HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館
猫やのお客さまからの推薦本。
老人性痴呆症の母を世話するため、 東部での華やかな出版の仕事をあきらめて 故郷のいなか町に帰ってきた図書館長、 ジョーダン・ポティートが探偵役の、 シリーズ第一作。
1995年のアガサ賞と、マカヴィティ賞(最優秀処女長編賞)を ダブル受賞した謎解きミステリである。
ジョーダンが帰り着いた故郷は、 テキサス州ミラボー。 一見、なんの恨みつらみも─少なくても 思い余ってひとを殺すほどの─なさそうな町で殺人事件が起こり、 ジョーダンはその第一発見者かつ、どこから見ても 疑わしい状況に追い込まれ、みずからの手で 聞き込み捜査を始めるのだった。
姉とその息子、病気の母とともに生家で暮らす 主人公の生活は、幼いころからの確執や、 甘くも苦くもある過去の日々の記憶と分かちがたく結びついた、 身につまされる哀感をともなっている。
人間は決して強くないかもしれないが、 そうそう弱くもないのかもしれない、と 思わせるユーモラスな文体は、 話の性格上、中盤に余儀なくされる 関係者への総当り聞き込み場面を、 注意深く読み進ませるためにも 役立っている。
プロットだけを追うミステリよりも、 人生のなんとやらをほのめかすミステリが好きだから、 私は読みながらあまり伏線に気をとめない(誰が犯人でも かまわないのだろう)が、 結末を知ればやはり、数々示された証拠に うなずいてしまった。
おそらく、田舎町を舞台にしたミステリには、 あなどれないものが多いのだと、改めて思う。 特に、作家がそのような町で育った場合。 誰もが顔見知りの田舎町というものは、 決して平穏無事な人生の溜まり場ではないという 警告も含めて。 (マーズ)
『図書館の死体』 著者:ジェフ・アボット / 訳:佐藤耕士 / 出版社:ハヤカワ文庫
>> 前の本 | 蔵書一覧 (TOP Page) | 次の本 <<
管理者:お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]