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小学生の頃に、叔父から郷土の民話の本を貰ったことが きっかけとなって、伝承・伝説好きになった。 子どもの頃に聞いた、身近な言い伝えが消えていくのが 惜しくて、自分でも三つくらい書き留めたが、 すぐに飽きてしまい、続かなかった。 民間伝承に詳しい、90歳を越えるおじいさんが知人にいるが、 いつかそのうちにいろいろ聞いてみようと思っているうちに、 時間だけが流れていく。 民話や昔語りが好きだと言っても、自分の足で集め、 それを記録するとなると、ただ好きというだけでは なかなか実行できないし、かといって、 好きでなければ絶対にできないことでもある。
『愛の妖精』の著者ジョルジュ・サンドは、 民間伝承の採集者でもあったそうだ。 『フランス田園伝説集』は、19世紀半ばに、 サンドがフランス中部ベリー地方の農村に伝わる伝説を 集めたもので、息子モーリスのおどろおどろしい挿し絵も印象的だ。
集められた伝説の中で、私のお気に入りは「夜の洗濯女」 満月の夜の荒野に、洗濯をしている女がいる。 いつまでも叩いたり絞ったりしているのだが、 洗濯物だと思って近づいてみると、 それは子どもの死体なのだ。 洗濯女の正体は、嬰児殺しの母親の幽霊で、 間引いた子どもの死体を最後の審判の日まで、 洗い続けている。
あまり、趣味のいい話ではないかもしれないけれど、 怪談として語るには、インパクトがあって、ちょうどいい。 真夜中の、道ばたに、洗濯女がいる、 洗い物をのぞくと、それは生首、だった。 というトーンで、適当にアレンジして、 小さなめいっ子たちに話してあげると、 不条理と気味の悪さがいたく子どもの好奇心、 怖いもの見たさを刺激するらしく、受けがいい。
馬鹿石、泥石 / 霧女 / 夜の洗濯女 / 化け犬 / 三人の石の怪 / エプ=ネルの小鬼 / 森の妖火 / 狼使い / リュプー / エタン=ブリスの修道士 / 火の玉婆 / リュバンとリュパン
フランス版『遠野物語』と、紹介されたりもしている。 『エプ=ネルの小鬼』の小鬼は、遠野の「座敷わらし」的な存在。 『火の玉婆』の話では、私の知っている郷土の妖怪話を 思い浮かべてしまう。
時代や場所が違っても、ところどころで相通じるものを感じる。 そして、そのほかに共通することは、こういう伝承を語れる人が 確実に消えていって、活字でしか伝承に触れることができなく なっている、ということだろうか。 (シィアル)
『フランス田園伝説集』 著者:ジョルジュ・サンド / 訳:篠田知和基 / 出版社:岩波文庫(※入手困難)
2002年01月31日(木) 『いちご物語』
2001年01月31日(水) 『ばらになった王子』
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管理者:お天気猫や
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