煽られたように、すでに十冊以上抱えていた文庫本のてっぺんにその一冊を載せ、くるくるとレジに向います。
物語の舞台は19世紀のロンドン。文庫の表紙画はロセッティの友人だったラファエル前派の画家フレデリック・サンズの作品、本編には1871年の出版時に付けられた、同じくラファエル前派の挿し絵画家として名高いアーサー・ヒューズの美しいペン画が載っています。
本を買った頃はまだ暖かかったので、風の冷たい季節になってから読もうと思い、しばらく置いてありました。
この冬は思いがけず寒くなりました。
待たせたね、北風。
主人公の少年は馬小屋の二階につつましく暮らす、御者の幼い息子です。ある風の強い晩、壁の節穴から「北風」と名乗る不思議な女の人が訪れます。
小さな男の子から見れば見上げるようにすらりと背の高い、長い長い髪をなびかせた、青ざめた美しい顔を持つ大人の女の人。慈母のように優しく、復讐の女神のように恐ろしい、変幻自在の謎の女性。
北風、私は子供の頃から貴女を知っている。
勇敢な少年をこの世の果てへの旅へといざなう謎の美女、
メーテル、貴女は銀河鉄道999のメーテルであった事はありませんか。
少年の望みに従い、北風が彼を連れて行った北の果ての「北風のうしろの国」については、詳しい事は語られません。どうもヘロドトスがかつて語ったような所ではないようです。ただ、「北風のうしろの国」を訪れて、再び家に戻って来た少年は、少し普通とは違った子供になっていました。
それまでの勇敢で好奇心の強い男の子とは感じが変わって、後半の主人公は世俗的な賢さの代わりに本質的な智慧を持つ、不思議に満ち足りた少年となります。
(ナルシア)
『北風のうしろの国』著者:ジョージ・マクドナルド/ 訳:中村妙子/ 出版社:ハヤカワ文庫
2005年01月31日(月) ☆コールデコット賞の絵本展。
2003年01月31日(金) 『フランス田園伝説集』
2002年01月31日(木) 『いちご物語』
2001年01月31日(水) 『ばらになった王子』
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管理者:お天気猫や
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