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森薫の漫画、ヴィクトリア時代のメイドが主人公の『エマ』を楽しんでいる。 ロンドンの住み込み美人メイド・エマが、ジョーンズ家のウィリアム坊っちゃまと、身分違いの恋に 落ちるところから始まる物語。
現在(2006年1月)、6巻まで出ている。まだ身分違いの恋に落ちている。 ところが6巻の表紙ではエマの顔がメイドというよりバトラー(執事)のように険しく なっていて、それを見た時、 ひょっとして勘違いしていたが、これは連綿と続く壮大な大河ドラマなのかも しれないと思った。
しかしエマはアメリカへ自分の意志で行こうとしていたのではなかった。 エマがキャリアウーマンになってアメリカで人生に大当たりし、ウィリアムより高い身分になって再会し、自由の国で幸せに…という私の秘かな希望は外れたようだ(身勝手きわまる読者愛)。
もっともそれはリンダ・ハワードの、女性バトラーをヒロインにしたロマンス小説(『一度しか死ねない』二見書房刊)の影響かもしれないが。
最近森薫を知ったので知らなかったことがあった。 ご本人はロンドンへ行ったことがあるのかどうか。 もしや行っていないのではと思っていた。 そうならばぜひそのまま描き続けてほしい、とも勝手ながら思っていた。 というここ数週間の問いに、5巻の後書き(毎回最高に楽しい)で答えが出ていた。
5巻で初めて著者はロンドンを訪ねたのだ。 その感動を想うと、ロンドン好きとしてうれしくもあり、 それを境に絵が変化した(一時的に?)ことも納得。
ここ5年ほどご無沙汰しているけれど、ロンドンへ3回旅した。 最初の感動は、この『猫や』に欠かせない要素となった。 表面にはそれほどわからないかもしれないが、ロンドンの空気がなければ、 猫やのテイストはずっと違ったものになったはずだ。
そして、最初のロンドンで実感したこと。 ここはヴィクトリアの街だ、と。 エリザベスの時代であっても、まだまだ精神的支柱のように 君臨しているのは、ヴィクトリア女王なのだと、例によってインスピレーションを受け、思い込んだ。
『エマ』には、実際に舞台を目にしたら画面にいやおうなく紛れ込んでしまう ノイズのような「現在のロンドン」がほとんど感じられなかったから、 それはヴィクトリア朝時代の人々や風景を描くうえで、 いいことではないかと思ったのだ。
ロンドンを実際に歩いて、随所に残るヴィクトリアンの遺香には心底、
感動されたのではないだろうか。舞台を知ってますます、今後が楽しみである。
※『エマ』は平成17年度文化庁メディア芸術祭のマンガ部門優秀賞受賞。
(つづく)
(マーズ)
『エマ』(漫画)著者:森薫 / 出版社:エンターブレイン・ビームコミックス2002-
2005年01月06日(木) 『ヴェネツィアの宿』
2003年01月06日(月) 『図書館の死体』
2001年01月06日(土) 『人類の子供たち』
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管理者:お天気猫や
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