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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年01月06日(月) --

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『図書館の死体』

猫やのお客さまからの推薦本。

老人性痴呆症の母を世話するため、 東部での華やかな出版の仕事をあきらめて 故郷のいなか町に帰ってきた図書館長、 ジョーダン・ポティートが探偵役の、 シリーズ第一作。

1995年のアガサ賞と、マカヴィティ賞(最優秀処女長編賞)を ダブル受賞した謎解きミステリである。

ジョーダンが帰り着いた故郷は、 テキサス州ミラボー。 一見、なんの恨みつらみも─少なくても 思い余ってひとを殺すほどの─なさそうな町で殺人事件が起こり、 ジョーダンはその第一発見者かつ、どこから見ても 疑わしい状況に追い込まれ、みずからの手で 聞き込み捜査を始めるのだった。

姉とその息子、病気の母とともに生家で暮らす 主人公の生活は、幼いころからの確執や、 甘くも苦くもある過去の日々の記憶と分かちがたく結びついた、 身につまされる哀感をともなっている。

人間は決して強くないかもしれないが、 そうそう弱くもないのかもしれない、と 思わせるユーモラスな文体は、 話の性格上、中盤に余儀なくされる 関係者への総当り聞き込み場面を、 注意深く読み進ませるためにも 役立っている。

プロットだけを追うミステリよりも、 人生のなんとやらをほのめかすミステリが好きだから、 私は読みながらあまり伏線に気をとめない(誰が犯人でも かまわないのだろう)が、 結末を知ればやはり、数々示された証拠に うなずいてしまった。

おそらく、田舎町を舞台にしたミステリには、 あなどれないものが多いのだと、改めて思う。 特に、作家がそのような町で育った場合。 誰もが顔見知りの田舎町というものは、 決して平穏無事な人生の溜まり場ではないという 警告も含めて。 (マーズ)


『図書館の死体』 著者:ジェフ・アボット / 訳:佐藤耕士 / 出版社:ハヤカワ文庫

2001年01月06日(土) 『人類の子供たち』

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