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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年01月31日(木) --

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『いちご物語』

昭和61年に、このアンソロジーが出ているから、 すでにそれからでも15年以上たっていることに 気づきました。 いわんや、連載当時は遠くなりました。

ラップランドから父の故郷の日本へ、 婚約者(と思い込んだ少年)、林太郎をたずねて はるばるやってきた17歳の少女、「いちご」。 こぼれそうな大きな瞳に、ふわふわの髪。 ただただピュアで、一生けんめい。

けれども、林太郎には幼なじみの全子がいて。 それでも、母を亡くした生田家で、 家族として同居することになったいちごが 繰りひろげる、ハプニングだらけの毎日。 だんだんいちごに傾いてゆく気持ち。

あー、ともかく、ページをめくるごとに 「大島弓子だ!」とつぶやきそうになります。 『綿の国星』の頃からのファンタジックな絵柄も好きだけど、 この瞳、このセリフ、今読むと気恥ずかしさも あるにはちがいないけれど、それでもやっぱり大島弓子。

完成度ということを言えば、もっと詰めることは できるでしょう。 でも、私にとって、作品の良し悪しは、作者にしかわからない 微妙な細部ではなくて、やはり、全体の熱とトーンです。 技術や完成度にこだわることも大事だけれど、 そこに必要以上とらわれると、 どうしても感動が薄れるように思えます。 最後まで熱をもってメッセージが伝わっていくことが、 作品の寿命を決めるのではないでしょうか。

そういう意味でも、『いちご物語』に生きている、 少年少女たちの、つみたてのいちごのようなフレッシュさは 「ここにしかないもの」を持っています。

ところで、主人公の林太郎は大島さんにとって 思い入れの強いキャラクターのようです。 でも私は、今も昔も、林太郎のお兄さんの森太郎や 当時の少女漫画の定番、デヴィッド・ボウイがモデルの 日向温が気になっているように、バイプレーヤーも楽しみのひとつ。 巻末のマンガエッセイには、連載当時の 裏話や結末の予定を変更したことなども描いてあって、 なるほどぉと思ったり。

この選集10巻以降に描かれた名作も数多く、 何度も作家としての曲がり角を抜けた大島さん。 そろそろ転換期を迎えて戻ってくるような予感がしています。 (マーズ)


『いちご物語』(大島弓子選集第5巻) 著者:大島弓子 / 出版社:朝日ソノラマ

2001年01月31日(水) 『ばらになった王子』

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